目次

  1. ① 切れない刃物が危険な理由
  2. ② 研磨紙の種類を知ろう(赤・白・黒)
  3. ③ まずはカッターナイフでお試し
  4. ④ 実践編:ワンコイン包丁を紙やすりで研いでみた
  5. ⑤ 研磨紙・砥石・セラミック砥ぎ棒のメリット・デメリット
  6. ⑥ まとめ

紙やすり(耐水ペーパー)でも、包丁はちゃんと研げます。結論から言うと、番手を順番に上げていけば、砥石がなくてもかなりの切れ味まで戻せます。ただし、いくつかコツがあります。

今回は研磨材メーカーであるマイポックスの耐水研磨紙WTCCシリーズを使って、包丁を実際に研ぎ、砥石やセラミック砥ぎ棒との違いも含めて検証してみました。番手を一つずつ試しながら効果を確かめていく、地道なカットアンドトライの積み重ねです。

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① 切れない刃物が危険な理由

刃物を扱う際は、刃先に手を置かない、人に刃を向けない、渡すときは手渡しせず一度置く、といった基本的な注意点があります。ここにもう一つ加えたいのが「切れない刃物ほど危険」ということです。理由は次の3つです。

1 正確に切れない
2 切ろうとしたときに無駄に力がいる
3 切断面が荒い

紙がハサミに挟まってぐしゃっとなるのは①が原因です。木材にのこぎりがひっかかって動かなくなるのは②。年末のシュレッダー作業で厚紙の領収書を裁断するのが大変なのも②で、力任せに切ろうとして手や足を切ってしまう事故にもつながります。③は特に料理で顕著で、切れる包丁で作った刺身や豆腐の薄切りは、切断面が滑らかなぶん味わいまで変わることがあります。

まずは実際に、新品と使用済みのカッターナイフの刃先を拡大して観察し、比較してみます。目視だけでは気づきにくい違いも、拡大して観察するとはっきり見えてきます。

新品と使用済みカッターナイフの刃先の比較

刃先の比較:新品は鋭く尖っているが、使用済みは丸まっている

拡大して比較すると、新品の刃は先端がまっすぐ鋭く尖っていますが、使用済みの刃は先端が丸まってしまっているのが分かります。

新品と使用済みカッターナイフの表面状態の比較

表面の比較:新品は研削跡が揃っているが、使用済みは傷やめくれで荒れている

表面の状態を見ても違いは明らかです。新品の刃は研削の跡がまっすぐ揃っているのに対し、使用済みの刃は細かい傷やめくれが無数に入り、表面が荒れています。こうした摩耗が進むことで、刃は徐々に切れなくなっていきます。だからこそ「カッターの刃は都度交換する」のが正解ということになります。

② 研磨紙の種類を知ろう(赤・白・黒)

 
マイポックス製品:耐水研磨紙

国内で流通している研磨紙は、色でおおよその用途が分かります。

赤(木工向け)
工業用ルビー砥粒を使用したものが多く、ガシガシ使うタイプです。
白(から研ぎ用)
水でふやけ、粉が出なくなったら寿命のサインです。
黒(水研ぎ向け)
ダイヤモンドの次に硬いSiC(シリコンカーバイド)砥粒を使用しています。

迷ったら赤・白・黒から選べば基本的に問題ありません(スポンジタイプは別格で、目詰まりしても水洗いで復活します)。裏面には番手(60、400、1200など)が記載されており、数字が大きいほど目が細かくなります。

番手の使い分け早見表

60〜150
粗研磨・面取り
150〜320
接着前の表面粗し
320〜800
仕上げ前の研磨・塗装前仕上げ
800〜2500
仕上げ研磨・磨き上げの前段階

2500番より上はベースがフィルムになるものが多く、DIYの鏡面加工なら4000〜8000番程度を使うと(素材にもよりますが)綺麗に仕上がります。当社のWTCCシリーズは3000番までラインナップしています。

③ まずはカッターナイフでお試し

包丁を研ぐ前にまずは身近なカッターナイフで、実際に手を動かして試してみました。
頭で考えるより先に、まず試してみる。これがマイポックスの物づくりの基本姿勢です。WTCCシリーズを使い、#150→#320→#800→#1000→#2000と番手を一つずつ上げながら効果を確かめていくと、着実に切れ味が戻っていきました。詳しい検証プロセスは、このあと紹介する包丁編と同じ考え方です。

#150で研いだ状態の刃先

#150

#2000で研いだ状態の刃先

#2000

※今回はあくまで「どこまで研磨紙で切れ味を戻せるか」の検証です。カッターナイフは刃を薄く連ねた構造上、日常的には研ぐのではなく、切れなくなったら刃を折って新しい刃を出すのが正しい使い方です。

