製造ラインの工程において、研磨は最も自動化が難しい工程と言っても過言ではありません。職人によって一つ一つ丁寧に研磨して作られていると言えますが、省力化ができない工程とも解釈できます。ここでは、自動化が難しい理由について説明した上で、ロボットを使用した研磨方法をご紹介します。

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目次

  1. 研磨工程の自動化が難しい理由
    1. 費用対効果
    2. 量産
    3. 研磨対象ワークの違い
    4. 設置条件
  2. 研磨の自動化の必要性
    1. 今日の研磨事情
    2. 研磨の自動化はなぜ必要?
  3. ロボットを使用した研磨方法
    1. 研磨に適したロボット
    2. 剛goQを使用した多関節ロボット
    3. 研磨ベルトを使用した多関節ロボット
  4. 研磨の自動化に向けた現時点での課題とまとめ

研磨工程の自動化が難しい理由

費用対効果

研磨工程の自動化を検討する前提として、費用対効果に見合うものかどうかは重要な項目の一つです。自動化のための研磨ロボットや専用研磨装置を導入するにあたって、どのくらいの期間で投資額を回収できるかをしっかり見定める必要があります。また、今まで人が作業していたことを自動化するため、新しい人員配置まで考える必要があります。

量産

自動化しやすいのは「少品種大量生産」であり、投資費用の回収が比較的行いやすくなっています。逆に「少量多品種」は自動化の構想が難しく、品種ごとでの検討をしなければなりません。品種が増えることによって投資額も上がってしまいます。

研磨対象ワークの違い

同じ品種だとしても、研磨対象のワーク条件が一つ一つ異なる場合は自動化が難しくなってきます。例えば、木材を使用した家具や楽器等は、一つ一つ木目や形状、硬さの性質が異なる場合があります。微々たる違いでも自動化の構想をするうえで重要な項目になります。

設置条件

研磨ロボットや専用研磨装置を導入するうえで電気面を考える必要があるほか、設置するスペースを確保する必要があります。日本の工場ではスペースに問題があることが多く、自動化を断念する要因の一つとして挙げられます。

研磨の自動化の必要性

今日の研磨事情

近年、研磨の自動化に取り組んでいる企業は多くなってきましたが、他製造工程に比べても研磨工程の自動化の進捗は遅くなっています。その理由として、日本は少量多品種が多く、スペースの問題もあり、費用対効果に見合わないケースが多くあります。また、内製ではなく研磨工程を外注化している場合、投資額を回収できる仕事の継続を見定めることができず、自動化に踏み切れないこともあります。

研磨の自動化はなぜ必要?

上述のような問題がありながら自動化を推進する理由として、職人の高齢化と後継者不足が挙げられます。研磨は長年の技術により力量が変わってきますが、職人の高齢化によって研磨作業できる人が限られてきます。また、後継者不足に伴う労働者不足対策として、今までは外国人労働者の雇用でカバーしていましたが、コロナ禍で人材確保が難しくなり労働者不足が深刻となっています。
もし自動化が実現できれば技術レベルでの差がなくなり、安定した品質を保つことができます。
研磨工程の自動化に取り組むことによって、現在から将来までメリットがあると考えられます。

ロボットを使用した研磨方法

研磨に適したロボット

専用の研磨装置を導入する方法もありますが、研磨対象のワーク形状にもし変更の可能性がある場合、汎用性がある多関節ロボットを使用した自動研磨の方が比較的対応しやすいでしょう。
多関節ロボットを使用した研磨方法として、一つはロボットにサンダー等の研磨ツールを持たせて固定した研磨対象ワークに当てる方法の「ツール把持」、もう一つはロボットに研磨対象ワークを持たせて固定した研磨ツールに当てる方法の「ワーク把持」があります。6軸多関節ロボットが多く採用されており、6箇所の間接を持ち、人の手と同じような動きを再現しやすくなっています。このロボットに動きを覚えさせるティーチング作業を行うことによって、人に代わってロボットで研磨を行うことができます。

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(多関節ロボット)

剛goQを使用した多関節ロボット

ダブルアクションサンダーやシングルアクションサンダー、オービタルサンダーを使用し、裏面がマジックタイプの剛goQを使用した研磨方法です。前述したツール把持とワーク把持両方で対応可能となっており、塗膜の研磨等に使用されます。サンダーと剛goQの間にクッションパッドを挟むことにより、曲面にも対応できます。使用面積が狭いため交換頻度は多くなりますが、現行の研磨方法に近い仕上げ面を得られます。

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(剛goQ)

研磨ベルトを使用した多関節ロボット

研磨紙ベルトや研磨布ベルトをベルト研磨機に装着した研磨方法です。ツール把持とワーク把持両方で対応可能であり、ツール把持でベルト研磨機の数を増やすとその分番手を刻んで研磨することが可能です。
Mipoxでは金属研磨用レジンクロスベルトFRAX-52-Bから、柔軟研磨布ベルトNRWJ-B等のラインアップがあり、用途に沿った選定が可能となっています。

 
(金属用レジンクロスベルトFRAX-52-B)
柔軟クロスベルト NRタイプ
(柔軟研磨布ベルトNRWJ-BDS)

研磨の自動化に向けた現時点での課題とまとめ

製造業の大量生産は海外に移管している場合が多く、日本では自動化難易度の高い少量多品種の製品が多くなっています。この課題を克服するためには、スキャン技術の向上によるティーチングの簡略化、研磨機の低圧化、研磨材のフレキシブル対応等さまざまな面で解決していく必要があります。
高齢化や後継者不足が進むにつれて、自動化推進は技術の向上と並行して進んでいくと考えられ、研磨材に関しては研磨力や耐久力の向上が求められると予想されます。自動化が当たり前の世の中になると、研磨材の研磨力向上によって研磨時間を短縮することや、研磨材の耐久力向上によって交換頻度を少なくして生産効率を上げることが課題となります。 このような製造業の発展に貢献するために、Mipoxでは高研磨力、高耐久力製品の開発を進めてまいります。