金属研磨で使用されているバフ製品にエメリーバフ(通称鉄バフ)があります。鉄バフは価格が安く、研削性に優れ、追随性が良く、そして仕上げ面も細かく仕上がるのが特徴です。メッキや塗装前の下地研磨になくてはならない製品として、お使いのお客様も多いのではないでしょうか。

しかし鉄バフは工業生産ができず職人さん自身での製作が必要という理由から、鉄バフに代わってフラップホイールが使用されるケースが多くなってきました。今回は、鉄バフのメリット・デメリットのほか、フラップホイールの特徴や問題点の対処方法、実際の導入事例などをご紹介します。

目次

  1. 鉄バフは使い勝手良い商品
    1. 鉄バフの製造工程は大変
    2. 鉄バフのメリットとデメリット
  2. フラップホイールは手間いらず 
    1. フラップホイールはすぐに使えます
    2. フラップホイール製品NPホイールのメリット・デメリット
  3. A社での導入事例
  4. まとめ

鉄バフは使い勝手良い商品

ここでは鉄バフの製造方法と特徴、メリット・デメリットについて記載していきたいと思います。

鉄バフ
(画像=鉄バフ)

鉄バフの製造工程は大変

まず、鉄バフは布地を重ねて縫い付けたホイール形状のバフ台に接着剤となる膠を刷毛で塗り付けるところから始まります。その後、砥材のエメリ粉をバフに乗せていき、乾燥させるという工程が必要で研磨作業者の大きな負担となっていました。過去、サービス残業などで職人さんが対応していた経緯もありますが、現在の働き方とはそぐわない傾向にあります。

鉄バフのメリットとデメリット

鉄バフは、イニシャルコストが安く、切れ味良好、材料に対して馴染みが良く仕上げ面も細かい等の大きなメリットもあり、メッキ前処理、塗装の前工程として重宝されていました。しかし、耐久力の面では必ずしも良いとは言えません。砥材のエメリ粉は、天然の研磨材を主成分としていますので耐久に乏しく、バフの表面にしか砥材が付着していませんので交換頻度は高くなります。バフレース等の手研磨での作業ではあまり問題になりませんでしたが、自動研磨装置、ロボット研磨などでの使用には向いていません。近年省力化を求める需要に対しては対応できないことも多くなってきました。下の工程手順のように完成まで多くの工程時間、労力がかかります。

【鉄バフ製造工程手順】

  1. ドレッサー工程
  2. 膠塗布1回目
  3. 乾燥(12時間以上)
  4. 膠の厚み検査作業
  5. ドレッサー作業(平面出し)
  6. ドレッサー作業(角除去)
  7. 膠塗布2回目(エメリー粉接着用)
  8. エメリ粉塗布工程
  9. 押しプレス工程
  10. エメリ粉塗布(仕上げ)
  11. 12時間以上乾燥→完成
鉄バフ製造
(画像=鉄バフ製造)

フラップホイールは手間いらず 

近年鉄バフに代わって使用されるようになってきたのが、フラップホイールと呼ばれる製品です。この項では、フラップホイールの構造と特徴、鉄バフと比較してのメリット・デメリットについて記載していきます。

フラップホイール製品
(画像=フラップホイール製品)

フラップホイールはすぐに使えます

まず、フラップホイールの構造は、芯材に研磨布(サンドペーパー)を放射状に植え付けた構造になっています。芯材は、金属・木材・ベーク芯などが使用されます。フラップのサイズ、用途などで選択されますが、一般的には金属が使用される傾向があります。また、工業用製品として販売されていますので鉄バフのように職人さんが手間をかける必要もありません。ケースから取り出してすぐに使用できます。

