ハイテク業界などでは製品の高度化が進むにつれ、より精度の高い研磨方法が求められる傾向にあります。Mipoxが取り扱う研磨装置ラインアップのひとつである「内周研磨装置」は、ポリエステルフィルム上に研磨砥粒が塗布されたテープ状の研磨フィルムを使用し、様々な形状の加工物の内周部を高い精度で研磨することができます。
手作業による研磨には熟練の技術を必要としますが、研磨装置を導入することで人手不足や技術継承の課題を解決することもできます。研磨フィルムによる研磨加工は、CMP(化学的機械研磨)やラッピングなどの遊離砥粒による研磨と、砥石研磨などの物理的な研磨の間を取り持つ性能と精度を持ちます。
本記事では、内周研磨装置の使用目的や特徴のほか、内周研磨装置による加工例、メリットなどについて解説します。
自動車業界における内周研磨装置の使用目的

Mipoxの研磨フィルムを用いた研磨方式は、その特徴である薄さと柔軟性を活かした倣い加工であるため、安価な構造、容易な調整で、元の形状を崩すことなく粗さを調整することができます。
研磨フィルムを用いた独自の研磨方式による加工によって、下記のような結果を得ることができます。
- 粗さの向上による摩擦抵抗の削減
- 品質の安定性向上(工程能力値の安定)
- 微細な精度調整(μm単位での加工)
- 外観(見た目)の改善
最終の仕上げ工程としての粗さの向上を目的とされるエンドユーザ様が多く、自動車業界での実績があります。例えばトランスミッション・潤滑部品における、オイルポンプ・スリーブ・ドラム等の内径部を研磨フィルムにて加工することにより、
- 疲労強度、耐摩耗、耐熱などの機械的強度の向上による燃費性能の向上
- CO2低減
- 環境に配慮した加工工程の見直し
- 加工効率化
などの効果を得ることが目的とされています。
上記の内径以外の事例として、ダンパープーリーボスやオイルカバー等の、通常の外径研磨では加工が難しい外径部分の研磨等にも用いられます。
自動車電子業界をはじめ各種業界において製品の技術レベルは目覚ましい向上を遂げています。最新ハイテク製品の各種部品に対して、その精度を決める最終仕上げ工程の研磨加工はますます重要度を増してきています。
以下は、当社の内周研磨装置をご使用になったお客様の加工事例です。ご覧の通り幅広い製品で採用されています。
【加工事例】
- オイルポンプ
- オイルポンプカバー
- ダンパープーリー
- スリーブ
- ドラム
- ロータ
- アウターローター
- CVT内径部
- ローラーブッシュ
- シリンダハウジング
【内径研磨の加工】


内周研磨装置の特徴
内周研磨装置はロール状の研磨フィルムを一定速度で送りながら、ワーク側を回転させることで研磨加工を行う装置です。研磨加工するために送り出された研磨フィルムは、研磨加工後に巻き取られ、1ロールが使い終わると新しい研磨フィルムと交換する方式なっています。
研磨フィルムを用いた内周研磨装置ならではの特徴として、以下のようなものがあります。
(1)表面を均一に研磨できる
研磨フィルムを任意の速度で順次送り出すことで、常に新しい面で研磨することができます。それにより、切粉の目詰まりによる粗さの変化が発生しないため、常に一定の加工条件で研磨することが可能となります。結果、表面粗さのバラつきがなく、精度を崩すことのない研磨が実現され、品質の向上につながります。
(2)加工性能のコントロールに気を配る必要がない
他の消耗品のように、目詰まりによる使用中の研磨力の変化に伴う加工性能コントロールの管理に気を配る必要がありません。研磨フィルム1ロール を使い終わったら、新しいロールと交換するだけで、後は気を配らずとも常に同じ研磨結果を得られるため、品質管理が非常に容易です。
(3)常にクリーンな環境を保つことができる
粉塵が研磨フィルムに付着して巻き取られるため、舞い上がらずクリーンな環境を実現できます。クーラント(冷却液)の使用も可能なため、湿式研磨にすることでの粉塵そのものの抑制も可能です。

(4)様々なワークへの対応が可能
研磨フィルムの幅や、研磨フィルムの当て方を工夫することにより、様々な形状に対する内径研磨に対応させることが可能です。
据え置き型からユニット型まで、ご要望に応じた仕様をご相談いただくことが可能です。治具製作の対応も可能で、Mipoxの研磨ノウハウとの組み合わせにより、最適な研磨条件の提案をさせていただきます。
研磨フィルム加工による仕上がり面粗さ
研磨フィルムを用いた内周研磨装置での加工による仕上げ面粗さの一例をご紹介いたします。
目的:ホーニングからの代替え
旋盤後に、作業者が手加工にてホーニングを行っているため生産性・品質安定性・安全性が悪い。
研磨例:使用フィルム粒度 #800(20μm) WA砥粒 35秒研磨
研磨前 Ra=3.0464

研磨後 Ra=0.8912

結果:手加工から装置化したことで、上記の研磨結果を生産性・品質安定性・安全性を向上させながら得ることができました。
装置化することのメリット
超仕上げ研磨加工は、作業者の熟練度が要求されます。手作業では難しい最終研磨工程を装置化することで、下記のようなメリットを得ることができます。
- 人手不足、後継者不足の解消
- 作業時間の短縮
- 作業可能時間の増加
- 品質安定性の向上
- 歩留まりの向上
- 作業安全性の向上
- 再現性の向上(誰がやっても同じ結果を得られる)
- 技術継承にかかる人件費や時間の削減
粒度・砥粒・パラメータ調整による幅広い加工能力の選択性
Mipoxでは研磨材総合メーカーとして、研磨対象のワーク素材や用途によって、異なる条件に合わせた研磨フィルムを選定することが可能です。粒度は#400~#10000、砥粒はGC、D(ダイヤ)などからの選択が可能です。
これらに加え、内周研磨装置本体側による加工パラメータの調整により、幅広い加工能力の選択が可能となります。以下はその一例となります。
【調整可能装置パラメータ】
- 加圧力
- 研磨時間
- 研磨フィルム揺動速度
- 研磨フィルムの送り速度
- ワーク回転数
※上記のほか、ご要望に応じたパラメータを持たせた設計のご相談も可能です。
一般的に研磨は粗さの向上を目的として行われますが、目的に応じて粒度を調整することで、逆に荒らすことも可能です。
サンプルテストが可能
実用化のお手伝いとして、サンプルテストのご相談を承っております。外径、内径、ボールねじ、カム、クランク、端面、平面など、約10種類のデモ機がございますので、お気軽にご相談ください。
内周研磨装置が不得意な加工内容
内周研磨装置は、研磨フィルムを使用した、砥石とスラリー研磨の中間の位置づけの性能を持つことが特徴となります。そのため、以下のような側面があります。
- 研磨フィルムや装置パラメータの調整によりある程度の調整は可能となりますが、材質によって取り代を求めるような加工には不向きな場合があります
- スラリー研磨と比較した場合、鏡面度は スラリー > 研磨フィルム となります。
- 装置の研磨ヘッドの都合、φ12以下の加工は不得意となります
研磨工程の装置化で人手不足・技術継承対策に
最新ハイテク製品の各種部品において、最終仕上げ工程である研磨加工は、製品の品質に関わる重要な工程です。研磨工程を装置化することによって、品質向上・品質安定・生産効率化が期待でき、人手不足・技術継承の側面においても貢献することが期待できます。もし研磨加工の導入や自動化をご検討であれば、ぜひ当社までお声がけください。