Mipox 呉ベースでは技能五輪全国大会で使用される高精度なやすりを製作しています。第62回大会機械組み立て職種においては14企業中、12企業と多くの企業に採用いただき、選手の方々に当社のやすりを使用していただいております。今回はその機械組み立て職種において選手の方々が非常に嫌う「かしり」に対応したやすりを開発しましたので開発経緯や製品の特徴についてご紹介いたします。

目次

  1. 【かしりとは?】
  2. 【カーボナイトG3かしり対策品の開発経緯】
  3. 【かしりにくいやすりの刃形状とは?】
  4. 【更なる切削粉の排出力向上へ】
  5. 【カーボナイトG3かしり対策品の完成とお客様の声】
  6. 【まとめ】

【かしりとは?】

みなさんは、「かしり」や「かしる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「かしる」とは機械組み立てや材料加工などの際、材料がへばりついたり、引きずったりしてワークにキズがついてしまう現象のことを言い、「かじり」や「かじる」とも言います。やすりによる切削加工で「かしる」という現象は、切削加工中に出た切削粉が排出しきらず、やすりとワークの間で切削粉を引きずり、キズをつけてしまうのが原因となります。技能五輪大会で課題の金属加工から機械組み立てまでに制限時間が設定されており、時間内に精度よく完成させることを競い合います。そのため、予期せぬワークへのキズは致命的なタイムロスへ繋がるため「かしり」への対策は重要なポイントとなっています。

目詰まりした切削粉がワークにキズをつける様子
(画像=目詰まりした切削粉がワークにキズをつける様子)

【カーボナイトG3かしり対策品の開発経緯】

特殊なめっき処理により切削粉の排出性向上に重きを置いたやすり製品『カーボナイトG3』ですが 、これを拡販するなかで「ワークの種類によっては切削粉が目詰まりして、かしりが発生してしまう」という声をいただきました。この声をいただいたのは技能五輪全国大会参加企業ではなく、建設機械メーカーK社の社内競技のコーチからでした。技能五輪全国大会の機械組み立て職種で使用される金属はS45CやS50Cといった硬い金属が主となっていますが、今回はSS400という比較的柔らかく粘り気のある金属が主となります。「SS400はどうしてもかしりが発生してしまい、どうにもならない、これを改善出来ないか?」というご要望に応えるため開発をスタートしました。

【かしりにくいやすりの刃形状とは?】

やすりはタガネと呼ばれる目立て刃を打ち込むことでやすりの刃が形成されますが、打ち込む深さや目立てピッチの組み合わせで様々なやすりの刃が形成されます。今回、かしり対策の開発にあたり「かしりにくい刃形状とはどんなものだろう?」と考え、これまでに製作したことのある刃形状や新たに考えた刃形状を製作しました。社内でかしるまでの摺動回数の検証を行い、この検証結果から今回新たに考えた「刃幅が狭く、刃先が凸になっている形状」が1番「かしり」に対して有効だということが分かりました。

 

【更なる切削粉の排出力向上へ】

目詰まりも改善要求の1つであったため、更なる切削粉の排出力向上を目指し、ナバエ角の変更も行いました。(ナバエ角とはやすりの下目上目の角度のことです。) やすりに角度がついているのは切削粉を排出させるためです。ナバエ角を鋭角にすることで切削粉がより一層排出されやすくなりました。

ナバエ角の変更
(画像=ナバエ角の変更)

【カーボナイトG3かしり対策品の完成とお客様の声】

カーボナイトG3の特徴である『やすりの平面精度』や『切削粉が付着しにくい』に加えて、今回の対策品は『かしりにくい』といった特徴があります。SS400のワーク用に開発したやすりですが、すでにご購入いただいている既存の企業様にも今回のかしり対策品をご使用いただいたところ、S45CやS50Cに対しても「かしり」に有効であることが分かりました。使用者によって使い心地の感じ方は様々でしたが、SS400に対しては「随分かしりが発生しない」と効果を実感していただけました。

カーボナイトG3 かしり対策品
(画像=カーボナイトG3 かしり対策品)

【まとめ】

カーボナイトG3かしり対策品はK社の社内競技用やすりとしてすぐに採用いただき同時に技能五輪参加企業においても2社採用いただきました。今回の改良点である「新しい刃形状」や「ナバエ角の変更」の技術の組み合わせがかしり対策に繋がっております。Mipox 呉ベースはこれからもお客様のご期待に沿える製品づくりを行っていきます。新たに開発した「カーボナイトG3 かしり対策品 」を是非お試しください。