はじめに

HDD(ハードディスクドライブ)における「スクラッチ」とは、データ記録面であるプラッタに生じる物理的な傷を指します。これは落下や衝撃、異物混入などにより発生し、極めて深刻な物理障害とされています。一般的なソフトウェア復旧では対応が不可能であり、従来は「データが失われた」とされるケースでもあります。

HDD

しかし、Mipoxが提供する超精密研磨フィルムとその加工技術は、スクラッチによって損傷したディスクからのデータ復旧において新たな可能性を切り拓いています。

スクラッチの本質と復旧の原理

HDDのスクラッチは、データそのものが記録された領域に傷が生じることから、スクラッチ線傷の部分にあるデータは物理的に消失していると考えられます。したがって「傷そのもの」を修復することは困難です。

Zygo


しかし、スクラッチの「盛り上がり(凸部)」を研磨除去することにより、HDDヘッドが傷部分で接触(クラッシュ)したり、そもそもプラッタにアクセス不能になるのを防ぎ、傷部分以外の周辺データへのアクセスを可能にすることができます。
このアプローチが超精密研磨フィルムが担う役割です。

Mipoxの精密研磨フィルムの優位性

Mipoxの研磨フィルムは、H D業界、光ファイバーや半導体業界でも使用されているクリーン度を備え、ナノオーダーの平滑性と研磨傷を最小限に留める均質な加工性能を兼ね備えています。Mipoxの研磨フィルムはH D業界では最終研磨工程で幅広く採用されています。このような使用実績から、スクラッチによって突出した突起部分を除去しつつ、元のプラッタ形状を破壊することなく、データ復旧の成功率を最大限に高めます。

特徴:

  • Ra(算術平均粗さ)0.1μm以下の研磨が可能
  • クリーンルームでの加工による異物混入リスクの最小化
  • データ取得可能領域の最大化と、ディスク全体の延命
精密研磨フィルム

研磨フィルム製造現場の様子と研磨工程

Mipoxのフィルムは、用途に応じてクリーンルームでスリット加工されており、写真のように巻き取り管理されながら厳格なプロセスで製造されます。このような高精度の研磨材を用いることで、HDDの記録面の凸部だけを的確に除去することが可能となり、重要データの救出を支援します。

研磨フィルム製造現場

スクラッチによって読み取り不能になったHDDに対し、HDR-1研磨機と専用フィルムを用いた処置を行うことでナノメートル単位の表面制御が可能となり、HDDヘッドの「ジャンプ」や「クラッシュ」を回避することできます。

HDDヘッド

精密研磨技術が支える“最後の砦”

スクラッチによるHDD障害は、論理的な障害によるデータ喪失以上に復旧の難易度が高く、多くの方々が対応を断念する領域です。しかし、Mipoxのように精密研磨技術を有するメーカーとの連携により、「データを読み取れる可能性・状態」を見出すことが可能です。傷によって遮断されていた周辺領域のデータを救うために、研磨技術が役立つ可能性があります。

精密研磨技術

今後もMipoxは、「塗る・切る・磨く」技術を駆使し、社会のデジタルインフラを支える存在として、見えない領域で貢献を続けてまいります。