前回(Vol.10)は、中米の研磨材市場において「売る人」と「教える人」が一人の販売員に集約される構造と、その背景を読み解きました。今回はさらに一歩踏み込み、その販売員が現場で行うデモンストレーションに焦点を当てます。なぜデモが「販促」ではなく「確認のプロセス」として機能するのか、その理由を整理します。
1. 現場から見えること
中米の研磨材市場では、店頭での説明だけで商談が完結することは多くありません。販売員が顧客の作業現場に同行し、実際のワークに対して研磨材を使ってみせる。その場で作業者自身が工具を手に取り、仕上がりや作業感を確認する。こうしたデモンストレーションが、日常的に行われています。
一度のデモで大きな数量が動くわけではありません。しかし、同じような小さな機会が繰り返されることで、徐々に採用が広がっていきます。
このプロセスは効率的とは言えません。それでも、この市場では欠かせない手順となっています。
小さなデモの積み重ねが、徐々に市場での採用を広げていく。
簡素な作業環境ではありますが、稼働(生産)は継続して行われています。
2. 日本との違い
日本では、製品の仕様や性能データによって比較検討が進むケースが多く見られます。カタログや実績情報をもとに一定の選定が行われ、必要に応じて評価テストが実施される流れが一般的です。
一方、中米の現場では以下のような要因が重なります。
01
カタログ情報だけでは判断が難しい
02
作業条件が一定でない
03
使用者の技能や工具の状態にばらつきがある
そのため、現場での体験そのものが判断材料となります。
カタログや性能データではなく、実際の体験が意思決定の基準になる。
仕上げの大部分は、職人の手(手仕上げ)によって行われています。
3. なぜそうなるのか――構造的背景
この違いは、意思決定の構造に起因しています。
01
作業者が意思決定に直接関与する
製品を選ぶのは購買担当だけではなく、実際に使う作業者自身である場合が多く見られます。
02
作業環境の不確実性
工具の状態、作業姿勢、対象物のばらつきなど、条件が一定ではないため、机上の性能比較が成立しにくい状況があります。
03
再現性への要求
一度うまくいった方法が、別の条件でも同様に機能するかどうかが重要になります。
デモンストレーションは単なる販促ではなく、製品が現場で成立するかどうかを確認するプロセスである。
就業環境を常に完全に管理できるとは限らないのが現状です。
4. 示唆:製品が市場に定着するために
このような市場では、製品の価値は体験を通じて初めて伝わります。性能の高さだけでなく、扱いやすさや結果の安定性が重視されるのはそのためです。重要なのは次の2点です。
現場での再現性を前提とした設計
それを実際に確認するプロセス
両者が揃って初めて、製品は市場の中で定着します。
再現性のある設計と、それを現場で確認するプロセス。この両者が揃って初めて、製品は市場に定着する。
記事No,435
