はじめに

― 高精度・高歩留まりの抜き加工を実現する技術と工程設計 ―
ダイカット(抜き加工)は、粘着材・半導体材料・光学材料・電子部品用材料など、多様な産業で使われる重要な加工技術である。

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しかし、歩留まりが安定しにくい工程でもあり、70%〜80%台で止まってしまうケースも少なくない。
歩留まり90%は多くの現場で達成できるが、“95%以上” となると、設備・材料・環境・治具設計・工程連携など、あらゆる要素を高いレベルで管理する必要がある。
本記事では、“ダイカット歩留まり95%以上を長期間維持するための条件”を 10の技術要素 に体系化して解説する。

目次

  1. 1.材料ロットの品質を安定化させる:歩留まり改善の出発点
  2. 2.刃型(金型)の設計最適化:歩留まりの核心要素
  3. 3.基材の搬送精度(位置決め)が不安定:ズレは歩留まりを即悪化させる
  4. 4.抜き深さの制御(圧力・ストローク)の精密化
  5. 5.送りピッチ(送り量)の精度・安定性
  6. 6.離型フィルム・剥離紙の影響:剥離力の差が歩留まりを左右する
  7. 7.加工環境(温度・湿度)の安定化:材料特性の維持
  8. 8.型抜き後の排出方式を最適化する(ピン押し・エアブロー)
  9. 9.ロール to ロールの連続加工における“テンションプロファイル”の管理
  10. 10.上流工程との連携(塗布 → スリット → ダイカット)が歩留まり95%を決める
  11. まとめ:歩留まり95%は「再現性」「安定性」「工程設計」で実現する

1.材料ロットの品質を安定化させる:歩留まり改善の出発点

ダイカット工程は材料のわずかな変化に敏感であり、
「材料ロットの品質」を安定させることが歩留まり95%の前提条件となる。

よくある材料起因の不良例

  • 厚みムラ → 抜き深さが均一にならない
  • 硬度ムラ → 刃の貫通抵抗のバラつき
  • 表面の異物付着 →刃型へのダメージによる寸法異常
  • 粘着剤の糊残り → びびり・引き裂け

改善ポイント

  • 入荷ロールごとに“厚み×硬度×外観”を測定
  • 巻硬さのチェック(端部・中央)によるロール状態管理
  • 製品特性に応じた抜き条件の微調整
  • 細幅抜きは材料ロット差が最も歩留まりに影響

材料品質が悪いと、どれだけ抜き条件を調整しても歩留まり95%には到達しない。

クリーンルームClass5,000対応ダイカット 異物リスクを抑制し、量産品質を安定化
クリーンルームClass5,000対応のダイカット機
異物リスクを抑制し、量産品質を安定化

2.刃型(金型)の設計最適化:歩留まりの核心要素

刃型はダイカットの“心臓”であり、精度・寿命・形状が歩留まりを決める。

重要な設計ポイント

  1. 刃高の均一性(±1~2μm)
  2. 抜き方向への最適刃角
  3. 抜き形状に合わせた刃型の選定(ピナクル、トムソンなど)
  4. 材料層構成に合わせた刃先処理(テーパー、粘着材向けコーティング、DLCコートなど)

よくある不良

  • コーナー部での破れ
  • 微細形状での未貫通
  • 刃型の摩耗による寸法異常

改善策

  • 刃型メーカーと共同で“材料・形状別の最適刃角”を設計
  • 特に粘着材は糊巻きに強い刃先コーティングが有効
  • 深さ精度の“断面粗さ”も歩留まりに影響
  • 抜き形状に応じて刃型の仕様を決める(彫刻刃)

歩留まり95%ラインを超えるには、刃型設計から歩留まり改善を考えることが最も重要である

金型交換タイミング・状態チェックはおこたらない
金型交換タイミングを徹底管理。刃先状態の定期チェックで歩留まりを守る

3.基材の搬送精度(位置決め)が不安定:ズレは歩留まりを即悪化させる

抜き加工は位置決め精度が重要であり、僅かなズレが不良につながる。

ズレの原因

  • ロール蛇行
  • ガイド精度不足
  • ロール送り速度のバラつき
  • 搬送部(フィードロール)の摩耗

対策

  • エッジガイドの使用
  • EPCによるエッジコントロール
  • ロール送りをサーボ化し、速度の変動を抑える
  • ロール間の直線性・水平度点検
搬送時の位置決め
量産前の入念なセッティング 再現性を確保するための最終調整

