静電研磨フィルムとは
以前の研磨材は、基材ベースが紙や布であることが主流でしたが、紙だと破れやすく、布だとロール形状にした時に長尺にできないなどのデメリットがありました。これを解決したのが、静電フィルム研磨材となります。
基材を強靭なPETフィルムにすることで、破れづらく、布よりも基材が薄いので長尺にすることが可能で、作業性・生産効率が格段に良くなっています。
Mipoxが従来製造していた、精密研磨フィルムとは使用領域（顧客層）が異なることや、静電研磨フィルム（VARIOFILM）を組み合わせることでの相乗効果もあり、より広範囲（粗い研磨～仕上げ研磨）のお客様への対応が可能となりました。
VARIOFILMの特徴
基材ベースはPETフィルムで、平坦で強靭なフィルムを使用しており、ロール研磨では連続供給することで1個目も1000個目も同じ粗さの仕上げ研磨が可能となります。
PET基材は3MIL(75ミクロン）と5MIL(125ミクロン） の2種類の厚みを有します。 研磨材は、WA（酸化アルミニウム）100μ～5μとCC（シリコンカーバイド）60μ～9μの2種類をPET基材に均一にコーティングすることで、均一な仕上げ面を得ることができます。
クランクシャフト研磨においては、研磨加工中に VARIOFILM が滑らないように裏面に滑り止め加工（バックコート）を施しております。 また、ドライ研磨や湿式研磨（油性・水溶性クーラント）にも両方適応しております。
VARIOFILMの構造
静電研磨フィルム（VARIOFILM）の構造ですが、図のようにPET基材上部が研磨層で研磨材を付ける接着材（メイクコート）と研磨材の脱粒を防ぐための接着材（サイズコート）で、接着材が二層構造となっております。PET基材の下部には滑り止めのためのバックコートを施しています。
開発目的
この製品は、主に自動車のエンジン部品であるクランクシャフト・カムシャフトやミッション系のギヤシャフトなどの砥石研磨後の仕上げ研磨用途に開発した静電塗布コーティングのフィルム研磨材製品となります。
自動車分野では、砥石研磨後の面粗度向上に不可欠な製品で、自動車メーカーや自動車部品メーカーでも幅広く使用されている製品となり、それ以外の分野でも使用されています。当社も顧客の課題解決のために静電塗装製品の開発を進め、製造することになった製品です。
VARIOFILMの製造工程
1.PETフィムルの裏面に滑り止め加工（バックコート）を塗布する。
2.バックコート面に基材厚みと粒径の印刷を行う。
3.PET表面に接着材（メイクコート）を塗布する。
4.接着材面に砥材（WA/CC）を静電着で塗布コーティングする。
5.第1乾燥炉で乾燥させる。
6.砥材の脱粒防止のため、2回目の接着材（サイズコート）を塗布する。
7.2回目の接着材乾燥（第2乾燥炉）を経て巻き取りして完了。
VARIOFILMの研磨目的
VARIOFILM を使用することで、面粗度が向上し、振動や音を軽減させる効果が得られます。エンジンでは燃費の向上も見込めます。 また違った目的としては、プラトー加工（オイル溜まり）を作ることにより、ワークへの焼け防止のための加工にも使用されます。 印刷分野ではメッキ面を研磨することで、インクの馴染みを良くし印刷ムラを防止することにも使用されています。
他研磨用途
自動車部品の他にも、幅広い分野で使用されております。
各種ロールの研磨：グラビア印刷ロール・製版ロール・製紙ロール・圧延ロール・複写機用ゴムロール・船舶部品・油圧部品（建機用）・半導体分野・各種バルブ・ベアリング・ボールネジ・3Dプリンター造形物表面の積層研磨など多岐にわたり使用されております。
また丸く打ち抜いて、塗装時のゴミ・ブツ取りにも活用されております。
まとめ
弊社で製造しているフィルム研磨材は、当初から製造していた精密研磨フィルム（ローラーコート品）のみで、主に電子部品業界向けでしたが、この静電研磨フィルムであるVARIOFILM が作られたことで、裾野が広い自動車分野への本格的な参入が可能になりました。 また、自動車部品以外への分野にも進出しており、今では精密研磨フィルムとともに2本柱となっております。 豊富なラインアップを有しており、ユーザー様の仕様に合わせたVARIOFILMの提案ができますので、ご相談いただけたらと存じます。