テクノロジーの急速な発展に伴い、コンピューティングとストレージは常に超低遅延で提供される必要があります。その役割を担うデータセンターでのダウンタイムはオペレータにとって非常に大きな損失となるため、日々の運用を可能な限りスムーズにするためにファイバー管理ソリューションをセットアップする必要があります。
データセンターで使用される光ファイバーの研磨は需要な役割を担っており、その光ファイバー用研磨材を紹介します。

データセンター

目次

  1. データセンター需要増の背景
  2. 光ファイバーのコネクタとは
    1. 光ファイバーコネクタの種類
    2. データセンターで使用される多芯コネクタの重要性
  3. 多芯コネクタ向け研磨フィルムの紹介
    1. 植毛研磨フィルムの特徴
    2. 植毛研磨フィルムを使用した多芯コネクタ研磨工程
  4. まとめ

データセンター需要増の背景

ビックデータ

データセンターの需要が増加している背景として、デジタル化の進展、クラウドサービスの普及、ビッグデータとAIの活用、リモートワークの増加、サイバー攻撃に対する安全性の確保、ストリーミングサービスの拡大、Eコマースの拡大が主な要因となっています。
特に昨今身近な存在になってきた生成AIを通じて、文章、画像、音声、音楽、動画などの生成も増加の一途を辿っており、IDC(International Data Corporation)の予測によると、2025年には全世界で生成されるデータ量は175ゼタバイト(ZB)に達すると予測されています。これは、2020年の約59ゼタバイトから大幅に増加する見込みとなり、データセンターが担う役割はより一層重要になってきています。

光ファイバーのコネクタとは

光ファイバーコネクタの種類

光ファイバーコネクタは主に2つ用途で使用されています。 用途としては、テレコム(テレコミュニケーション)とデータコム(データコミュニケーション)向けです。
テレコムは、私達に身近な一般消費者向けネット通信用途になり、データコムは主にデータセンターに使用されています。
コネクタの種類も主に2種類あって、テレコム向けには「単芯」のコネクタが採用され、データコム向けには「多芯」が採用されます。
外観上の違いとしては、一つのコネクタにファイバー線(芯)が1本もしくは多数あるかの違いとなります。

データセンターで使用される多芯コネクタの重要性

データセンターで使用されるコネクタは、以下の写真の様な多芯タイプが採用されます。

光ファイバー・多芯

多芯コネクタは複数の光ファイバーを接続するためであり、光ファイバー通信システムにおいて信号の伝送を確保するために使用されます。多芯は一般的に光ファイバーの数が12芯、24芯等があります。
多芯は単芯に比べて多くの信号を同時に伝送できるため、速度が特に要求されるデータセンターにおいて非常に高いデータ転送速度を実現します。
特に膨大な通信容量を必要とするデータセンターにおいて必要不可欠となります。

多芯コネクタ向け研磨フィルムの紹介

多芯向けの研磨フィルムに関しては、SC(炭化ケイ素)フィルム、植毛タイプのAA(酸化アルミニウム)、CE(酸化セリウム)などの研磨材を使用した研磨フィルムを、研磨機に装着するサイズに合わせて採用されます。

マイポックス 多芯コネクタ向け研磨フィルム
(画像=マイポックス 多芯コネクタ向け研磨フィルム)

植毛研磨フィルムの特徴

植毛タイプの研磨フィルムは、酸化アルミニウムや炭化ケイ素等の研磨材が樹脂パイル表面に施されており、研磨材が付着されたパイルがそれぞれ独立しています。植毛研磨フィルムを使用することにより、スクラッチレスな表面仕上げを実現できます。またR形状のワークに対して植毛によるブラッシング効果で追従研磨を行うことができるのも特徴の一つです。

マイポックス 多芯コネクタ向け植毛研磨フィルム
(画像=マイポックス 多芯コネクタ向け植毛研磨フィルム)

データのクラウド化が進んでいる中、世界各国のデータセンターの多芯コネクタにはMTフェルールが使用されています。このMTフェルールですが、ただ研磨すれば良いというわけではありません。ファイバー2μm~3μm程度突き出させる必要があり、その突き出した状態で精度良くファイバー先端を鏡面仕上げる必要があります。

