Vol.13|前回

研磨布紙の構造(基材・砥粒・接着剤)から、スペック表に現れない「感触」の正体を読み解く。

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Vol.14|今回

サメ肌・膠・ガーネットからレジンへ。研磨材の歴史と、古い技術が今も選ばれ続ける理由を読み解く。

はじめに

中米の木工市場を見ていると、興味深い場面に出会うことがあります。最新の自動車補修用研磨材や高性能耐水ペーパーが並ぶ棚の中に、今なお「ガーネット製品」や「膠(ニカワ)系研磨布」が普通に置かれているのです。
現地のCarpintero(木工職人)たちは「木にはこれが合う」「この柔らかさが必要だ」と、ごく自然に使い分けています。そこには、「古いから残っている」のではなく、現在の市場環境の中で選ばれ続けている理由が存在していました。

現場の観察

最新技術と伝統技術が同じ棚に並ぶ中米の木工市場。職人たちは「古いから」ではなく、「現場に合うから」という理由で製品を選んでいる。
サメ肌から現代サンドペーパーまでの進化
サメ肌から現代サンドペーパーまでの進化のイメージ

研磨材の歴史

研磨の歴史を辿ると、人類は長い間、自然素材を使って表面を整えてきました。古くはサメ肌・軽石・エメリー・フリントなどが研磨材料として使用されていました。

研磨材の変遷

01 自然素材の時代 サメ肌・軽石・エメリー・フリントなど
02 19世紀:ガーネット+膠の時代 天然鉱物ガーネットを動物由来の接着剤「膠」で固定。木材繊維を滑らかに切削できる特性が木工分野で広く普及
03 20世紀後半:レジンの時代 フェノールレジンなど合成樹脂が登場。高耐久・湿気への強さ・大量生産適性・安定品質という工業合理性で市場を席巻

レジン化の意味

レジンは工業的に圧倒的な合理性を持っていました。その結果、多くの研磨布紙はレジン化され、伝統的な膠系製品は主流市場から姿を消していきます。

なぜ膠系製品は消えなかったのか

布基材を使用した手研磨
布基材を使用した手研磨の様子

レジン製品が市場を席巻した後も、一部の膠製品やガーネット製品は完全には消えませんでした。特に木工市場では、それらが現在でも一定の支持を受けています。その理由の一つが「追従性」です。

レジン系

高耐久・高性能。ただし比較的硬い性質を持ち、素材の微細な動きへの追従は限定的

膠(ニカワ)系

環境湿度に応じて水分を吸放出する「吸湿性」を持ち、木材のわずかな動きや表面変化にも柔軟に追従

木材は「生きた材料」

木材は温度や湿度で変化する素材です。完全に硬化して動かない材料よりも、適度な柔軟性を持つ材料が求められる場面があります。これは日本の重要文化財修復において膠が現在も使用される理由の一つでもあります。

技術と現場の共存が示すもの

レジン化は、研磨材産業における大きな進歩でした。現在の高性能研磨材の多くは、その技術によって成立しています。
一方で、市場は必ずしも「最も新しい技術」だけを選ぶわけではありません。実際の現場では、材料の性質・物流環境・作業習慣・人の感覚といった複数の要素が複雑に絡み合っています。
最新技術と伝統技術が同じ市場の中で共存する――研磨材の世界の面白さは、まさにその「多様な最適解」にあるのかもしれません。

記事No,465