4.抜き深さの制御(圧力・ストローク)の精密化

抜き深さの制御は、バリ・未貫通・寸法バラツキに直結する。

深さが浅い場合

  • 未貫通
  • 端部残り
  • 粘着層のはみだし

深さが深い場合

  • 基材を圧縮 → 白化
  • 材料層の変形
  • 刃型摩耗の加速

対策

  • プレス速度を制御
  • 刃の高さに応じた深度調整
ダイカット機を調整するオペレーター
ダイカット機の微調整作業 金型状態を確認しながら最適条件を設定

5.送りピッチ(送り量)の精度・安定性

送りピッチのわずかな誤差が累積し、抜き位置のズレが増すことで歩留まりを大きく低下させる

よくある送りピッチ不良

  • ピッチが徐々にズレる(累積誤差)
  • ピッチのバラつき
  • 止め位置の不安定

改善策

  • 高精度エンコーダを備えたサーボ送りの導入
  • ピッチの監視
  • 摩耗している搬送ローラーの交換

ピッチズレは、目視では気づかなくても歩留まりに大きく影響する隠れ不良である。

ダイカット機のパネルを設定するオペレーター
テンション制御が95%を支える 張力変動を抑え、連続加工を安定化

6.離型フィルム・剥離紙の影響:剥離力の差が歩留まりを左右する

特に粘着材や多層フィルムでは、剥離紙・離型フィルムの状態が歩留まりに影響を与える。

発生しやすい不良

  • 剥離がスムーズでなく“糊残り”
  • 剥離時に形状が歪む
  • ラミネート層の剥がれ
  • 抜き時の粘着材糸引き

対策

  • 離型紙の剥離力(gf/inch)の安定化
  • ラミネート条件の最適化(温度・圧力)
  • 剥離速度を粘着力に応じて調整
  • 離型紙メーカーとの仕様見直し

剥離紙の品質が不安定だと歩留まりは一気に落ちるため、材料選定は特に重要。

巻き取った離形フィルムを交換する

7.加工環境(温度・湿度)の安定化:材料特性の維持

温度と湿度は材料特性に大きく影響し、とくに粘着系・発泡系・光学フィルムでは歩留まりに直結する。

温湿度による不良例

  • フィルム伸縮
  • 粘着材の硬さが変化
  • 発泡材の変形
  • 加工中の静電気蓄積 → 粉塵付着

対策

  • 室温 20〜25℃、湿度40〜60%の範囲で一定化
  • 静電気除去イオナイザーを導入
  • クリーンルーム加工(必要に応じて)

“環境の安定”は歩留まり95%には絶対条件である。

8.型抜き後の排出方式を最適化する(ピン押し・エアブロー)

抜き加工後の製品・カスの排出処理が適切でないと、

  • かす残り
  • 製品の変形
  • 微細形状の破れ
     などが発生し歩留まりが下がる。

対策

  • ピン押しの深さ・間隔を最適化
  • かす巻取りのテンション調整
  • 微細形状のかすは「自動排出機構」が有効

特に微細形状の歩留まり改善には、排出設計が極めて重要となる。

カス残りを防ぐ金型設計 排出構造が量産品質を左右する
カス残りを防ぐ金型設計 排出構造が量産品質を左右する

9.ロール to ロールの連続加工における“テンションプロファイル”の管理

ロールtoロール連続抜き加工では、テンション(張力)が変動すると歩留まりが大きく落ちる。

よくある問題

  • ロール径変化による張力変動
  • 端部張力の不均一によるシワ・ズレ
  • テンションの段差変動

対策

  • ロール径に応じた自動テンション補正
  • 原反ロールの巻硬さチェック
  • 張力変動を「見える化」するセンサー導入

テンション管理が安定すると、歩留まりは“目に見えて”改善する。

ダイカット後の搬送コンベヤー画像
後工程まで設計する 抜き→搬送→排出を一体管理

10.上流工程との連携(塗布 → スリット → ダイカット)が歩留まり95%を決める

ダイカット歩留まりは、ダイカット工程だけで決定されるものではなく、上流工程の品質が歩留まりに大きく影響する

上流の影響例

  • 塗布ムラ → 抜き深さのバラつき
  • スリット端面の毛羽・白化 → 抜き不良
  • ロール巻取り硬さムラ → 位置ズレ
  • ライン乾燥不良 → 粘着剤の状態変化

理想形

  • 塗布 → スリット → ダイカットを一社で一元管理
  • 工程データを連結し、不良原因を迅速に特定
  • 製品ごとの工程条件を共有
  • 量産立ち上げ時のフィードバックが高速

この“工程一貫管理”ができる環境では、歩留まり95%は安定して達成できる。

答えは“工程連携”にある 上流から下流までをつなぐ設計力
答えは“工程連携”にある 上流から下流までをつなぐ設計力

まとめ:歩留まり95%は「再現性」「安定性」「工程設計」で実現する

歩留まりを高めるために最も重要なのは、
技術要因だけでなく“工程設計全体”で最適化する視点である。


歩留まり95%のための最重要ポイント

  1. 材料ロット特性の安定化
  2. 刃型設計の最適化(刃角・刃先精度・R)
  3. 搬送精度の向上(位置決め)
  4. 抜き深さの微細制御
  5. 送りピッチ精度の安定化
  6. 環境管理(温湿度)
  7. 排出方式の最適化
  8. テンション制御
  9. ロール状態の管理(巻硬さ・偏芯)
  10. 工程間データの一元化(塗布→スリット→抜き)
ダイカット機とオペレーター

ダイカット歩留まりは、設備投資や技術だけでなく、工程全体の再現性をどう作るか で決まる。
再現性のある条件設定と、上流から下流までの徹底した工程設計こそが、歩留まり95%を“継続的に”達成するための最も確実なアプローチである。





記事No,359