ヘルメットの一番重要な役割は『人の命を守ること』です。ヘルメットはこの役割に従って、デザインも重要視されて作りこまれています。ヘルメットを製造している方にとって、デザインで重要な塗装には研磨がつきものであることはご存じの通り、ヘルメットの形状に追従しながら研磨することは容易ではないかと思います。
ここでは、人の命を守るヘルメットの塗装工程を紹介させていただき、そのうえでデザインを決める塗装に必須である、研磨工程について紹介をします。

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目次

  1. 研磨の必要性
  2. バイク用ヘルメットの構造
    1. ヘルメット(シェル)の製造工程
  3. 最後に

研磨の必要性

 ヘルメットの種類にもよりますが、ヘルメットのシェル部分のデザインの違いによって多くの工程があります。そして、デザインの品質に直結される研磨工程について、後に記述していますが#120~#2500の粒度が使用されていることから、かなり品質にこだわって作りこまれていることがわかります。文頭にも記載しましたが、ヘルメットの最も重要な役割は『命を守ること』ですが、そこに追従してデザインも重要視されています。  ヘルメットを購入し使用されている中で、傷消しで再塗装をされることがあるかもしれません。(※ヘルメットの再塗装は、シェルの変形を防ぐ為、専門業者にて行っていただくことを前提とします。)
再塗装でデザインを重要視するには、もちろん研磨が必須です。この場合、クリヤー塗装部分に傷が入っている場合が多く、表面の傷消しと再塗装前の研磨工程を、WRAFやWTCC #1000前後から研磨を行っていきます。クリアー塗装面の傷を消しながら平滑に研磨していき、綺麗に再塗装することができます。

バイク用ヘルメットの構造

 バイク用ヘルメットは、内側から『内装』→『衝撃吸収ライナー』→『シェル』という構造になっています。バイク用ヘルメットの内装について、肌と直接密接する箇所にはウレタンフォーム等が使用されています。頭を包む内装の周りを、衝撃吸収の役割を担う発泡スチロール製のライナーで覆うように囲われています。そのライナーの外側にあり、外観として見える部分をシェルと言います。シェルはFRPという金属と同等の強度にも関わらず、軽量であることが特徴です。
今回は、ヘルメットの塗装に関連する部分である、シェルの塗装について説明します。

ヘルメット(シェル)の製造工程

  1. 下地工程
    シェルそのものを研磨する工程である、生地研ぎの#120から始まり、パテ塗り、上塗りの工程を経て
    #320~#500を使用して塗装後の研磨を行います。
    この後検査工程があり、修正が必要であれば修正パテ塗りを行い、#600での修正研磨が行われます。
    ・#120研磨について
    FRP素材を型から抜いたときに出るバリ、傷などの修正をします。研磨材はDRADやWTCC #120を使用します。
    ・#320→#500研磨について
    WRAFやWTCC #320で最終面出しをする作業で、一番時間のかかる作業です。その後、WTCC#500で#320の目消しを行います。

研磨方法について、基本的に研磨材はダブルアクションサンダーを使用しますが、ヘルメットは完全な球体ではなく、サイズが数種類ある為、ダブルアクションサンダーと手研ぎでの研磨材使用方法があります。また、仕上げ精度の安全性面で、フィルムベースの基材を使用した製品を使うケースが増えています。今後、自動化ロボット用のサンディングルーム確保、集塵の向上が進めば、研磨の自動化がさらに進んでいくことになります。

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  1. 上塗り工程
    下塗り工程の次に、仕上げに向けて上塗り工程があります。
    上塗り塗装を行った後、WRAFやWTCC#1000を使用します。複雑な形状でフィルムや紙での研磨が難しい場合は、ユニベックスNSを使用する場合もあります。ここでは、クリヤー塗装前の研磨工程となっており、クリヤー塗装でのブツ防止の役割となっています。ブツを抑制することで、この後の検査工程から修正工程を短縮することが出来、品質向上にも繋がります。そのため、ここでの仕上げ面については最終的な品質に直結することから、神経を使って研磨を行います。

  2. 転写工程
    プレーン物ヘルメットはクリヤー塗装、キャンディー物ヘルメットはトップコートまでとなりますが、デザイン物ヘルメットはクリヤー塗装前に転写工程があります。 ベース研磨をWRAFやWTCC #1000で研磨した後、デザインの転写を行います。デザインの転写完了後、オーバーコート剥がしを行い、クリアー塗装後に再度WRAFやWTCC #1000で研磨を行います。その後最終乾燥を行い検査されますが、このようにヘルメットの種類やデザインにより手間が加わってきます。

  3. 修正工程
    クリヤー塗装やトップコートの乾燥後、検査でブツ、傷が見つかった場合は再度修正が入ります。WTCC #2500にてブツ、傷消し修正後、コンパウンドを使用してポリッシャーにて最終仕上げをします。
    その後、ロゴステッカー貼り、最終検査を行い梱包されます。

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最後に

バイク用ヘルメットは、『人の命を守ること』を一番重要視していますが、デザインも重要視しています。 デザインにはヘルメットの作り手の労力と想いが込められています。このデザインを確立する為に、適切な研磨作業が必須となります。 一部複雑な形状になっており、サイズも複数あり、研磨の自動化が難しい製品ではありますが、近年自動化技術の進歩により年々自動化が進んでいます。それに伴い、ヘルメットの形状に馴染みながら、自動化に見合う耐久性と追従性に長けた研磨材が求められます。Mipoxのフィルム研磨材と仕上げ面精度の知見を活かし、『人の命を守る、洗練されたデザイン』のヘルメット作りに貢献する為、更なる製品開発を行って参ります。