水栓金具部品の製造では、研磨加工が製品の外観と耐久性を左右する重要なプロセスです。ここでは、水栓金具部品とは何なのかと製造における形状や表面を整えるための3つの研磨工程(粗研磨、中間研磨、仕上げ研磨)について、それぞれの役割と手順を解説します。

水栓金具部品とは
水栓金具(すいせんかなぐ)とは、水を出したり止めたりするための装置で、主に蛇口やシャワーヘッド、洗面台の混合水栓などに使われます。水道設備の一部として家庭や商業施設、工場などで広く利用されています。
素材
水栓金具は、以下のような素材で作られます:
1. 黄銅(真鍮)
- 主な素材で、耐腐食性や加工性が高い。
- 表面はクロムメッキやニッケルメッキで仕上げられ、耐久性や美観が向上。
2. ステンレス
- サビに強く、特に衛生的な環境が求められる場所で使用される。
- 高耐久性だが加工が難しいため、高価になりがち。
3.樹脂(プラスチック)
- 軽量で価格が安い。
- 主に家庭用の簡易型水栓や内部部品に使用される。
- 耐久性は金属より劣るが、設置が簡単でメンテナンスが楽。
4. 陶器やセラミック
- バルブ部分に使用されることが多い。
- 摩耗に強く、長期間使用しても漏水しにくい。
製品例
1.混合水栓
- 洗面台やキッチンに設置される。
- お湯と水を混ぜ合わせて適温に調整する。
- 例: TOTOの「エコシングル水栓」
2.シャワーヘッド付き水栓
- お風呂やキッチンで使われるタイプ。
- 節水や水流の調整機能が付いていることが多い。
3.センサー水栓
- 非接触で動作し、公共施設や病院など衛生管理が重視される場所で利用される。
- 例: LIXILの「タッチレス水栓」
4. 屋外用水栓
- ガーデニングや掃除用に使われる簡易な蛇口。
- 黄銅やステンレスで作られる。
使用場所と利便性
水栓金具は、機能性やデザイン性、耐久性などが進化しており、特定の使用目的や場所に応じて多様な製品が選ばれます。また、エコ機能や節水機能が備わった製品も増え、環境に優しい選択肢として注目されています。 用途や環境に適した素材や設計を選ぶことで、長く安心して利用できる点が特徴です。
水栓金具製造における研磨加工について
水栓金具は、住宅や施設の目に付きやすい場所に設置されるため、外観品質が非常に重要です。そのため研磨加工の精度が製品の価値を大きく左右します。また、適切な研磨を行うことで、メッキの密着性や製品の耐久性が向上し、長期間使用可能となります。 どのような素材の水栓金具であっても研磨加工は、高品質な水栓金具製造における欠かせないプロセスの一つです。
粗研磨(あらけんま)
粗研磨は、製造初期の段階で製品の形状を整え、表面の不要な部分や傷を取り除く工程です。鋳造や切削加工後の部品はバリや粗い表面を持っているため、粗研磨によって大まかに整形されます。この段階で表面の凹凸や大きな傷が除去されるため、次の研磨工程がスムーズに進みます。
1.粗研磨の手順
1.研磨材と機械の準備
使用する研磨材としては、酸化アルミニウム(アルミナ)やシリコンカーバイド(炭化ケイ素)など を研磨砥粒に使用した研磨材が選ばれます。これらは硬度が高く、金属表面の削りに適しています。ベルトサンダーやバレル研磨機などの機械を使用する場合が多く、特に大量生産に向いています。

2.部品の固定
研磨作業中に製品がずれないよう、しっかりと固定します。研磨機械にセットし、表面が均一に削られるよう調整します。
3.粗研磨の実施
ベルトサンダーやディスクグラインダーを使い、製品表面をまんべんなく研磨します。表面の大きな傷やバリを削り取り、基本的な形状を整えます。このとき、あまり力をかけすぎると部品にダメージを与える可能性があるため、適切な圧力をかけるよう注意が必要です。
4.仕上がりの確認と清掃
粗研磨が完了したら、表面を確認し、次の工程に進むために研磨粉や削りカスを取り除きます。この段階での仕上がりが均一であると、中間研磨がスムーズになります。
2. 中間研磨(ちゅうかんけんま)
中間研磨は、粗研磨で取りきれなかった微細な傷を取り除き、さらに滑らかで均一な表面に仕上げる工程です。この段階では、製品表面の質感や仕上がりの均一性が大きく向上し、最終的な光沢仕上げが行いやすくなります。
<中間研磨の手順>
1.研磨材の選定と機械の準備
中間研磨では、酸化ジルコニウムやシリコンカーバイドの中程度の粒度の研磨材を使用します。ベルト研磨機や回転バフ機を使って、表面全体に均一な圧力で研磨を行います。

2.表面の均一な研磨
粗研磨後の製品表面を、均一な力で研磨していきます。中間研磨は、粗い粒度から細かい粒度へと順次切り替えながら行うことが多く、徐々に表面の粗さが少なくなるように仕上げていきます。
3.研磨ムラの確認
中間研磨の仕上がりにムラがないか、傷が残っていないかを確認します。この段階で傷が残っていると、最終仕上げの品質に影響が出るため、注意深くチェックします。
4.再度、清掃と確認
表面の磨きカスや研磨粉を取り除き、表面の状態を確認します。中間研磨が完了すると、製品の表面はかなり滑らかになり、最終の仕上げ研磨で光沢を出しやすくなります。
3. 仕上げ研磨(しあげけんま)
仕上げ研磨は、水栓金具の最終的な光沢や手触りを決定する重要な工程です。製品が鏡面のような美しい仕上がりになるために、極めて細かい粒度の研磨材を使って、表面を滑らかに磨き上げます。見た目と手触りの美しさが製品の品質を大きく左右するため、慎重かつ丁寧に作業が行われます。
<仕上げ研磨の手順>
1.細かい粒度の研磨材を選定
仕上げ研磨では、酸化クロム(グリーンコンパウンド)や酸化鉄(ルージュ)などの微細な研磨材を使用します。これらの研磨材は細かい粒子で構成されており、製品表面に光沢を与えるのに適しています。
2.バフホイールでの研磨
仕上げ研磨ではバフホイールを使い、細かい研磨材をつけながら製品表面を磨き上げます。バフホイールは柔らかい布でできているため、表面を傷つけずに滑らかに磨くことが可能です。

3.鏡面仕上げ
製品全体にわたって均一に磨き、鏡のような光沢を出します。特に水栓金具は見た目の美しさが重視されるため、最終の磨きは非常に丁寧に行います。均一な光沢を得るために、ホイールの回転方向や圧力のかけ方を調整し、最適な仕上がりを目指します。
4.最終検査と清掃
最終仕上げが完了したら、表面の仕上がりにムラや曇りがないか確認します。美しい光沢が均一に出ているかを検査し、問題があれば手直しを行います。その後、表面に残った研磨材をきれいに拭き取り、製品を清掃して仕上げます。

まとめ
水栓金具の製造において、粗研磨、中間研磨、仕上げ研磨の3つの工程は、製品の美観と耐久性を決定する重要なプロセスです。粗研磨での形状整え、中間研磨での表面の均一化、そして仕上げ研磨での光沢仕上げが組み合わさることで、高品質な水栓金具が完成します。各工程で適切な研磨材を選定し、丁寧な研磨を行うことで、見た目の美しさと使用時の満足感を提供する製品が製造されます。 未来の水栓金具は、スマート技術、環境対応、デザイン性、衛生面の進化を融合させ、便利で持続可能、そして美しい製品として私たちの生活を豊かにしていくでしょう。
