故障原因の特定や信頼性の評価など、断面観察によって観察対象をより詳しく把握できる場面は少なくありません。しかし、観察対象に硬い金属が含まれていると「自分で調べるのは難しそう」「専門業者に依頼するのは敷居が高い」と、あきらめてしまうこともあるのではないでしょうか。
本記事では、サイズ調整・樹脂埋め・断面研磨・鏡面仕上げの4ステップで、観察用サンプルの作り方を写真付きでご紹介します。
目次
断面観察とは?目視で観察するメリット
断面観察を行うと、表面からは見えない内部の欠損を確認できることが意外と多くあります。故障原因の特定や品質調査などにも断面観察はよく用いられており、需要の増加に伴って、受託事業として行う企業も増えてきました。
近年では、X線CTを使って対象を切断せずに断面を観察することもできるようになりました。しかし、X線を使った断面観察も万能ではありません。物理的に断面を露出させる方法と比べると、次のような違いがあります。
本記事でご紹介する方法で作ったサンプルは、顕微鏡を使った細部の観察や、蛍光X線分析装置を使った元素分析にも使用できます。
観察用サンプルの作り方|全体の流れ
観察用サンプルは、「サイズ加工」「樹脂埋め」「断面研磨」「鏡面仕上げ」の4つのステップで作ります。それぞれの工程には役割があり、前の工程の仕上がりが、次の工程の作業のしやすさに直結します。まずは全体の流れをつかんでおきましょう。
使う道具は、市販の接着剤や耐水研磨紙、液体コンパウンドなど、ホームセンターなどで手に入るものばかりです。各ステップの詳しい手順は、次の章から写真付きで解説します。
STEP1|観察対象のサイズ加工
まずは、観察用サンプルのサイズを調整しましょう。サンプルの断面サイズは、1㎠(1cm角)程度に収めることをおすすめします。少し大きくても、今回ご紹介する方法で観察面を作ることはできますが、大きさに比例して観察面を磨き上げる工程の労力が増えます。できるだけ観察部を絞ってサンプルを小さくすると、観察面の作成が簡単になります。

なお、サンプルの厚みは1〜3cm程度までであれば問題ありませんが、目的の観察面が端から近くなるようにしておくと、磨き上げる工程が楽になります。観察面が端から離れているようであれば、あらかじめ付近を切断しておきましょう。
観察対象が大きい場合
サンプルが大きい場合は、カッターナイフや金切鋸で切り分けるなどして、できるだけ小さく加工してください。薄い金属であれば、金切鋸でも十分に切断できます。目的の観察面付近を切断する場合は、観察面から2〜3mm程度離れた箇所を切断してください。観察面を磨き上げる際の削りしろを確保しておく必要があるためです。
観察対象が小さい場合
観察対象が1㎠よりも小さい場合は、後の工程でサイズを調整するので問題ありません。
STEP2|樹脂埋めで持ちやすい形に加工する
サイズ加工が終わったら、次はサンプルを持ちやすい形に加工しましょう。断面観察を行うには、観察面を研磨して整える必要があり、この研磨の精度が高いほど精密な観察ができます。今回ご紹介する方法では、サンプルを手で持って研磨するため、持ちにくい形のままだと観察面を磨き上げる工程で苦労することになります。そこで、サンプルを樹脂で筒状に固めます。
① 筒の片側をテープでふさぐ

筒は、直径20mm程度の、人差し指・中指・親指の3本でつまめる大きさが理想的です。長さは2〜3cmに切断しましょう。テープははがれないように、しっかりと貼ってください。
② 接着剤を配合する

主剤と硬化剤をしっかりと混ぜ合わせます。接着剤は、硬化したときにある程度の硬さが出る樹脂を選んでください。ホームセンターで市販されているエポキシ樹脂やポリエステル樹脂のうち、アクセサリー作成用の表記があるものがおすすめです。
③ 筒にサンプルを入れ、接着剤を流し込む

目的の観察面が下側に近くなるように、筒の空いている口からサンプルを入れてください。気泡が入らないよう、ゆっくりと接着剤を流し込みましょう。ガラス棒や割りばしを伝わせて流し込むと、こぼれにくくなります。
④ 接着剤が硬化したらテープをはがして完成

STEP3|耐水研磨紙で断面を研磨する
サンプルの大きさと形を整えたら、いよいよ観察する断面を作っていきましょう。
研磨は、粗い番手から細かい番手へ順番に進めます。番手ごとの役割は次のとおりです。
① 240番で観察面の0.5mm手前まで削る

流し台に平らな土台を置き、その上に研磨紙をセットしましょう。少量の水を流しながら、サンプルを前後に動かして研磨していきます。水回り以外で作業する場合は、研磨紙の上に少量の水を垂らして研磨し、研磨くずで水が濁ってきたら、研磨紙とサンプルを水ですすいでから作業を続けてください。
研磨するときは、あまり強く押さえないようにしましょう。力を入れすぎると深い傷が入り、かえって時間がかかってしまいます。研磨面全体に均等に力がかかるよう意識しながら、前後に動かして磨いていくのがポイントです。目的の観察面から0.5mm程度まで削り込めたら終了です。
② 320番〜600番で目的の観察面まで削る
320番→400番→600番の順でサンプルを削っていきます。800番以降の研磨紙は削る力がほとんどないため、600番までの研磨紙で目的の観察面まで削りきりましょう。前の番手で磨いた方向とクロスさせて磨き、前の番手の傷がなくなったら次の番手に移ります。番手を変えるときは、サンプルの研磨面をしっかりとすすいでください。前の番手の研磨くずが残っていると、深い傷が入る原因になります。
③ 800番〜2000番で磨き上げる
800番→1200番→2000番の順でサンプルを磨き上げていきます。磨き方は600番までと同じですが、力はさらに抜いてください。押さえる力よりも、前後に動かす回数で磨き上げることを意識するのが、きれいに仕上げるポイントです。
STEP4|コンパウンドで鏡面に仕上げる

2000番まで研磨が終われば、顕微鏡やルーペなどで断面を確認することもできます。小さな傷が気になる場合は、コンパウンドで磨き上げましょう。
フェルトまたは布に、1円玉ほどの大きさのコンパウンドを出します。このコンパウンドを伸ばすように、円を描く形でサンプルを動かして磨いていきます。傷の原因になるので、力の入れすぎには注意しましょう。コンパウンドの研削力は研磨紙に比べてかなり低いため、鏡面まで仕上げるには時間がかかりますが、根気よく磨き上げてください。観察面の傷がなくなり、鏡面のような光沢が出たら完成です。

まとめ
本記事では、比較的低コストで断面観察用のサンプルを作る方法をご紹介しました。サイズ加工・樹脂埋め・断面研磨・鏡面仕上げの4ステップを押さえれば、特別な装置がなくても、顕微鏡観察や元素分析に使えるサンプルを作ることができます。この記事が断面観察のハードルを下げ、皆さまが断面観察に挑戦するきっかけになれば幸いです。
