目次

  1. 重防食塗装とは
  2. 補修工事
  3. 補修工事処理方法について
  4. 最後に

重防食塗装とは

橋梁・高速道路・送電鉄塔などの構造物は、風・雨・ 雪・寒暖差などの厳しい環境にさらされるための対策が必要となります。重防食塗装とは、構造物を長寿命化するために、塗装を厚く塗り、長期間の防錆・防食性を保持する塗料を使用し、被塗物を厳しい腐食環境でも耐えるようにする塗装のことをいいます。

重防食塗装の工程例として鋼道路橋防食便覧から一般外面の塗装仕様を以下に示します。

C-5塗装系の塗装工程例
【製鋼工場】
素地調整:ブラスト処理→プライマー:無機ジンクリッチプライマー
【製鋼工場】
2次素地調整:ブラスト処理→防食下地:無機ジンクリッチペイント→ミストコート:エポキシ樹脂塗料下塗り→下塗り:エポキシ樹脂塗料下塗り→中塗り:ふっ素樹脂塗料中塗り→上塗り:ふっ素樹脂塗料上塗り 

鉄骨製作工場にて素地調整1種B(ブラスト処理)を施した後に、無機ジンクリッチプライマーや構造物用さび止めペイントを下塗りし、工場または現場にて耐候性に優れる2液形ポリウレタンエナメル、アクリルシリコン樹脂エナメルあるいは常温乾燥形フッ素樹脂エナメルを上塗りする塗装仕様が規定されています。重防食用塗料は粘度が高く、一度で厚く塗れるような仕様となっています。総合膜厚は 200μm以上となり、そのため、建築で通常使用される塗料に比べて重く、タレやすくなります。※

※塗料のタレ
垂直または傾斜した面に塗料を塗ったとき、乾燥までの間に、塗料が下方に移動して起こる局部的な膜厚の異常な状態であり、半円状、つらら状、波状またはカーテンのひだ状などになる現象のこと。厚く塗り過ぎ、塗料のうすめ過ぎ、気象条件の不適などによって起こりやすくなります。

タレの除去・修正、塗装前のアシ付けには、以下の製品が、使用されています。   

マジックタック、ドライタックペーパー
(画像=マジックタック、ドライタックペーパー)
NLディスク
(画像=NLディスク)

タレの除去修正に時間を要する場合は、高研磨力があり、耐久性のあるマジックタック(マジック式)・ドライタックペーパー(のり付き)を推奨します。塗装面をひどく傷つけずに除去する場合は、不織布ホイール:NLディスを推奨します。

補修工事

老朽化した国内橋梁の補修・延命工事が、喫緊の課題となっています。1964年の東京五輪以降に整備された高速道路網や新幹線の橋梁部分で、長寿命化するための工事が必要となる案件が多くあります。JR東日本は東北・上越新幹線の橋梁やトンネルなどの新幹線構造物を対象に2031年度から大規模に改修することを計画している。国交省によると、2023年3月時点で全国にある道路橋のうち39%が建設後50年を経過し、33年には6割を超える見込みです。

補修工事処理方法について

素地調整(下地処理)の作業は、その作業内容や方法に応じて大きく1種ケレンから4種ケレンまでの4種類に分類されます。そこで、さびの面積や塗膜の割れ、膨れなど旧塗膜の状態からどのケレン程度の素地調整で使用されている主な研磨製品をご紹介します。

  • 1種ケレン:錆やミルスケールを完全に除去し、鉄肌を出した状態にするために、ショットブラスト・サンドブラスト・剥離剤を使用
  • 2種ケレン:旧塗膜、錆を除去「ディスクグラインダー」
  • 3種ケレン:活膜は残し錆や浮き塗膜を除去「ディスクグラインダー」 使用研磨材:ファイバーディスク、ハイハイディスク、その他      

    ファイバーディスク
    (画像=ファイバーディスク)

    ハイハイディスク
    (画像=ハイハイディスク)

      * 4種ケレン:粉化物・汚れなどを除去「手作業」
    使用研磨材:ユニサンドパッド、ユニベックス、研磨布等

    ユニサンドパッド
    (画像=ユニサンドパッド)

    ユニベックスシート
    (画像=ユニベックスシート)

    研磨布シート

    (画像=研磨布シート)

    最後に

    高度成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等について、今後20年で建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなっていきます。このような中、労働人口の高齢化による建設業の人手不足は、深刻化しており、次世代への技術承継が大きな課題となっています。人手不足を解消するためには、作業の効率化が不可欠です。建設現場ではドローンやウェアラブルカメラといったシステムやツールの導入検討が進められる中、弊社にとっても、作業効率可能な研磨材製品の開発(研磨力、耐久性の持続が期待できるダイヤモンド研磨材)、省力化、自動(ロボット)化によって、少ない人手でも従来通り事業が継続できるよう生産性を向上させる提案を行っていきます。

    参考資料 ニュースイッチ 「東北・上越新幹線の大規模改修、“50年延命"へオープンイノベーション」https://newswitch.jp/p/10056 

    国土交通白書 2014 第3節 社会インフラの維持管理をめぐる状況(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/index.html)

    全建総連 全国建設労働組合総連合 「建設業を取り巻く現状(PDF)」https://www.zenkensoren.org/zenkensoren_cms/wp-content/uploads/2019/02/cf59ab61598d09bbb2401c008d620e73.pdf