最近、ものづくりの現場で「高周波誘導加熱」という言葉を耳にしませんか? これは電磁誘導の力で金属が自分自身を温める仕組みで、IHクッキングヒーターと同じ原理です。コイルに交流電流を流すと磁界が生まれ、金属の中で渦電流やヒステリシス損が起こって熱に変わります。火を使わず、非接触で短時間にピンポイント加熱できるので、鉄やステンレスといった導電性素材の加熱にぴったりです。
焼き嵌めってどんな工法?
「焼き嵌め(やきばめ)」は、穴をもつ部品を温めて膨張させ、常温では入らない軸やシャフトを差し込む方法のこと。例えば、ギアやローターコアを温めると穴径が少し広がり、その瞬間に簡単にはめ込めます。冷えると穴が元の大きさに戻り、軸と部品ががっちり固着するので、強い結合力が得られます。昔は山車や屋台の木製車輪に鉄輪をはめる際にもこの技法が使われました。鉄の輪を熱して膨張させ、木の輪にはめてから冷やせばズレにくくなるんです。
誘導加熱を使うとこんなに違う
従来はバーナーやヒーターで部品全体を温めていたため、周りの部品まで高温になってしまったり作業環境が暑くなったりとデメリットがありました。高周波誘導加熱なら、必要な場所だけを高速で均一に温められるので、余計な熱影響を減らしながら適切な温度まで素早く上げられます。非接触で加熱できるので部品を傷めにくく、加熱時のみ高周波を発振する仕組みのためランニングコストも抑えられるのが魅力です。ある技術解説では、金属部品を150〜300℃程度まで膨張させると、シャフトを容易に挿入でき、冷却後には強力な摩擦力が生まれると紹介されています。炎を使わないため作業者の安全や環境への負荷低減にもつながります。
身近なところでも活躍
モーターやポンプなどの製造では、ローターコアを加熱してシャフトを通す焼き嵌めが頻繁に行われています。高周波誘導加熱装置は非接触で金属を短時間に昇温でき、IH調理器のように手軽に使えるため、生産ラインへの組み込みも簡単です。加熱して膨張した穴にシャフトを通し、冷却すると縮んでしっかり固定されるので、回転力をロスなく伝えられます。環境面でも、ガスバーナーや炉に比べてカーボンニュートラルに寄与する省エネルギーな方法として注目されています。IHヒーターや電子レンジが食材を素早く加熱する様子を思い浮かべれば、この工法がイメージしやすいかもしれません。
未来へ向けた取り組み
誘導加熱と焼き嵌めの組み合わせは、精密部品をしっかり固定しながらエネルギー消費とCO₂排出を抑える注目の工法です。IH調理器のように「焼かない・溶かさない・削らない」加熱方式を取り入れることで、作業者にも環境にも優しいものづくりが広がっています。興味を持った方は、ぜひお問い合わせください。
