私たちの日常生活は、高速かつ高品質なデータ通信に支えられています。その“見えない動脈”ともいえるのが単心光ファイバーであり、その性能を左右するのが研磨工程です。研磨によってコネクタ面の凹凸を極限まで平滑化し、信号損失や反射を抑えることで、インターネットの高速動画配信やオンライン会議、遠隔医療、スマート家電の安定動作など、身近なサービスを滞りなく届けています。
本記事では、単心光ファイバーにおける研磨の役割とその重要性を改めて整理し、具体的な研磨工程と仕上げのポイントを解説。日常の快適な通信を支える“単心光ファイバー研磨”の舞台裏を紐解きます。

光ファイバー
(画像=光ファイバー)

目次

  1. 単心光ファイバーとは
    1. 活用例(テレコミュニケーション分野)
    2. 単心光ファイバーの研磨方法
  2. 仕上げ研磨の重要性

単心光ファイバーとは

「単心」とはケーブル内部に光ファイバーが1本だけ入っている、という意味です。構造はガラス製の芯(コア)+クラッド(被覆)に保護コーティングや外装ジャケットを施したシンプルな1心構成。複数本を束ねた多心ケーブル(6心、12心など)と対比されます。

活用例(テレコミュニケーション分野)

1. FTTH(光ファイバー・トゥ・ザ・ホーム):
 – 建物内の「配線用単心ケーブル(ドロップケーブル)」として、集合住宅の各住戸まで1本ずつ引き込む。
 – ONU(光回線終端装置)と光コンセントをつなぐシンプルックス型パッチコードに用いられる。
2. データセンター/アクセス設備内: 
 – 光スイッチやODF(光配線フレーム)間のパッチコード(短距離の接続)に。
 – 機器間を単純に1対1で結ぶポイント・ツー・ポイント用。
3. 局舎内バックボーンや中継線のテスト:
 – 長距離向け多心ケーブルの1心だけを取り出して動作確認や工事後試験用の簡易ラインとして使う。

なぜ「単心」が選ばれるのか?
 – 取り回し性が良く、狭い空間や配線ラック内でも柔軟に配線できる
 – コネクタ終端・研磨が1本分なので作業時間・コストを抑えられる
 – 必要なリンク数だけ引けるため、不要な余剰心が出ない

まとめ 
単心光ファイバーは「1リンクをシンプルに構成する」ための基本ユニットです。FTTHの各住戸接続、データセンターの機器間配線、局舎内テスト回線など、網羅的な通信インフラの末端や中継・試験用途で広く活用されています。

単心光ファイバーの研磨方法

単心光ファイバーの研磨は、「粗→細」の順に研磨フィルムを切り替えてコネクタ端面を鏡面に仕上げるのが基本です。以下では、Mipoxの研磨フィルムの一例プロセスをご紹介します。

Domaille製研磨機でのプロセス
(画像=Domaille製研磨機でのプロセス)
精工技研製の研磨機でのプロセス
(画像=精工技研製研磨機でのプロセス)

以上が、Mipoxの研磨フィルムを用いた単心光ファイバー研磨の代表的なワークフローです。粒度を粗から細へ順次切り替えることで、短時間かつ安定した鏡面仕上げが可能になります。現場環境やコネクタ種(SC/LC/FCなど)に合わせて荷重・時間を微調整してください。

仕上げ研磨の重要性

• 微細傷の完全除去
中研磨では残りがちなサブミクロン~ナノメートルスケールの微細傷を、最終粒度(0.3μm程度)で取り除くことで、挿入損失(IL)を低減し、反射損失(RL)を向上。リンク品質の安定化につながります。
• 鏡面平滑性の実現
表面粗さRa<0.1μmを目指す鏡面仕上げにより、光コア間の接触面が均一化。空気ギャップや微小凹凸による散乱・リフレクションを最小化し、長期にわたって高い伝送性能を維持します。
• 幾何公差の厳守
端面のカーブ半径やコアとクラッドの同心度(偏芯)をIEC 61300-3-35などの国際規格内に収めることで、異なる機器間でも再現性・互換性の高い接続が可能になります。
• 信頼性・耐久性の向上
完全鏡面仕上げされた端面は、コネクタの抜き差しや温度・湿度変動に対しても性能劣化しにくく、メンテナンス間隔を延ばして長期運用コストを削減します。
• 高速通信品質への直結 10 Gbps~100 Gbps超の高速データ伝送や高精細映像、遠隔医療などでは、わずかな反射雑音がビットエラーやパケットロスを招くリスクを増大。仕上げ研磨を省略すると、サービス品質低下の要因になります。
まとめ
仕上げ研磨は光ファイバーコネクタ性能の“最後の砦”です。これを適切に行うことで、低損失・低反射、高信頼性の通信リンクを確実に支え、現代ネットワークの高速性・安定性を裏打ちします。

Ultimas-NEC5.製品カタログ
(画像=Ultimas-NEC5.製品カタログ)

■最後に
仕上研磨は光ファイバーコネクタの性能を左右する重要なプロセスです。私たちは、単心光ファイバー品質安定に向けた「026Ultimas-3 NEC5」の開発を進めています。今後も日常の快適な通信環境に貢献して参ります。