日常生活では直接目にする機会は少ないかもしれませんが、自動車や携帯電話、通信機器、家電等あらゆる分野で使用されているプリント基板。本記事では、プリント基板において研磨のプロセスが重要であることと、そこに使用される研磨材をご紹介します。

プリント基板
(画像=プリント基板)

目次

  1. プリント基板を研磨する必要性
  2. プリント基板の穴埋めインク除去研磨工程と製品紹介
    1. TLF-S
    2. FSP
    3. LUB/FUB
  3. プリント基板の穴埋めインク除去研磨の課題とまとめ

プリント基板を研磨する必要性

ここでは、プリント基板の製造において最も物理研磨を必要とする、「穴埋めインクの除去研磨」について説明します。

穴埋めインクとは、プリント基板にスルーホールという穴を開け、そのスルーホール内にインクを充填することをいいます。この穴埋めインクを平滑に除去研磨することで基板の表面が平滑になり、後々表面に部品を実装することができます。

インクの種類はエポキシ系樹脂や導電性ペーストが用いられます。インクの硬度が高いため、物理研磨による研磨方法が主流となっています。また、プリント基板に深い傷をつけてしまうと不良の原因になってしまうことから、インクを研磨するために必要な研磨力があり、かつ深い傷をつけにくい、ホイールによる研磨方法が必要となります。

プリント基板の穴埋めインク除去研磨工程と製品紹介

プリント基板の穴埋めインク除去研磨工程では、専用の研磨機を用いたセラミックホイールや不織布ホイールを使用します。

専用の研磨機には、種類にもよりますが上下に1軸ずつもしくは2軸ずつホイールを装着できるようになっています。両面基板や多層基板は上下研磨する必要があり、専用研磨機を使用すれば連続して上下研磨することができます。プリント基板の研磨工程ごとに研磨機の負荷電流値やラインスピードを調整しながら、湿式でプリント基板を研磨することによって、実装前のプリント基板が製造されています。

Mipoxではテスト用4軸研磨機を所有しており、自社でプリント基板の研磨テストを行うことができます。

4軸研磨機画像
(画像=4軸研磨機画像)
ホイール湿式回転研磨画像
(画像=ホイール湿式回転研磨画像)

ここからは、Mipoxが得意とする研磨技術から生まれた研磨材について、その基本的な機能とメリットを紹介します。

TLF-S

穴埋めインク除去研磨には、一般的にセラミックホイールを使用します。MipoxのセラミックホイールはTLF-Sといいます。穴埋めインクをTLF-Sで初期研磨に使用することによって、研磨力の強さで生産効率を上げることができます。また、TLF-Sは砥石の内側にゴムとスポンジがある構造になっています。研磨対象のプリント基板が実は平滑ではなくうねりがあるため、TLF-Sはプリント基板に馴染むよう設計されているのです。この構造によってプリント基板全体を研磨し、インクを除去することが可能となります。

TLF-Sと構造
(画像=製品例 TLF-S #320 150x610x76.2と構造)

FSP

上で紹介したTLF-Sほどの研磨力が必要なく、平滑にプリント基板を研磨したい場合はFSPという製品を使用することができます。FSPの構造は、TLF-Sのように砥石の内側にゴムやスポンジはありませんが、内側にベルクロとトリコットのマジックテープを採用することで若干のクッション性はありますが、ホイール自体に硬さを持たせることでプリント基板を平滑に研磨することができます。使用前に入念なドレッシングをすることでプリント基板全体を研磨することができます。この製品はMipoxオリジナルの製品であり、プリント基板の種類によって提案しています。

FSP製品
(画像=左 FSP-WM 4L5 #320 150x610x76.2 右 FSP-WM 5LS #320 150x610x76.2)

LUB/FUB

セラミックホイールでインク除去研磨を行った後、続けて不織布ホイールで仕上げます。Mipoxの不織布ホイールにはラミネートタイプのLUB、フラップホイールのFUBがあります。セラミックホイールの研磨後にLUBやFUBを使用することで、インクの完全平滑化と表面面粗度を整えることができます。不織布ホイールのメリットは仕上げの良さと高耐久力にあります。プリント基板の種類によってはセラミックホイールを使用せずに、不織布ホイールのみで穴埋めインク除去研磨が完結する場合もあります。

LUB
(画像=LUB)

プリント基板の穴埋めインク除去研磨の課題とまとめ

プリント基板は将来、高多層化や放熱基板化が予想されます。放熱対策として、フィラー入りインクをスルーホールに充填した場合、従来のインクに比べて高硬度になります。高硬度のインクを除去するには研磨力の増加が必須であり、同時に目詰まりを発生しにくく連続研磨できるホイールがコストアップ抑制につながります。この要望をかなえることができなければ、研磨機での負荷電流値を上げたりラインスピードを落とす工夫が必要となりますが、研磨機への負担や生産力低下につながってしまいます。それだけプリント基板の穴埋めインク除去工程の研磨材は重要な役割を担っていると言えるでしょう。
Mipoxではこのようなトレンドにしっかり着目し、今後必要とされる製品の開発を目指してまいります。