自動車用ホイールは、車両を構成する最も重要な部品の一つになります。今回は、大型車両のスチールホイール研磨方法及び工程について説明します。

目次

  1. スチールホイール
    1. スチールホイールとは
    2. スチールホイールのメリット・デメリット
  2. スチールホイールの製造方法
    1. スチールホイールの研磨工程
  3. 最後に

スチールホイール

スチールホイールとは

スチールホイールとは、鉄製車輪のことです。鉄製車輪のメリットは耐久性がありコストが安いため、一般大衆車・商業車などに使用されています。 その後、世界の自動車メーカーがスチールホイールの開発、生産を開始しました。

スチールホイールのメリット・デメリット

メリット:コストが安く加工が容易であるため、自動車、大型車両等様々な車両で採用されています。

デメリット:プレスで製造を行う関係で、元が板なので強度と重量のバランスを考えて設計すると意匠的にはあまり自由度が高くありません。
大型バス・大型トラックではスチールホイールがむき出しになっていることが多いですが、多くの乗用車ではスチールホイールが樹脂製のホイールキャップをかぶせることを前提に、形状に意匠性がなくシンプルな構造になっています。

スチールホイールの製造方法

主にスチールホイールは、タイヤが装着される「リム」と車軸に取り付けられる「ディスク」からなる2ピース溶接構造として製造されています。
鉄板をプレス機で曲げたディスクとリムを溶接して作られます。
リムは短形の板材を曲げて溶接して円環を作ります。溶接部は強度を維持させる必要があるため、大きなビード溶接が発生します。

スチールホイールのリム製造工程
スチールホイールのリム製造工程
1.銅板切断⇒短形板材へ
2.曲げ加工⇒円環状へ
3.溶接
4.ロール成型
5.溶接部研磨
6.溶接部研磨仕上げ
7.塗装
8.完成

上記の工程を経てスチールホイールが完成します。

スチールホイールの研磨工程

研磨工程1
ハンドグラインダーを用いて手作業での研磨作業を行います。 ここで使用するのは「フラップディスク」です。 リムの表面は溶接後ロール成型工程に入り、表面が湾曲にデザインされています。この形状によりR面が多くなるため、オフセット砥石などの硬い研磨材は適していません。柔軟性のある「フラップディスク」が効率よく作業が可能となる製品になります。 なお通常の研磨材は、研削性を求めるとディスクを硬くしなければなりません。一方、柔軟性を求めると研削性はダウンします。この矛盾を解決する製品開発が求められます。 耐久性+柔軟性を兼ね備えた製品を検討したのは以下の点です。

  • 基材の変更
    研削力アップのためにはフラップホイールの基材自体の強度が必要です。 このため、通常より硬めの基材を選定し、羽根の並べ方も変更、基材自体の面積も若干広くしました。
    これによって研削性、耐久性もアップすることが可能となりました。耐久性においては、当社従来品と比較して160%アップという結果を得ることができました。

研磨工程2
仕上げ研磨として、円環状になったスチールホイールを固定しその内側と外側からはさみ込むように「フラップホイール」にて内側、外側の同時研磨を行っていきます.
当社製品フラップホイールであるNPホイールは以下の優れた点があります。

  • 連続切刃自生作用により、加工表面全体の粗さに差がなく均一に仕上がります。
  • 空冷作用により研磨焼けが入りにくく、弾性効果で目詰まりの心配がありません。
  • 放射状構造の為、曲面研磨にも適します。

      

最後に

グラインダー研磨工程で、耐久性、研削性は現状のままでよりR面に馴染ませるための柔軟性を求められています。そのためには、素材の変更でバックガードのファイバーを検討する必要があります。ファイバー繊維の材質、太さ、編み方などの変更検討、強度を持たせるための重ね方、樹脂処理方法などを再検討する必要があります。
変更点の第一段階としては、バルカナイズドファイバーの耐水処理加工、バルカナイズドファイバーとグラスファイバーを組み合わせた2層式のバックガードを検討しています。将来的には、アラミド繊維やそれに近い繊維を用いた製品が実用化できるのを目標として開発を進めています。
一方で忘れてはいけないのは、手作業で行うグラインダー作業などで使用する回転体は危険を伴う作業工程となります。作業する際は小さい径のディスクですが高速回転で作業をするため安全面を怠ると大事故につながります。新しい製品を作っていくことも大切ですが「お客様が安全に使用できる製品」を念頭に置いたうえでより良い製品を提供していきたいと考えております。今後も研磨材の課題である目詰まりや耐久性の改善を継続し、お客様に満足していただける製品を開発していくよう努力してまいります。今後の当社製品にご期待ください。