近年、脱炭素社会の実現やエネルギーコストの上昇を背景に、工場・プラントから住宅・商業施設まで、従来のガス加熱設備を電気加熱設備へ転換する動きが活発化しています。 ガス加熱は、ガス(例:天然ガス、プロパンなど)加熱は、酸素と反応して熱を発生させ、大規模な加熱に適していますが、燃焼の際にCO2が発生し、燃焼効率や熱の伝達効率によりエネルギーロスが生じる場合や、燃焼に関するリスク(火災や一酸化炭素中毒など)があり、電気加熱が見直されています。電気加熱の「誘導加熱」と「赤外線加熱」は、効率と品質を両立させる主要な技術として広く利用されています。素早い温度上昇が可能で、特に精密な温度制御が必要な場合に有利で、エネルギーの変換効率が高く、熱ロスが少ない設計となっていることも多いのも特徴です。電気加熱の中で、誘導加熱と赤外線加熱をみていきましょう。
誘導加熱とは
- 原理 - 高周波電流を流すコイルによって強い磁界を発生し、その磁界が導体内に渦電流を誘起します。 - 渦電流によるジュール熱で物体内部を加熱します。
- 特徴および利点 - 金属などの良導体に対して効率良く内部から迅速に加熱できる。 - 局所的な加熱が可能で、精密な温度制御がしやすい。 - エネルギー効率が高く、加熱対象のみに的を絞るため、環境への熱ロスが少ない。
- 欠点 - 加熱対象が磁性体や導電性を持たない物質の場合、加熱が難しい。 - 複雑形状・微細部位の均一加熱のコイル設計が難しい。 - 高周波装置が必要なため、設備コストが比較的高くなる場合がある。

赤外線加熱とは
- 原理と種類 赤外線放射体から発せられる赤外線エネルギーが、対象物の表面に吸収され、そのエネルギーが熱に変換されます。 赤外線の波長特性や熱伝達の方式により、主に以下の3種類に分類されます。
- 近赤外線加熱 ・波長:おおよそ0.78~3μm ・特徴:エネルギー密度が高く、短時間の表面加熱ができるため、乾燥や表面処理、プリントプロセスなどに利用されています。
- 中赤外線加熱 ・波長:約3~50μm ・特徴:物質内部への浸透性と表面への吸収効率のバランスが良く、食品加工や塗装、接着など多用途に用いられます。
- 遠赤外線加熱 ・波長:約50~1000μm(またはそれ以上) ・特徴:物体全体にじんわりと均一に表面全体を加熱され、調理器具やヒーター、セラミックの乾燥などで活用されます。
- 欠点
- 基本的には表面を加熱するため、内部まで均一に加熱することは難しい。 - 立ち上がり・立ち下りのタイムラグが発生する。 - 対象物の表面状態(色や質感)や材質により、吸収効率が大きく左右される。 - 加熱効率は誘導加熱に比べると低い場合がある。(周囲への放射損失がある)

まとめ
ガス加熱から電気加熱への移行は、脱炭素や運用効率向上を同時に達成する有力な手段です。誘導加熱は特に金属などの導体の内部から効率的に加熱したい場合に適しており、短時間で高温に達する必要がある加工に向いています。一方、赤外線加熱は対象物の表面や薄い層を均一に加熱する用途に適しており、さまざまな材質に対応できるという強みがあります。用途や加熱対象に応じて、どちらの方式が適しているかの選択や双方を組み合わせた運用を検討することが重要です。 👉“誘導加熱を検討してみたい!”とお考えなら、当社のIH誘導加熱を体感してみてください。