フラップホイール製品NPホイールのメリット・デメリット

性能的には耐久力に優れているというメリットもあります。放射状にサンドペーパー(研磨布)が植え付けられた構造になっており、研磨開始とともに外周から摩耗します。摩耗することで新しい砥材のついたサンドペーパー(研磨布)が出てくるため、長寿命で取替頻度が低減されます。長寿命なので仕上げ面も安定しています。その点では、自動機、省力化向きのアイテムと言えます。
ただ、鉄バフとの比較でホイール自体が柔らかいので馴染み性が良い反面、研削力が劣る傾向にあります。サンドペーパー(研磨布)のバックアップになるものがない構造なので研磨圧が逃げてしまいます。この点では、鉄バフの方に軍配が上がります。
しかし、サンドペーパー(研磨布)の硬さはいろいろ選べます。Mipoxでは、基材となるサンドペーパー(研磨布)から組み立てまでの一貫生産をしている数少ない研磨材メーカーでもあります。ご要望があればお客様と相談しながら改善もできます。また、構造的には羽密度、長さの調整なども行いながら作業内容にマッチした製品の提案が可能です。

A社での導入事例

鉄製パイプ形状製品
(画像=鉄製パイプ形状製品)

ここでは、鉄バフ使用していたユーザーA社での導入事例を紹介します。A社での鉄バフ使用での課題、フラップホイールテスト時での課題と解決方法などを記載していきます。A社では、鉄製パイプ形状の製品をメッキ、塗装前の研磨を鉄バフで行っていました。研磨装置としては、双頭のバフレースを使用し、作業者の手作業となっていました。A社では生産量の増加に伴い、職人さんの鉄バフ製造が追いつかなくなってきていましたし、職人さんの世代交代もあり鉄バフを社内で製造するのも困難となっていました。そこでMipoxへ代替品の提案依頼があり、訪問することとなりました。

鉄バフ
(画像=鉄バフ)

【現行仕様と提案アイテム】
■使用鉄バフ(ソフト基材):外径300φx25x25.4 #220 #320 
■提案品(DRAX):①NPホイール外径305φx25x170(フランジ170x25.4)#220 #320

はじめ、上記アイテムでサンプリング行いました。しかし、フラップ特有の構造から基材に逃げが働いてしまい、思うような研磨力が出ませんでした。また、フラップは不連続研磨と言われるはたき研磨となります。基材がパタパタと不連続で材料にあたるので作業者の手に振動として伝わるとの課題もありました。そこで3点の対策をすることにしました。1点目は、研磨力対策として粒度を1番手粗くする。それに加えて2点目は仕上げ面対策として柔軟な研磨布に変更(DRAX→SARJ)。3点目は、振動対策として金具径を小さく(170φ→95φ)する。この3点を変更することで仕上げ面、作業者のユーティリティーを改善することができました。

【現行仕様と採用アイテム】
■使用鉄バフ(ソフト基材):外径300φx25x25.4 #220 #320 
■提案品(SRAJ基材):①NPホイール外径305φx25x95(フランジ95x25.4)#180 #240
結果:研磨力・研磨時間の改善

上記のような結果から作業性の改善、作業者の手への振動が軽減され切り替えが実施されました。 今回は、一度の試作品改善でユーザーニーズに応えることができました。これは、Mipox研磨基材製造から組み立てまでの一貫生産を行っていることで基材選定が容易であることと、自社で組み立てしており構造の変更も複数選べることで、お客様の要求に対してスピーディーに対応できたと自負しています。それに加えて、長年積み重ねてきた製造ノウハウと顧客事例情報があることも大きな要因と考えています。

NPホイール
(画像=NPホイール)

まとめ

今回は、過去から長年にわたり使用され続けている鉄バフの製造方法、特徴、メリット・デメリットについて記載しました。また、それにとって代わりつつあるフラップホイールについてメリット・デメリットについて記載、また代替提案時に関しての問題点対処方法について記載しました。フラップホイール(NPホイール)は当社製品の中でもさまざまな顧客ニーズに対応可能な製品であります。なお、Mipox製品の中にはまだまだ特徴的な製品も数多く存在します。これからもMipox製品で顧客に喜んでいただけるよう期待に応えていきます。