突き出し3Dプロファイル
(画像=突き出し3Dプロファイル)

そこで活躍するのが、植毛研磨フィルムです。植毛研磨フィルムの弾性および追従性で、突き出し研磨を行うことができます。また、通常の研磨フィルムで生じやすいファイバーのチッピング(欠け)が生じることが少ないのも特徴です。 植毛研磨フィルムと研磨機の条件によってコアディップ(コアのへこみ)をコントロールすることも可能です。

従来スラリーが必要だった工程も、この植毛フィルムを使用すれば水使用のみで研磨仕上げを行うことができ、環境に配慮された研磨フィルムです。

植毛研磨フィルムを使用した多芯コネクタ研磨工程

多芯コネクタの研磨工程は「樹脂取り→平面出し研磨→突き出し研磨→仕上げ研磨」の4つの工程が基本工程となります。

STEP 工程 製品名 砥粒種 粒径 基材 主な役割・特長
STEP1 樹脂取り SC16-CF 炭化ケイ素 16 µm PETフィルム エポキシ樹脂の完全除去。砥粒と樹脂配合により高負荷・複数回使用に対応。
STEP2 平面出し研磨 SC3-EF 炭化ケイ素 3 µm PETフィルム 端面の平面出し。ファイバー凹み量を小さくする配合設計。
STEP3 突き出し研磨 AA1-MFPS 酸化アルミニウム 植毛基材 光ファイバーへの研磨を抑制し、端面からの突き出しを実現。
STEP4 仕上げ研磨 CE1-MFPS 酸化セリウム 植毛基材 スクラッチレス仕上げ。突き出しを維持しつつ、端面傷を防止。

STEP1 樹脂取り:SC16-CF
SC16-CFは粒径16umの炭化ケイ素をPETフィルム上に樹脂を介してコーティングした研磨フィルムです。樹脂取り用の研磨フィルムには光コネクタ先端に付着しているエポキシ樹脂を完全に除去することが要求されます。エポキシ樹脂による研磨フィルムへの負荷が大きいので、炭化ケイ素と樹脂の配合によりその負荷を吸収し、複数回使用可能となるように設計しています。

STEP2 平面出し研磨:SC3-EF
SC3-EFは粒径3umの炭化ケイ素をPETフィルム上に樹脂を介してコーティングした研磨フィルムです。また、後工程でファイバーの突き出し高さを高くする必要があるため、炭化ケイ素と樹脂の配合設計によりファイバーの凹み量が小さくなるようにしています。

STEP3 突き出し研磨:AA1-MFPS(植毛フィルム)
AA1-MFPSは酸化アルミニウムをPETフィルムとは異なり植毛基材にコーティングした研磨フィルムです。多芯コネクタはプラスチックの筐体の中に複数本の光ファイバーが組み入れられていますが、コネクタ同士を接続する際に光ファイバー同士が接触するように端面から光ファイバーを突き出す必要があります。植毛基材を使用することによって、光ファイバーへの研磨を抑制し突き出しを実現します。

STEP4 仕上げ研磨:CE1-MFPS(植毛フィルム)
CE1-MFPSは酸化セリウムを植毛基材にコーティングした研磨フィルムです。酸化セリウムは研磨材として柔らかく、スクラッチレスの仕上げを行うことが出来ます。前工程と同じように植毛基材を使用することで、光ファイバーの突き出しを損なわず研磨を行うことが出来、研磨残渣による端面への傷の発生も防止します。

マイポックス研磨フィルムの仕上がり面
(画像=マイポックス研磨フィルムの仕上がり面)

まとめ

昨今データセンターの急激な需要増により、多芯コネクタ研磨においてより一層重要なファクターとなっております。
以前は研磨スラリーとパッドの組み合わせが主流でしたが、最近では環境汚染の懸念や洗浄性の改善により、植毛研磨フィルムを使用する方法に移行しています。 マイポックスは、お客様の要望に合わせた研磨プロセスを提案できますので、お気軽にお問い合わせください。

マイポックス製品