次世代半導体としてSiC基板とともに実用化が進んでいるものとしてGaN基板があります。そしてSi基板上にGaN結晶をヘテロエピタキシャル成長させるGaNonSiはコスト・性能など様々な面で優れた可能性があるため実用化が期待されています。しかしながら、そのGaNonSi技術には様々な技術課題があります。
ここでは、我々Mipoxの研磨フィルム式エッジポリッシュ技術がGaNonSi基板の技術課題にどのような技術を使って有効的に解決していくのかをお伝えしていきます。

目次

  1. 次世代半導体としてのGaN
  2. GaNonSiとは 
  3. GaNonSi基板がもつメリット
  4. GaNonSi基板の技術課題
  5. 一般的なGaNonSi技術課題への対策
  6. GaNonSi技術課題に有効なMipoxの研磨フィルム式エッジポリッシュ
  7. まとめ

次世代半導体としてのGaN

GaN(窒化ガリウム)は、パワー半導体やLED照明、高周波デバイス用途に使われる半導体材料の1つです。同じ用途があるSiC(炭化ケイ素)と共に、長らく次世代半導体材料として実用化が期待されてきました。 近年パソコンやスマートフォン用のACアダプターにGaNが搭載されているものが多く流通するようになり、USB Power Delivery規格浸透の一翼を担う形で、高速充電化、高出力化、小型化が実現し、一気に身近なものとなり私たちの生活を便利にしてくれています。

GaNonSiとは 

GaNに代表される窒化物半導体は、半導体材料として一般的であるSi(単結晶シリコン)を大きく上回る電気的性能・特性をもつデバイスを製造する事ができます。

主には、高耐圧化・低損失化・スイッチングスピードの高速化が期待され各用途へ展開されていますが、窒化物半導体であるGaNを、Siウェーハ上にヘテロエピタキシャル成長させるGaNonSi(ガリウムナイトライド-オン-シリコン)技術は、量産性に優れなおかつ大幅なコストを削減して高出力デバイスを製造できる可能性があるため特に注目を集めています。 

現在国内外問わず、主要パワー半導体メーカーを筆頭にGaNonSi技術開発が活発に行われている状況であり、試作品の完成や、同アプリケーションを用いた製造ライン構築を発表するニュースが相次ぐなど、話題が尽きません。

GaNonSiウェーハトップエッジ研磨加工事例
(GaNonSiウェーハトップエッジ研磨加工事例)

GaNonSi基板がもつメリット

GaNonSiは、通常2インチ~3インチ程度の小径サイズにとどまる単結晶バルクGaNウェーハと比較して、6インチ~8インチ、12インチの大口径基板を容易に製造できることに加え、既存工場のSiデバイスを製造するラインをそのまま流用(小径単結晶バルクGaN専用の新たな設備投資が不要)できるメリットがあります。 大口径かつ厚い寸法の12インチSiウェーハ上にGaNのヘテロエピタキシャル成長を行い、その後サイズダウン加工をして、8インチ・6インチとして運用する手法も一般的に行われています。

GaN GaNonSi
インチ   2インチ~3インチ 6インチ~8インチ・12インチ
設備投資    必要    不要

GaNonSi基板の技術課題

GaNonSi基板にはメリットもありますが同時に次のような技術課題があります。

  • GaNとSi間の高い熱膨張係数の差によってもたらされる引張応力により表層であるGaNが壊れやすい状態になること
  • ウェーハハンドリング時のわずかな衝撃(特にエッジ部分の欠陥)により簡単に割れてしまうこと
  • SiとGaN間に複数の緩衝層を設ける一般的に適用される対策をもってしてもデリケートに扱う必要があること
  • 基板のエッジ部分に成長したGaNが汚染源になり半導体製造装置内のハンドリング部分を中心にGa汚染させてしまうリスクがあること
  • GaNは化学的に安定であり脱膜や洗浄処理で一般的なエッチング技術が適用しにくいこと(GaN除去が難しい)

一般的なGaNonSi技術課題への対策

GaNonSiの技術課題を解決するため、GaNonSiについては 下記の対策をとることが多くあります。

  • 規格外の非常に厚いSiウェーハを用い、GaN成長後のウェーハ全体の反りを抑制させること
  • 規格外厚さのSiウェーハ調達が困難な場合、大口径サイズの基板からサイズダウン後に厚さの確保すること
  • 欠陥が発生しやすいGaNonSiの外周部付近を除去するためのGaN膜成長後のサイズダウン加工すること

いずれの対策方法もGaNonSiの技術課題に対し一定の効果は期待できます。
しかしながら規格外のSiウェーハなので、エッジ部のトリートメント(面取り加工・鏡面化)が施せない(施されていない)場合が多いです。 また、サイズダウン処理後にあらわれる鋭利で荒れたエッジ部はGaNonSiウェーハの強度に致命的な悪影響を与えることになります。そのため各対策による効果が得られていない、もしくは得にくいことが一般的です。
これらの技術課題に対して、Mipoxのフィルム研磨方式エッジポリッシュ技術は、以下の特徴があり GaNonSiの技術課題解決への効果を発揮します。

GaNonSi技術課題に有効なMipoxの研磨フィルム式エッジポリッシュ

  • 低ダメージでGaNonSi基板のエッジ部を除去し面取り・鏡面加工までできること (砥石での研削加工と比べ、研磨フィルム方式はGaNへのストレスが少ない)
  • GaNonSiの特徴である反り抑制のために用いられる極厚Si基板にも柔軟に対応したエッジトリートメント加工 大きく湾曲している基板への湾曲矯正せずに済むエッジ部の面取り加工と鏡面加工(GaNへのストレスが少ない)
  • ノッチ部のGaN除去も簡単できること
  • 緩衝層を含む全ての構成膜を一気に除去できること
  • 通常の膜除去加工には研磨フィルムと純水のみ使うため、加工後の洗浄処理が簡単であること
  • 特別な化学処理を必要としないため、それを適用するプロセスを問わないこと
  • 12インチ→8インチのサイズダウン加工時、GaN膜(下層にあるSiC膜も含む)へのスリップ発生のリスクが低く、安定した歩留まりで生産できること
GaNonSiトップエッジ研磨加工装置概略図
(GaNonSiトップエッジ研磨加工装置概略図)
GaNonSiトップエッジ研磨加工中状態
(GaNonSiトップエッジ研磨加工中状態)

まとめ

Mipoxの研磨フィルム式エッジポリッシュ技術は、Siウェーハエッジ部分に強固に付着している各種の膜(層)をメカニカル作用で簡単に除去・脱膜処理することが可能であるため、特にこのGaNonSi基板に多く採用されています。
さらに、エッジミラー処理(鏡面化)も可能なので、脱膜後エッジ部分へのパーティクル再付着防止、GaNonSi基板の強度向上、破損防止、歩留まり向上の効果を付加できます。
GaNonSi基板のこれからの運用に、Mipoxの「研磨フィルム式エッジポリッシュ技術」を是非ご活用下さい。