研磨業界は、長年にわたり「磨く」といった基本的な技術を軸に発展してきましたが、グローバル市場の競争激化や技術の高度化により、業界構造の変革が求められています。 この記事では、研磨業界における今後必要とされる競争戦略の主要な要素を解説します。

目次

  1. 市場規模とプレイヤー
  2. 両利きの経営
  3. 環境対策と持続可能な成長
  4. 業界再編と多角化戦略
  5. デジタルマーケティングと顧客対応力の強化
  6. M&Aによる成長機会の創出
  7. まとめ

市場規模とプレイヤー

国内の研磨業界は約80社が参入し、1000億円規模の市場を形成しています。主要プレイヤーには日系、中国系の企業などが存在しますが、企業規模や製品ラインナップ、技術力に大きな差が見られるのが特徴です。 これらの企業は、数十年に渡る伝統的な製造技術に加え、最先端技術を導入して競争力を高めています。

両利きの経営

研磨業界の今後の成長・成功には、「深化」と「探索」という二つの要素を同時に進めることが不可欠です。 つまり、既存技術の改良(深化)を進めつつ、新たな技術や市場への挑戦(探索)も行わなければなりません。 自ら市場を創出する努力をしなければ現状維持も困難になると思われます。 この「両利きの経営」は、持続的成長を実現するための重要な戦略となることでしょう。 例えば、Mipoxでは、研磨フィルムや研磨装置の開発に加えて、省エネルギーや環境対応技術など新分野の探索を行い、市場での競争力を強化しています。

環境対策と持続可能な成長

環境意識が高まる中、研磨業界でも環境対策が重要な競争要素となると予想されます。特に、CO2排出削減や有機溶剤の使用抑制といった環境負荷を低減する技術開発は、企業の成長を促進するだけでなく、社会的責任を果たすためにも重要です。これは研磨業界に限らず製造業全般に言えることです。Mipoxでは、溶剤レス研磨材(SLAC)を開発し、環境負荷を低減すると同時に高いエネルギー効率を実現する研究を続けています。炭化ケイ素などの研磨材を極力使用しない仕様変更も必要となってきます。 IH粉体塗装技術を用いた研磨製品の試作ラインでは、VOC(揮発性有機化合物)排出削減や、省スペース化・乾燥時間短縮などの大きなメリットを有し、環境および生産性の両面において高い付加価値を提供できると期待されています。IHによる加熱技術は、基材への短時間かつ均一な加熱が可能です。 このような環境対応型製品は、持続可能な成長を支える大きな要因となります。

業界再編と多角化戦略

研磨業界は事業承継等の再編が進む中、多角化の重要性が増しています。市場競争の中で、単一事業に依存するリスクを軽減するため、多くの企業が事業の多角化を進めています。具体的には、研磨材製造だけでなく、受託研磨加工やコーティングサービスなど、関連分野・用途への進出が求められています。Mipoxでは、研磨布紙や機能性フィルムの分野でも事業を展開し、受託コーティングや受託研磨などの「要素技術ビジネス」を積極的に拡大しています。 当社は研磨材を販売するだけでなく「プロセス自体」を提案できるという強みは、現代のカスタマーサクセスの潮流にマッチしています。

デジタルマーケティングと顧客対応力の強化

現代の競争戦略では、デジタルマーケティングによるデータ分析や顧客対応力の向上が不可欠です。特に、顧客のニーズに迅速に対応し、価値あるソリューションを提供する能力は、競争力の差別化要素となります。Mipoxは、デジタルマーケティングの強化を通じて顧客の動向を分析し、最適な製品やサービスを提供しています。また、研磨業界に特化したソリューション営業(技術営業)を全国・グローバルに展開し、顧客満足度を向上させています。

M&Aによる成長機会の創出

最後に、M&A(企業の合併・買収)は、研磨業界における成長機会を創出する手段として注目されています。Mipoxも、M&Aを通じて市場シェアや対象マーケットを拡大し、競争優位を確立しています。特に、関連事業へのシナジーを生み出すM&A戦略は、企業の成長を加速させる有効な手段です。ただしスムーズなPMIを行えるかどうかは、社内の仕組みがIT化されているかどうかが大きなポイントになると思われます。

まとめ

研磨業界における競争戦略は、技術革新、環境対応、多角化、そして顧客対応力の強化が重要な要素です。 当社も実践する「両利きの経営」やM&A戦略は、研磨業界全体の持続可能な成長を実現する鍵となるでしょう。