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燃料被覆管とは原子力発電所の炉心部分に使用されるジルコニウム合金の管で、ペレット状に加工された濃縮ウラン燃料を充填する保護管のことです。これを束にして組み上げ、原子力発電用に使用します。
これは1949年に米海軍の原子力潜水艦にジルコニウム合金が燃料被覆管として採用され、開発が始まったとされています。
燃料被覆管の研磨工程では、常に品質向上とコストダウンの改善を進めており、生産工程の改善を行っています。しかし、高い安全性とコストを両立させるためには、最適な研磨材製品の選定とそれに合う研磨工程の設計が必要です。
具体的にどのような課題があり、どのような解決策があるのか、コスト削減の方法と併せてポイントを解説します。
※ジルコニウム合金:ジルカロイと言われる原子炉規格の鉄・銅・アルミ・マグネシウムの合金のことで、比較的強度が強く、耐食・耐熱性に優れている。 ※燃料被覆管のサイズ:外径9~12mm、厚み0.6~0.9mm、長さ4m。

目次

  1. 研磨工程での課題解決策やコスト削減方法
    1. 燃料被覆管の光沢基準に適合させる
    2. 研磨クズや付着物を改善する
    3. 融点破壊を防ぐ
    4. コストを削減する
  2. 燃料被覆管の製造工程
  3. 燃料被覆管の研磨工程
  4. Mipox研磨材のご紹介
    1. 不織布研磨材NHホイール
  5. まとめ

研磨工程での課題解決策やコスト削減方法

研磨工程における課題解決策やコスト削減方法には、次のようなものが挙げられます。

燃料被覆管の光沢基準に適合させる

燃料被覆管の研磨工程において最大のハードルとなるのが「光沢基準」です。研磨仕上げ面のヘアーライン状態の基準のことで、原子炉規格によって定められています。通称チェック室といわれる照明が数十本配置された明るい部屋で、光を反射させた光沢を作業者が目視で確認します。照明の明かりで反射した表面が、白光りでもなく、黒光りでもない光沢だと合格となります。このために重要となるのが最終研磨工程です。研磨力が高すぎると黒く光ってしまい、研磨力が弱すぎると白く光って不合格となります。

当社では、研磨仕上げ面を基準に適合させるために、工程の第2ヘッドで使用されていたUB砥石を当社不織布研磨材「NHホイールVF13」に変更を提案し採用されました。さらに、NHホイールを専用の特別品として設計し、不織布研磨材の基材の打ち込み枚数を増やして硬度の改良を行いました。そして、ホイールの振れなどの改善を行いワークとの接地面を安定させることで、より一層研磨仕上げ面を安定させることに成功しました。

研磨クズや付着物を改善する

研磨することで発生する研磨クズや付着物も問題となります。PVA砥石やイトバフでは研磨クズが多く発生しておりましたが、当社の不織布研磨材ではそれらが大幅に軽減できました。また、クリーナーと呼ばれる切削油などを使用して研磨工程で発生する付着物をろ過したり、最後の工程でエアーブラストやワイパーを使用したりすることにより、研磨クズを完全に除去することができるようになりました。

融点破壊を防ぐ

燃料被覆管にゴミが付着すると融点破壊を起こすことも課題です。融点破壊とは、付着した物質(ゴミ)が原因で高温になると燃料被覆管にひび割れなどの損傷が起きる現象です。特にアルミナ系の砥粒が付着すると2000℃で溶け始めてその部分からひび割れが起こる可能性があります。そこで当社では、不織布研磨材のアルミナ系砥粒の使用を止めて、全てSiC系砥粒に変更しました。

コストを削減する

コストを削減するには、高価な研磨材の交換を減らすという選択肢があります。当社では、不織布研磨材ホイールの外径を355mmから405mmの大径とすることで耐久性を向上させ、交換回数を減らすことによるコスト削減に成功しました。

燃料被覆管の製造工程

素管から燃料被覆管になるまでの工程を紹介します。

①素管
②冷間圧延
③洗浄
④中間焼鈍
⑤仕上げ冷間圧延
⑥洗浄
⑦最終焼鈍
⑧矯正研磨
⑨仕上げ研磨
⑩仕上げ切断
⑪製品検査
⑫破壊試験
⑬燃料被覆管完成

素管は冷間圧延と真空焼鈍を繰り返して、最終の燃料被覆管寸法に仕上げられます。一般に金属管の冷間圧延方法としては様々な方法がありますが、燃料被覆管の場合はピルガー式圧延法が用いられています。ピルガー式とは上下一対のロールダイスで挟み込み、管に圧力をかけつつ回転往復運動する方法です。他の方法に比べて表面摩擦が小さいので、高い表面精度を得られます。また繰り返しの焼鈍(徐々に適度な温度にすること)により、不均一な腐食を防ぐとともに、金属間の不純物を分散させるなど耐食性の向上が得られます。

燃料被覆管の研磨工程

湿式センターレス研磨機による外周研磨加工です。
※湿式センターレス研磨とは、「固定されたブレード」と「回転する砥石」と「回転する調整車」の3点支持で研磨する対象物を支持し、その外周を水や水溶性研磨油をかけて研磨する加工方法です。

・第1ヘッド
UB砥石 C600 405 x 150 x 228.6
・第2ヘッド
UB砥石 C1500 405 x 150 x 228.6
NHホイール VF13C 405 x 150 x 228.6
・第3ヘッド
NHホイール SF14C 405 x 150 x 228.6

研磨工程は「センターレス研磨機」3ヘッドで、1・2ヘッドは砥石C砥粒の#600と#1500を使用します。3ヘッド目に不織布研磨材ホイールのNHホイールを使用し、ヘアーラインの仕上げ加工を行います。
料被覆管の製造が始まった当初は、不織布研磨材で最終仕上げをするという考えはなく、PVA砥石C#800が使用されていました。しかし研磨後にゴミが付着してしまうことや、コストが高いことから不織布研磨材を使用することになりました。

Mipox研磨材のご紹介

不織布研磨材NHホイール

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特徴:不織布の羽根がコアのまわりに放射状に配置された構造になっています。金属研磨において研磨性、仕上げ、操作性に優れた万能型の不織布ホイールです。お客様の用途に合わせた硬さを選ぶことができます。
粒度:M (#150相当)、F(#220相当)、VF(#400相当) SM(#800相当) SF(#1500相当)

まとめ

当社は今ある研磨材だけでなく、お客様のご要望に合わせた研磨材製品の改良・開発も行っています。お客様のご要望に真摯にお応えして、カスタマーサクセスにつながるご提案をさせていただきます。