④ 実践編:ワンコイン包丁を紙やすりで研いでみた

ここまではカッターナイフでのテストでした。次は、ワンコインで購入した包丁で、実際に自分たちの手で試してみます。机上の理論だけでなく、実際に使ってみて初めて分かることを大切にする——これがマイポックスの現場主義です。

最初は#320程度から始め、仕上げは#2000〜2500を目安に、以下の4工程で研ぎました。

#320 #600 #1000 #2500
研磨紙を板に張って検証している様子

#研磨紙を板に張って検証

研磨紙に水を垂らして包丁を研いでいる様子

#研磨紙に水を垂らして実際に研磨

研磨紙は紙製のため、刃を押し込むのではなく引く方向で研ぐのがポイントです。
両面20〜30回ずつ同じ動作を繰り返すと、きれいに研げました。

番手ごとの実際の刃先の様子と紙の切れ味の様子

一つ研いでは観察し、また次の番手を試す。この繰り返しの中で、目には見えにくい変化を一つずつ確認していきました。

研磨前の刃先と紙の切れ味の様子

#研磨前

紙の切れ味を見てもらうとわかる通り、まだ全然切れない状態。刃先も丸まっている。

#320で研いだ状態の刃先と紙の切れ味

#320で研いだ状態

刃筋を立てれば切れるようになってきた段階。まだ本調子ではない。

#600で研いだ状態の刃先と紙の切れ味

#600で研いだ状態

切れ味の実感がさらに増してくる段階。

#1000で研いだ状態の刃先と紙の切れ味

#1000で研いだ状態

見た目の劇的な変化はないが、「スッと入る感覚」が向上している。

#2500で研いだ状態の刃先と紙の切れ味

#2500で研いだ状態

仕上げレベル。かみそりほどではないが、十分実用的な切れ味に。

#320の段階でも刃筋を立てれば切れるようになり、#600でさらに実感が出てきます。#1000、#2500と進めても劇的な変化はありませんが、切れ味の「スッと入る感覚」は最後まで向上していきました。かみそりのように産毛を剃れるレベルには及びませんが、包丁の鋼材によって仕上がりが変わる点は考慮が必要です。

⑤ 研磨紙・砥石・セラミック砥ぎ棒のメリット・デメリット

研磨紙の強みは、複数の番手を使ってもコストが低く、毎回新品の面で研げることです。以下、3つの研ぎ方を比較しました。

研磨紙
粒度・種類:◎
耐久性:△
寸法安定性:◎
使い勝手:◎
コスト:◎
砥石
粒度・種類:〇
耐久性:◎
寸法安定性:△
使い勝手:〇
コスト:△
セラミック砥ぎ棒
粒度・種類:△
耐久性:◎
寸法安定性:〇
使い勝手:◎
コスト:△

砥石は使っているうちに減り方にムラが出やすく、本来は平面出し用のダイヤモンドドレッサーが必要です。平面度が崩れたまま研ぐと、切れる場所と切れない場所ができたり、切ったものがつながって切れなかったりします。研磨紙は平らな板に貼って使うため、板自体が平らであれば平面度を気にする必要がありません。また、日本式の水研ぎ砥石は使う前に水やぬるま湯に浸けて置く必要がありますが、研磨紙は濡らせばすぐ使えます。

耐水研磨紙(黒系)の多くはSiC(シリコンカーバイド)を砥粒に使用しており、これはダイヤモンドの次に硬い材料です。原理上、ダイヤモンド以外の素材であればほぼ削ることができます。一般的な赤茶色や白色の砥石はここまで硬い材料でできていないため、硬い鋼材やセラミック包丁は「研ぎにくい」「時間がかかる」と感じることがありますが、研磨紙であれば原理上研ぐことが可能です。

なお、砥石は研磨材が水に混ざりながら削る「半遊離研磨」、研磨紙は研磨材が紙に固定された「固定砥粒研磨」という違いもあります。砥石はカンや経験が必要な場面がありますが、研磨紙は角度さえ決めれば、水をかけてこするだけで研ぐことができます。

⑥ まとめ

紙やすり(耐水ペーパー)でも、包丁は十分に研げます。ポイントは次の3つです。

砥石は面が出ていないと使いづらいため、ダイヤモンドドレッサーでの面出しが必須
新品のカッターナイフの切れ味は格別。切れなくなったら早めに刃を折って新しくする
包丁は紙やすりでも意外と研げるが、紙のため押し研ぎは避け、引く方向で使う

今回のような小さな検証も、実際に手を動かし、一つひとつ観察しながら番手を試していく——マイポックスが大切にしている物づくりの姿勢そのものです。これからも、こうした地道な検証を積み重ねていきます。

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