鉄道車両は長期間の使用に耐えるだけでなく、乗客の安全と快適さを確保するために、極めて高い品質と精度が求められます。このため、各部品や構造の仕上げに研磨材が広く使用されており、その役割は非常に重要です。今回は、鉄道車両製造において研磨材がどのように活用されているのか紹介します。

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目次

  1. 1. 車体パネルの表面仕上げ:美しい外観と塗装準備のために
  2. 2. 車内装部品の仕上げ:安全性と快適さを兼ね備えた内装づくり
  3. 3. 車輪と軸の仕上げ:安全運行を支える精密加工
  4. 4. 溶接部の均しと補修:強度と美観を両立させるために
  5. まとめ

1. 車体パネルの表面仕上げ:美しい外観と塗装準備のために

鉄道車両の外装パネルは、車両全体の見た目を決定づける重要な部分です。パネルは通常、溶接やプレス加工を経て形作られますが、これらの工程では、表面に微細な凹凸や溶接ビードが残ることが多くあります。これらの不均一な表面をそのまま放置すると、塗装工程で不具合が発生し、美しい仕上がりを妨げます。

ここで活躍するのが研磨材です。ディスクサンダーや研磨布紙を使ってパネルの表面を滑らかに整えることで、塗装が均一に乗り、美しい外観を実現します。さらに、このプロセスにより、パネル自体の耐久性も向上し、長期間にわたって車両の美しさを保つことができます。

・研磨布紙
特にシリコンカーバイド(炭化ケイ素)を用いた研磨布紙は、金属表面を滑らかに仕上げるのに最適です。硬度が高く、鋭利な研磨粒子が効率よく表面を均します。 当社でシリコンカーバイドを使用している研磨布紙は、乾式研磨紙シートFRCCなどが該当します。

空研研磨紙シート
空研研磨紙シート

・ディスクサンダー用研磨紙
アルミナやジルコニアを含む研磨ディスクが使用されます。これらは高い切削力を持ち、車体パネルの大きな面積を効率的に磨きます。

マジックタックペーパー丸型
マジックタックペーパー丸型

2. 車内装部品の仕上げ:安全性と快適さを兼ね備えた内装づくり

車両内部

車両内部の部品、手すりや、つり革がかかるフレームなどは、ステンレスパイプの鏡面仕上げがおこなわれることが多いので、研磨材としては、レジンクロスベルト、ホイールや仕上げのサイザルバフ、綿バフが使用されます。
この仕上げにより、部品表面が滑らかで傷がつきにくくなり、乗客にとって快適で安全な環境が提供されます。また、光沢のある仕上げは、車両の内装を一層高級感のあるものに仕上げます。

・NPホイール
ステンレスやアルミニウムなどの金属製品の表面を滑らかにするために使用されます。仕上げ前の粗い研磨作業に使用されることが多く、切削力が高いのが特徴です。

NPホイール、NPZ-Lホイール
(画像=NPホイール、NPZ-Lホイール)

・レジンクロスベルト
ステンレスやアルミニウムなどの金属製品の表面を滑らかにし、光沢のある仕上げを施すために使用されます。特に、装飾的な要素が求められる製品に適しています

レジンクロスベルト
(画像=レジンクロスベルト)

3. 車輪と軸の仕上げ:安全運行を支える精密加工

鉄道車両の車輪や軸は、車両の走行を支える重要な部品であり、その性能は安全運行に直結します。これらの部品は、製造後に精密な研磨加工を施され、表面の粗さを取り除きます。この仕上げは、特に車輪の踏面部分や軸の表面においてとても重要です。

車軸

研磨ディスクや研磨ベルトを使って、これらの部品を滑らかに整えることで、摩擦を最小限に抑え、部品の耐久性を大幅に向上させます。また、研磨によって高精度の仕上げが可能となり、車両の走行安定性を確保するために不可欠な工程となっています。

・研磨ディスク
特にジルコニアやアルミナ砥粒を使用した研磨ディスクは、高耐久性と優れた切削力を持つ研磨材で、特に硬い素材に対する仕上げに効果的です。車輪の踏面や軸の精密な仕上げに使用されます。
・研磨ベルト
特に セラミックやアルミナは、均一な仕上がりを得るための研磨バンドに使用され、特に軸部分の仕上げに利用されます。

ミニベルトサンダー用レジンクロスベルト、レジンクロスベルトファインセラ
(画像=ミニベルトサンダー用レジンクロスベルト、レジンクロスベルトファインセラ)

4. 溶接部の均しと補修:強度と美観を両立させるために

車両構造の溶接部は、車体全体の強度を左右する重要な部分です。しかし、溶接後には溶接ビードや余分な金属が残り、これらをそのままにしておくと、見た目が悪くなるだけでなく、後の組み立てや塗装工程に支障をきたす可能性があります。 研磨材を使用して溶接ビードを均し、表面を整えることで、溶接部の強度を維持しつつ、外観も美しく仕上げることができます。ディスクグラインダーや研磨シートを用いることで、溶接部が滑らかになり、車両全体の一体感が高まり、安全性と美観を両立させることが可能です。

車両製造

・ディスクグラインダー用研磨ディスク
アルミナやジルコニアの研磨ディスクは、高い切削力と耐久性を兼ね備えており、溶接部の均しに効果的です。これにより、溶接ビードが滑らかに整えられます。

ハイハイディスク
(画像=ハイハイディスク)

まとめ

鉄道車両製造における研磨材の使用は、単なる仕上げ作業を超えて、製品の品質、性能、安全性に直結する重要なプロセスです。各工程での精密な研磨加工が、鉄道車両の長寿命化と高品質な運行を支えており、当社もその技術進化に貢献してまいります。