日常生活とは無縁のように思われる研磨の技術ですが、案外身近なところで使われていることをご存知でしょうか。その一つがドアを開閉させるために欠かせない蝶番(ちょうつがい)です。安全性やデザイン性の向上のため、職人の手によって一つ一つ思いを込めて作られているものもあり、実はここにも研磨の技術が利用されています。今回は、蝶番の製造工程に組み込まれている研磨の必要性について解説します。

蝶番
(画像=蝶番)

目次

  1. 蝶番を研磨する理由
    1. 蝶番の役割
    2. 蝶番のヘアーライン研磨加工
  2. 蝶番の研磨仕上げ工程
    1. 研磨布ベルト
    2. 不織布ホイール
  3. まとめ

蝶番を研磨する理由

蝶番の役割

蝶番はドアを安全かつスムーズに開閉する役割を担っており、家のドアや、キッチンの棚、インテリアの扉など、さまざまな場面で使用されています。安全面が最も大事な役割ですが、同時に場面に合ったデザインにもこだわりがあります。大きさ、形状、素材、仕上げ方の違いが挙げられますが、中でも蝶番のヘアーライン研磨加工は高級感のある見栄えであり、機械加工だけでなく職人によって一つ一つ研磨されているものもあります。

蝶番のヘアーライン研磨加工

ヘアーライン研磨加工とは、同一方向に髪の毛状(ヘアーライン)の研磨傷を付ける表面加工方法です。後述する研磨布ベルトや不織布ホイールなどで物理的に研磨加工を行います。蝶番にヘアーライン研磨加工を行うことで、金属っぽさを残しつつ高級感が出てデザイン性が高まります。また、傷や歪みが目立ちにくいことも利点として挙げられます。

ヘアーライン研磨加工
(画像=ヘアーライン研磨加工)

蝶番の研磨仕上げ工程

研磨布ベルト

ヘアーライン研磨加工において、安価に仕上げることができる研磨布ベルトが一般的に多く使用されます。 ベルト研磨機にMipox製品のレジンクロスベルトDRAX-B #120を装着して研磨することで、均一なヘアーライン研磨加工を行うことができます。もし使用される方がもう少し柔らかいベルトを好まれる場合は、柔軟性に長けたSRAJ-B #120を使用することもできます。ヘアーラインをさらに細かくしたい場合は#150や#180を使用して、職人の要望に沿った研磨仕上げを実現します。研磨布ベルトの長所は安価で使用しやすいという手軽さですが、一品ものを大量生産することには耐久力に乏しく、交換頻度が増えてしまいます。その対策として、次に不織布ホイールを紹介します。

レジンクロスベルトDRAX-B、SRAJ-B
(画像=レジンクロスベルトDRAX-B、SRAJ-B)

不織布ホイール

不織布ホイールは専用の研磨機や両頭グラインダー等で使用することができます。不織布ホイールの特長は耐久力に優れており、大量生産向きとなっています。また、不織布特有の弾力性が職人に好まれています。不織布ホイールは砥粒と樹脂を付けた繊維を圧縮して作られたホイールであり、負荷がかかる研磨では熱が発生しやすくなります。その対策として、MipoxにはNLJという不織布を発泡させた製品がありますが、焼け防止のグリスを配合しており、研磨対象の蝶番が焼けにくくなっています。これによって、焼けによる黒ずみを防ぎ、綺麗なヘアーライン研磨加工を行うことができます。 また、不織布ホイールの弾力性を好み、比較的安価に済ませたい場合、不織布ディスクNDという製品があります。これを数枚重ねて研磨機に設置して使用することで、安価で疑似的にホイールの機能を持たせることができます。 これら不織布ホイールは、耐久力や柔軟性に長けていることから、自動化に向けたインラインでの研磨工程に導入検討することが適しているといえます。粗めの#80~#120でスタートし、#150~#180の仕上げを不織布ホイールで行うことができるほか、幅のカスタマイズも可能なため、蝶番のサイズに合わせた組み合わせが可能となっています。

左:不織布ディスク 右:ND不織布ホイールNLJ
(画像=左:不織布ディスク 右:ND不織布ホイールNLJ)

まとめ

蝶番は、家のドアや、キッチンの棚、インテリアの扉などの数だけ必要となってきますが、それぞれの蝶番が使用される場所のデザインに合った仕上げ加工を行っています。中でもヘアーライン研磨加工は多くの蝶番を職人が一つ一つ研磨仕上げを行っており、そこで使用される研磨材も出来栄えを左右する要因の一つです。 Mipoxではこのようなものづくりに貢献するため、職人の要望に沿った細部にこだわった製品づくりを行ってまいります。

参考文献 ロイヤルホームセンター 「蝶番の種類と使い分けのポイント 取り付ける際の注意点」 https://www3.roymall.jp/shop/e/ehinge/