その歴史の長さに対して、世の中の認知度が今一つ低い木床の研磨と塗装工事をMipoxの視点で考察していきます。近年の新築工事においては、工事塗装品の床板を使用するケースが増加している傾向がありますので、今回は体育館、教室、大型商業施設の中で体育館の再生工事にフォーカスしていきます。

目次

  1. フロアーサンダーによる研磨
  2. ポリッシャーによる研磨
  3. 体育館工事で使用する研磨材
  4. 体育館工事の注意事項
  5. まとめ

フロアーサンダーによる研磨

日本国内の体育館工事で使用されている研磨機は、そのほとんどが株式会社アシハラ製のフロアーサンダーです。機種としては、手引きと乗用タイプがあり、筆者の個人的な見解では乗用タイプは手引きタイプと比較して3倍以上の効率化がはかれている印象があります。

次にアシハラのフロアーサンダーを使用した工程を説明します。工程は旧塗膜の除去と床面の段差の調整などを目的として素地が出るまでの原則3工程で行います。

フロアーサンダー
(画像=フロアーサンダー)
研磨工程
(第1工程) ペーパー#24~#36による研磨(粗)旧塗膜を除去するまで行います。
(第2工程) ペーパー#40~#50による研磨(中)木肌が出るまで行います。
(第3工程) ペーパー#60~#100による研磨(細)白木が出るまで行います。

次工程に移る前には電機掃除機による十分な除塵が重要なポイントになります。

フロアーサンダー用のペーパーのサイズは幅305mmでドラム部分に巻き付けて使用します。取り付けについてはフロアーサンダーの取扱説明書を参考にしてください。

ペーパーの基材は紙・布・ファイバーがあります。床の状態や木材の種類などを考慮して粒度および基材を決定しますが、ファイバー製品を使用する際には、ドラムの両端部分のペーパーが立ち上がり「キズ」を付ける場合があるので注意が必要です。

フロアーサンダーで研磨できない壁際は、柔軟性のある研磨ディスクなどを使用します。粒度は、#40、#60、#80で#60が標準品です。

ポリッシャーによる研磨

木床工事で使用されているフロアーポリッシャーは主には型が12型、14型、16型の3機種です。使用するペーパーはポリッシャー機種サイズより1インチ程度大きい物を使用します。ポリッシャーのサイズは、12型はペーパー330mm、14型は380mm、16型は455mmとなります。なお、体育館工事では14型のポリッシャーが最も多く使用されております。

ポリッシャーは塗装工事の工程の中で使用されることが多いですが、フロアーサンダーによる研磨後に「トラフ~虎の皮」と呼ばれる波状の研磨跡を除去する目的でマジックペーパーや網目状ペーパーを用いて作業する場合があります。特に「トラフ」は塗装後に目立ち、クレームの原因となる場合があるので注意が必要です。

塗装後に塗料の毛羽立ちの除去と密着性を上げる目的でマジックペーパーや網目状ペーパーを使用します。塗装回数は工事指示書の通りですが、使用するペーパーは通常最初は#100、最後は#120となります。 この作業でも研磨後の白い塗料カスをその都度電機掃除機で十分に徐塵する必要があります。

体育館工事においては、最後にコートラインをき、仕上塗装を行って完了となります。

体育館工事
(画像=体育館工事)

体育館工事で使用する研磨材

主に使用されている研磨材は下記の3アイテムになります。

(1)フロアーサンダーで使用 幅305mmの長尺及びロールペーパー
(2) ポリッシャーで使用 粗目状ペーパーとマジック式ペーパー直径330mm、380mm、455mmになります。
(3)ポータブルサンダーで使用 研磨ディスク 180mm

体育館工事の注意事項

体育館の木床研磨
(画像=体育館の木床研磨)

体育館工事において注意すべきことは数多くありますが、作業中に発生する研磨粉の取り扱いと管理には細心の注意が必要です。

体育館工事での研磨粉は、火の気がなくても一定の条件下において自然発火を起こします。過去には研磨粉が原因で火災が発生した事例が数多くあります。ここでの研磨粉とは、フロアーサンダー研磨による木材粉とポリッシャー研磨による塗料粉のことを指しています。回収してビニール袋等に保管している研磨粉はもちろんですが、フロアーサンダーの集塵袋や電気掃除機内、さらにモップやウエスに付着した研磨粉も自然発火の原因となります。

自然発火のメカニズムについてここでは述べませんが、研磨粉のような「微粉」は蓄熱しやすく、最悪の場合には炭坑などで発生する「粉塵爆発」を起こす可能性もあります。回収した研磨粉は、金属等の不燃性の容器に入れて充分に水をはり、蓋をして屋外に保管してください。そして、速やかな焼却処理が理想です。

まとめ

最近の体育館工事においては、塗装を行わずに下地調整のみで長尺シートを敷いて対処する工法が増加しています。その影響で研磨製品の使用量は減少傾向ですが、長尺シート工法も一長一短があり、この先も下地調整等は必ず必要なので、研磨作業がなくなる訳ではありません。

当社としては、現在の体育館工事で最も使用されていると思われる研磨製品の0.3mmファイバー基材使用の長尺製品と同一基材使用の研磨ディスクの製造と改良を目指します。特に長尺製品の欠点である作業時に発生する「黒スジ」防止の製品開発は大きな課題であると考えます。