研磨材には硬い粒または粉末が含まれており、「削る」「研ぐ」「磨く」などの用途に使用されます。これらの粒を、研磨材を構成する要素として「砥粒(とりゅう)」と呼びます。研磨材に使用される砥粒の種類は研磨の対象物や最終的な仕上げ面に応じて選択されます。一般的に、砥粒は高い硬度を持つ人工的に量産可能な材料が使用されます。ここでは、研磨材に使用される砥粒についてご紹介いたします。

目次

  1. 砥粒の種類
    1. 各種砥粒について詳細
  2. D・・・ダイヤモンド砥粒
    1. 高温高圧法(HPHT法)
    2. 化学気相蒸着法(CVD法)
    3. 爆発衝撃圧縮方
  3. CBN砥粒(Cubic Boron Nitride)
  4. C、GC・・・炭化ケイ素砥粒
  5. A、WA・・・酸化アルミナ砥粒
  6. Si・・・二酸化ケイ素砥粒
  7. その他、砥材に影響を及ぼす砥粒の構造
    1. 砥粒の形状
    2. 砥粒の大きさ
    3. 砥粒の靭性(じんせい)

砥粒の種類

様々な硬度と形状をしたものが砥粒として使用されていますが、一般的には硬度が高く、粒子径が整い、安価なもので、汎用性が高いものが使用されています。砥粒として使用される標準的なものをご紹介します。
・ダイヤモンド
・CBN砥粒
・炭化ケイ素
・酸化アルミナ
・二酸化ケイ素

各種砥粒について詳細

   
記号 名称 化学式 ビッカース硬度(Hv)密度(g/cm3)
D 人工ダイヤモンド C 8000 3.52
CBN 立方晶窒化ホウ素 cBN 4700 3.48
C 黒色炭化ケイ素 SiC 2480 3.21
GC 緑色炭化ケイ素 SiC 2480 3.21
A 褐色アルミナ Al2O3 2300 3.95
WA 白色アルミナ Al2O3 2300 3.95
Si 二酸化ケイ素 SiO2 950 2.2

D・・・ダイヤモンド砥粒

ダイヤモンド砥粒
(画像=ダイヤモンド砥粒)

ダイヤモンド砥粒は、元素をCにもつ硬度が最も高い砥粒、自然界に存在している天然産の宝飾品に利用されるダイヤモンドも、歯科研磨材料など一部高級用途に使用されていますが、一般的には人工にて工業用に製造された砥粒を使用しています。 ダイヤモンド砥粒の製造法としては下記が上げられます。

高温高圧法(HPHT法)

天然ダイヤモンドが地球内部で生成される方法を高温高圧のプレスによって再現して合成する方法です。

化学気相蒸着法(CVD法)

種基板にたいして、メタンガスなど炭素を主成分とした成分をプラズマなどにより活性化して結晶成長させる方法です。熱フィラメントCVD、プラズマCVDなどがよく知られています。

爆発衝撃圧縮方

爆薬の爆発によって、瞬間的に高圧・高温を発生させて合成する方法で、1次粒子をもつ多結晶構造になります。

人工であっても、ほぼ組成は天然産のダイヤモンドとかわらず、同じ物理特性をもち、高い研磨性能を有しています。ただしダイヤモンドの特性として、耐熱性には課題があり、約800℃で炭化してしまうため、冷却を伴わない高温での研磨には向いておりません。そのため高温化しやすい乾式での研磨を行うような場合には、CBN砥粒が使用されることがあります。

CBN砥粒(Cubic Boron Nitride)

CBN砥粒は窒化ホウ素構造を持ち、ダイヤモンドに近い硬さを有しています。常温ではダイヤモンドより柔らかいですが、耐熱性が高いため高温ではダイヤモンド以上の硬さを持ちます。自然界には存在しない砥粒なため、人工製造することから、高価な場合が多いです。ダイヤモンドの代わりとして高温領域での研磨などに使用されます。

C、GC・・・炭化ケイ素砥粒

炭化ケイ素砥粒
(画像=炭化ケイ素砥粒)

炭化ケイ素砥粒は、ダイヤモンドやCBNに次ぐ硬さをもつ炭素(C)とケイ素(Si)の化合物で、19世紀に炭化ケイ素を工業化した企業名から「カーボアランダム」と呼ばれることもあります。流通量が多く、粒子径の整った材料が流通しており、一般的な研磨材の砥粒として使用されています。純度の違いから黒色と緑色のものが存在しており、緑色の方が成分純度高い砥粒となります。 黒色炭化ケイ素・・・C砥粒 緑色炭化ケイ素・・・GC砥粒

A、WA・・・酸化アルミナ砥粒

酸化アルミナ砥粒
(画像=酸化アルミナ砥粒)

酸化アルミナ砥粒は、化学式Al2O3にて表記される砥粒です。アメリカ、ノートン社の製品名から「アランダム」と呼ばれることもあります。Cを元素に含まないことから、鉄などの研磨には活性化の観点からアルミナ砥粒が使用されます。 また、製造方法の違いなどから、仮焼アルミナ系や溶融アルミナ系など様々なものがあります。白色アルミナが、純度が高い砥粒となります。
主なものとしては、純度の違いから2種類あります。
褐色アルミナ・・・A砥粒
白色アルミナ・・・WA砥粒

Si・・・二酸化ケイ素砥粒

二酸化ケイ素砥粒は、化学式SiO2で表記される砥粒です。シリカとも呼ばれ、ガラスの製造材料などにも使用されます。硬度は他砥粒より低いですが、研磨対象によって化学反応による研磨作用があり、シリコンウェーハなどへの液体研磨材に使用されており、仕上げ面を重視した研磨材製品などに使用されております。

その他、砥材に影響を及ぼす砥粒の構造

砥粒の形状

研磨に作用するものとして砥粒の形状が影響します。各種製造方法にて変わりますが、研磨性に優位なことから、尖った形状の破砕したものが主として使用されますが、砥粒によっては、球状のものや、小片のような薄いものがあったりします。

砥粒の大きさ

砥粒の大きさは小石大の大きなものから微小なナノサイズまで様々なものがあります、微小なサイズと大きなものでは、製造方法、分級方法に違いがあり、それぞれのサイズごとに砥粒が選択されます。砥石、研磨紙などに使用される標準的な砥粒サイズはISO、JISなどの規格により規定されており、大きさの分布が規定されております。

砥粒の靭性(じんせい)

砥粒には硬さもあるのですが、他の要因として靭性も影響を及ぼします、研磨の持続性向上のためには、砥粒の先端がある程度崩れることで、砥粒刃の再生が行われ研磨の持続性に寄与いたします。 再生がうまくいかない場合は、目つぶれにより研磨力が落ち、持続性が落ちる場合や、目的の研磨性が得られない場合もあります。

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