CD.DVDイメージ
(画像=CD.DVDイメージ)

データの大容量化によりクラウド化が主流となっている昨今、CDやDVDは一昔前のデータ保存メディアになりました。しかし、いまだに音楽用や映画用として一部のユーザーの間で使われており、機密保持の面からリサイクルして残すというニッチな需要もあることから、専門の修復業者も存在しています。今回は、当社が過去に専門の修復業者と取り組んだCD・DVD修復のための研磨テストや、限界点についてご紹介します。

目次

  1. CD ・ DVDディスクの構成
    1. CD
    2. DVD
  2. CD ・ DVDディスクの傷修復研磨工程
    1. 従来の研磨工程について
    2. 当社研磨材でのテスト
  3. 5種類の研磨製品でテストを行い評価
  4. テスト結果
  5. 傷修復工程の限界点
  6. まとめ

CD ・ DVDディスクの構成

一般的に光ディスクと呼ばれるものには、LD、CD-ROM、CD-R、DVDなどさまざまな種類がありました。中でも CD・DVDはコンパクト化と大容量化を兼ね備えた記憶メディアの主流として使用されていました。ここでメンテナンス対象であるCD-ROM、DVDの特徴について簡単に説明します。

CD

直径12cm、厚さ1.2mmのポリカーボネートなどの透明な樹脂でつくられたディスクで、ディスクの中には薄いアルミニウムの層があり、ここにデータが記録されています。アルミの記録層の表面には大変小さな出っ張りが無数に連なっており、出っ張りをピット(幅は 0.5μm 、長さは 0.83μm ~ 3.56μm)、平たい面をランドと呼びます。

CD構造図
(画像=CD構造図)

DVD

DVDのディスクの外形はCDとまったく同寸になっており、直径12cm、厚さ1.2mmで、中心の穴の直径は15mmに設定されています。このように、DVDの外見はCDとよく似ていますが、ディスクの構造に大きな違いがあります。その違いとして、次の点があげられます。

  • 基本的な記録方式はCD方式と同じであり、ディスクの中の薄いアルミ膜でできた記録層で記録する。その表面のピットと呼ばれる小さな突起の長さと、間隔の距離の違いによってデータを記録する。
  • 構造としては、片面1層式と二層方式、両面式、二層両面方式
  • CDが1.2mmのポリカーボネートの下に記録面があるのに対し、DVDは約0.6mm下に記録層があり、両面方式であれば、0.6mmのディスクを背中合わせに貼り合わせた構造。
DVD構造図
(画像=DVD構造図)

CD ・ DVDディスクの傷修復研磨工程

CDやDVD等は、データの入っている記録面をポリカーボネート等のプラスチック部で保護されています。データの読み出しがレーザー照射により非接触のため、高音質、高画質のまま維持できるという利点を持っていますが、コーティング面の取り扱いの際に起こる傷によりデータの読み取りエラーや音飛びが起こります。通常、かなり深い傷でも約0.1mm程度で、データ面が破損しない限り、コーティング面を研磨して傷を取り除くことにより99%の再生が可能といわれています。 今回は従来の研磨システムを総合的に改善することを目標に取り組みました。

従来の研磨工程について

使用研磨機と研磨材 

  • 光ディスク専用修復研磨装置(依頼メーカー製)
  • 対応ディスク 30cmLDから8cmシングルCD他
  • 全般使用バフ:フェルトバフ、スポンジバフ
  • 研磨材:シート研磨材(耐水ペーパー)他
  • 研磨材(仕上げ):コンパウンド3種類(細目、微粒子タイプ2種類)
  • 研磨方式:回転式誘発方式
    ※回転式誘発方式:研磨材側を上部に設置し上から押さえつけることにより下のターンテーブルが摩擦により誘発されて回転する方式になります。

研磨工程・・・従来の研磨工程(既存の方法)
「キズが軽微なものへの対処」

  • 耐水ペーパー#1000→#1200→フェルトバフ(研磨材:他社コンパウンドメーカー)
  • 耐水ペーパーについてはスポンジクッショナー使用(クッションパット)
  • 「キズが深いものへの対処」
  • 耐水ペーパー#600→#800→#1000→#1200→フェルトバフ
  • 耐水ペーパーについてはスポンジクッショナー使用
  • バフに時間短縮のために耐水とコンパウンドの間にフィルム研磨材(他社)を使用する。 以上のような工程によりCD1枚あたりの研磨時間が約3〜5分とキズの状態によりさまざまな時間を要していました。
キズ有りのCD
(画像=キズ有りのCD)

当社研磨材でのテスト

取り組みの目標として既存の方法より時間の短縮、工程の簡略化、(付け替え頻度)および、仕上げの良質化で評価しました。キズの条件として軽微なキズとCD・DVDの表面をカッターの刃で傷をつけた深めのキズ(0.1mm程度)を修復研磨しました。

5種類の研磨製品でテストを行い評価

  1. 耐水研磨紙(WTCC-D) #400 #500 #600 #800 #1000 #1200 #1500でのテスト
  2. フィルム研磨材(プレトップ)のテスト
  3. 他社製フィルム研磨材に対して#3000のプレトップをテスト
  4. フィルム研磨材(WRAF-DM)のテスト
  5. スポンジバフ 微粒子タイプ(5mm厚品)のテスト

テスト結果

今回採用された研磨システム 「カッターキズの場合」

カッターキズの場合
WTCC-D #600(約20秒) → WRAF-DF#1200(約20秒)→ 他社製フィルム研磨材(約10秒)→ スポンジバフ 微粒子タイプ(約20秒)
※外観、データ状況(音飛び等)的に問題なしの評価
軽微な擦りキズ場合
WRAF-DF #1200(約20秒)→ 他社製フィルム研磨材(約10秒)→ スポンジバフ 微粒子タイプ(約20秒)
※外観、データ状況(音飛び等)的に問題なしの評価となり採用されました。

傷修復工程の限界点

  1. CDの研磨は、1.2mmの厚みのうち0.6mm程度までしか研磨できない。それ以上削るとデータの信号をよみとることができなくなります。
  2. 反対側のラベル面から入ったキズは修復不可能。
  3. DVDにおいては構造上CDよりもシビアなため、ポリカーボネートの厚みが0.6mm(片面)で実質、研磨可能な範囲は、0.3mmが限界。
  4. 記録面である薄いアルミ層は、熱によって伸縮しやすく1度伸びると元に復元できない性質を持っているので、あまり圧力をかけての研磨は不適。

まとめ

本記事でご紹介した当社の研磨材は一例であり、表面仕上げ精度をより向上させた製品もラインアップしています。精密研磨に関してお困りのことがあれば、当社にぜひご相談ください。