アルミホイールの研磨仕上げにはさまざまな種類があります。その中でも特に高級車向けに採用される鏡面仕上げの作業効率をアップする方法を実際の営業活動の取り組みを通じて紹介します。

自動車向けアルミホイールの構造概要
鏡面仕上げ研磨のご紹介の前に、アルミホイールの製造方法と組立方法を整理します。
ホイール製造方法
大きく分けて2通り、鋳造と鍛造があります。
鋳造は、デザイン性が高く、値段も安いのが特徴。対して鍛
造は、軽さ、強度、剛性面で優れた性能を発揮するものになっています。
ホイール組立て方法
1ピース構造 | |
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構造特徴 | リム部とディスク部が一体で成形 |
製品特徴 | 軽量でエア漏れがない 飾りがつけにくく製造が難しい 破損が大きい場合は修理ができない |
2ピース構造 | |
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構造特徴 | リム部とディスク部を分割して成形 溶接もしくはピアスボルトで結合したもの。 |
製品特徴 | リムが損傷した場合、取り替えが可能 ピアスボルトがデザインの一部となり、豪華感が出る |
3ピース構造 | |
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構造特徴 | リム部を外側と内側に分割して成形 二つに分割したリムに成形したディスク部と組み合わせ、 ピアスボルトで結合したもの。 |
製品特徴 | 2ピースと同様にデザイン性に富む 各部品の互換性は最も高く修理も可能、重量がアップ |
効率を考えた鏡面仕上げの工程
ここからは鏡面仕上げにおいて具体的な課題を抽出し、それをどのように解決したのかを実際の営業活の 取り組みを通じご紹介します。
従来の研磨工程
まず、一般的な鏡面仕上げまでの工程は次の通りです。
一般的な鏡面仕上げまでの工程 | |||
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1.溶接部凹凸修正 2.鋳造、鍛造の下地 3.ショットブラストの下地 4.塗装の下地 5. バリの下地 ↓ 鏡面バフ仕上げ |
ペーパー粗仕上げ #40~#180 ↓ ペーパー中~最終仕上げ #400~#600 ↓ バフ仕上げ |
効率アップの提案と課題
上記の従来型工程でいくと、バフ仕上げにかなりの時間、コスト、労力がつぎ込まれることになります。一口にバフ仕上げといっても、サイザルバフ⇒綿バフ⇒仕上げバフなどのように研磨力の異なるバフを各固形研磨剤と組み合わせ、順を追って仕上げていきます。
研磨布紙メーカーの立場から考えると、固定砥粒研磨材であるペーパーでできる限り細かい番手まで仕上げておけば、自ずとその後工程のバフ仕上げの時間短縮が実現可能で作業効率アップに貢献できると考えました。 しかし従来のペーパーの課題として、ペーパー番手が細かくなればなるほど目詰まりによるスクラッチ傷のリスクが高まること、またペーパー交換作業頻度も増えることなどの非効率が考えられました。このような理由からペーパー最終番手は#400~#600あたりが主流でした。
新製品による課題解決
このような状況下において当時、当社の新製品として【フィルムマジックペーパー】が発売されました。
この製品は、本案件のように作業性の良い固定砥粒であるペーパーでできる限り細番手での仕上げ研磨を行いたいが、目詰まりや作業性の問題から、遊離研磨へ移行せざるを得なかった作業に新たな選択肢を与えました。
まず、従来のマジックタックペーパーではラインアップとして存在しなかった#800より粒度が小さい#2000までを設定しました。また目詰まり対策として、ペーパー表面に目詰まり防止剤をコーティングしました。これにより目詰まりによるスクラッチ傷のリスク低減が実現しました。また、基材においても従来の紙ベースではなくフィルムを採用しました。これにより紙基材製品に比べて仕上げ面の均一化が実現され、後工程に磨きがある本件のような研磨作業にはうってつけの研磨材となりました。

作業効率アップした研磨工程
このフィルムマジックを採用することで作業効率をアップさせた研磨工程を、アルミホイールのディスク平面部研磨を例にとってご紹介します。
まとめ
バフ研磨にかかるコスト(材料費、材料管理費、作業時間)の低減と、作業効率アップをはかるため、固定砥粒研磨材である研磨布紙の高番手化のニーズは高まっています。本件においてもフィルムマジック採用により、#800~#1000までペーパーで対応したことにより、従来対比バフ作業時間30%軽減、コスト20%軽減の評価をユーザーよりいただきました。 この経験を生かしてさらに応用を利かせ、今後もお客様に喜んでいただける提案営業を目指し努力してまいります。