ピアノは一般家庭にも広く普及した身近な楽器です。そのピアノの製造工程には研磨材が多く使われています。ピアノの塗装研磨工程の説明をさせていただきながら、どのようにして研磨コストを最小限にして、高品質な研磨仕上げ面を実現し、美しい外観に仕上げるのかをご紹介させていただきます。

目次

  1. ピアノの塗装を研磨する重要性
  2. ピアノに使われる塗料の歴史と種類
    1. ピアノ塗料の歴史
    2. ピアノ塗料の種類
  3. ピアノ塗装の研磨工程
  4. Mipox研磨紙のご紹介

ピアノの塗装を研磨する重要性

ピアノの塗装を含む木工の塗装工程は、常に品質向上とコストダウンの改善を進めており、その度に塗装工程や研磨工程の改善がされています。使用される塗料や塗装工程が変更された場合に、狙った研磨品質にならなくなってしまう場合があります。そのため、塗料や塗装工程の変更に合わせた研磨材を選ぶ必要があります。
ピアノの外観を美しい鏡面にするためには、塗装後の研磨工程がとても重要です。ピアノの外観を美しい鏡面に仕上げるためには、研磨工程で仕上げ面を均一にしながら塗装を平滑に研磨します。バフの磨き工程で研磨スジが残らないように、研磨紙を選定し研磨工程を設計します。

ピアノに使われる塗料の歴史と種類

ピアノ塗料の歴史

木工の塗装においても、最も研磨工程が長く手間がかかるのはピアノの黒色塗装です。ピアノの黒色塗装が一般的に広まったのは1900年代初めと言われています。それ以前は木目調の外観が主流でした。日本でピアノの生産を始める際に、湿気に強い塗料として選ばれたのが「漆」と言われており、漆の塗装から黒色ピアノが広まったと言われています。 ピアノに使用されている塗料は、主にUV塗料とポリエステル塗料の2種類です。その2種類の塗料について簡単にご説明いたします。

ピアノ塗料の種類

  • UV塗料
    UV塗料とは強いUV(紫外線)を塗料に照射することによって、短時間で液状の塗装を固めることができる塗装の方法です。UV塗料は、低公害や省資源・省エネルギーを目的として開発されました。一般的な樹脂系の塗料とは異なり、固まる際にCO2が出ず、大気汚染の原因となるシンナーなどの揮発性有機化合物(VOC)を含まないため、環境に配慮した塗料として注目をされています。紫外線照射の大型設備が必要ですが、比較的安価にピアノの塗装ができます。

  • ポリエステル塗料
    ポリエステル塗料とは、不飽和ポリエステルにスチレンモノマーを加えた塗料です。ポリエステル塗料を硬化させるためには空気から遮断する必要があり、その方法の違いでワックスとノンワックスの2種類のタイプがあります。
    ワックスタイプは、パラフィンワックスを塗膜表面に析出させて空気を遮断するタイプです。
    ノンワックスタイプは、空気と反応する分子を配合して塗料を塗布した後で空気との化学変化により空気を遮断するタイプです。

ポリエステル塗料は、表面硬度が非常に硬く摩擦に強くて、耐薬品、耐水性に優れています。厚塗りができ、木材に塗装すると湿気や乾燥から木材を守ってくれます。塗装面は光沢に深みのある仕上がりです。

 

ピアノ塗装の研磨工程

1. 木材の研磨
塗装前に行う材料となる木材の研磨です。この工程では使用される研磨材は粗い番手の研磨材です。ストロークベルトサンダー研磨の他に、半自動機としてEw研磨紙のワイドベルト研磨機が使われています。

研磨紙シート製品:AHAC-SDS P100 P120
研磨紙ベルト製品:DRAD-BDS P100 P120

2. 下塗塗装研磨
ポリエステル系塗料の場合は、下塗りはスプレー塗装されます。 240番の研磨紙を使用し、手研磨およびストロークベルトサンダーで研磨を行います。

研磨紙シート:RRCC-S P320
研磨紙ベルト:DRWC-B P240

3. 上塗り塗装研磨工程
ポリエステル塗料の場合は、上塗りもスプレー塗装されます。塗装は数回重ね塗りし、できるだけ厚い塗装膜を作り垂れないように塗装されます。 上塗り塗装後にストロークベルトベルトサンダーもしくはレベルサンダーで塗装面を平滑に研磨していきます。研磨紙の番手は320番からスタートし、400番⇒600番⇒1000番の研磨工程となります。 研磨紙の使用量を減らしてコスト削減する方法としては、研磨工程の研磨紙番手を1番手省略して工程を設計します.
研磨紙の粒度規格の順番は、320番・360番・400番・500番・600番・800番・1000番となり、数字大きくなるほど研磨材の大きさが小さくなり、研磨仕上げ面が細かくなります。320番よりスタートする場合は360番を省いて400番で研磨し、次に500番を省いて600番で研磨できます。1番手省略して研磨しても、前工程の粗い研磨目を消すことができます。

Mipox研磨紙
DRWC-B P320 → DRWC-B P400 → WRAC-B P600 → WRAC-B P1000

また、効率の良い研磨方法として、次の番手の研磨になるときに研磨目が直行するように研磨します。320番の研磨工程に対して400番の研磨は研磨する方向を直行させます。
こうすることによって、研磨工程を重ねても前工程の研磨目が消せたかどうか判別しやすくなり、且つ研磨面を平滑に仕上げることができます。

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Mipox研磨紙のご紹介

ここで使用されるDRWCとWRAC研磨紙製品は、ピアノ塗装研磨専用に製品開発された研磨紙です。
ピアノのポリエステル塗料やUV塗料は、木工で使用される塗装の中では最も硬度が高く、黒色の顔料が研磨の障害になります。顔料が塗料の中に入ると、研磨紙で研磨した後の削り粉が研磨紙に表面付着しやすくなり(目詰まり)、研磨紙の耐久性が悪くなります。そのため、DRWCとWRAC研磨紙は研磨力が高く目詰まりしにくい処方で造られており、コストパフォーマンスの高い研磨紙として設計されています。また、ポリエステル塗料のワックスタイプにも適した研磨紙です。

研磨紙WRAC-B(DRWC-B)
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特徴高い研磨力と目詰まりしにくい処方により耐久性を両立
紙基材Cw防水処理紙(DRWC-B:Cwクラフト紙)
研磨材溶融アルミナAA(DRWC-B:溶融アルミナWA)
接着剤フェノール樹脂
※DRWC-B研磨紙は、WRAC-B研磨紙と比較して研磨力を重視したタイプです。

弊社は今ある研磨材だけでなく、お客様のご要望に合わせた研磨材製品の改良・開発も行っております。
お客様のご要望に真摯にお応えして、カスタマーサクセスにつながるご提案をさせていただきます。