近年のCAE解析は、計算能力の向上やソフトウェアの高機能化に伴い、より複雑な現象や多物理場を統合したシミュレーションが可能になっています。直感的な操作性や可視化ツールの充実により、専門知識が限定されがちな複雑なシミュレーションも、より幅広いエンジニアに利用されるようになっています。IH誘導加熱のCAE解析が、なぜ有効かつ注目されているかをご紹介します。

 

CAE解析とは

CAE解析とは、Computer-Aided Engineeringの略で、コンピュータ支援エンジニアリングによる解析のことを指します。これは、設計段階で製品の性能や構造、動作などをコンピュータ上でシミュレーションする手法で、実際の物理実験を行う前に解析を通じて予測や評価を行うことが可能です。具体的には以下のような解析手法が含まれます:
・構造解析(有限要素法:FEA)
・流体解析(CFD)
・熱解析
・振動解析

 

CAE解析を用いたIH誘導加熱解析について

CAE解析を用いたIH加熱解析では、加熱プロセスにおける物体内部での熱生成とその伝達をシミュレーションする手法です。主なポイントは以下の通りです:

  1. 誘導加熱の原理:
    ・IH(Induction Heating)では、対象となる金属などの導電体に交番磁界を印加し、内部に渦電流が発生します。この渦電流が抵抗による発熱を引き起こし、対象物が加熱されます。
  2. 解析のステップ:
    ・電磁界解析:対象物に印加される磁界の分布や、その中で誘導される渦電流の大きさと分布を計算します。通常、有限要素法(FEA)などを用いてMaxwell方程式を解きます。
    ・熱解析:電磁界解析で得られた発熱データを用い、対象物内部の温度変化や温度分布、熱伝導をシミュレーションします。
    ・多物理解析:IH加熱は電磁界と熱伝導など複数の物理現象が関与するため、これらを統合した解析が行われることもあります。
 

IH誘導加熱CAE分析のメリット

以下の点が特に注目されています:

  1. 多物理解析の進展:
    ・電磁場、熱、流体、構造など、異なる物理現象を同時に解析することが可能となり、現実の環境に近いシミュレーションが実現されています。
    ・例えば、IH加熱解析のような複雑なプロセスでは、電磁界解析と熱解析を連動させることで、より正確な温度分布や内部応力の評価が行えます。
  2. 計算速度と精度の向上:
    ・GPUやクラウドコンピューティングの利用により、大規模なモデルや細かいメッシュ分割が現実的に行えるようになり、短時間で高精度な解析結果が得られるようになっています。
    ・これにより、従来では膨大な時間を要していたシミュレーションプロセスが大幅に効率化されています。
  3. 最適化技術との統合:
    ・CAE解析は最適化アルゴリズムや機械学習と組み合わせることで、設計パラメータの自動最適化や不具合の早期検出が可能になっています。
    ・デジタルツインの概念も普及しており、実際の製品・プロセスと連動したシミュレーションで、継続的な性能改善や予防保全が実現されています。
  4. ユーザーインターフェースと使いやすさの向上:
    ・これらの進展により、CAE解析は従来の設計プロセスを大きく変革し、製品開発の初期段階での問題予測や試作回数の削減、開発期間およびコストの低減に大きな役割を果たしています。

IH誘導加熱システムのCAE解析を用いたソリューション

当社では、このCAE解析を活用することで、IH加熱プロセスの設計や性能評価が効率的に行えるため、開発コストや時間を削減し、加熱の効率や温度分布の最適化、設計の改善を図っており、塗装工程を含むあらゆる製品加熱プロセスの最適化に寄与しております。