製品の外観や耐久性に直結する「塗装工程」。中でも、塗装前の「予熱」は仕上がりを大きく左右する重要な工程です。
しかし、これまでの加熱方法では、「ムラ」や「時間ロス」、「エネルギー効率の低さ」など、多くの課題がありました。そこで近年、注目されているのが「誘導加熱(IH)」による予熱技術です。

そもそも「予熱」はなぜ重要?

自動車部品や家電、建材など、さまざまな製品に施される溶剤塗装。塗装前に金属表面を加熱することで、以下のようなメリットがあります:

  • 表面の水分除去による密着性向上
  • 湿度変化の影響を受けにくい安定した塗膜形成
  • 初期塗着性(ピンホールやはじきの抑制)向上

たとえば、雨の日にクルマのボンネットにシールを貼ろうとしてもうまく貼れない─そんな経験はありませんか?金属表面に水分が残っていると、塗料も同様にうまく「乗らない」のです。

 

誘導加熱とは?見えない電磁の力で、金属を内部から加熱

誘導加熱は、金属に高周波の電磁波を当て、内部に渦電流を発生させて発熱させる加熱方式です。炎や接触を使わず、対象物そのものを発熱体とするため、表面からだけでなく「内部から」効率的に温度を上げられるのが特徴です。
IHと聞くと、家庭用のIHクッキングヒーターを思い浮かべる方も多いでしょう。あれも金属鍋を内部から加熱する仕組みで、実は工業分野でも同じ原理が応用されています。

 

誘導加熱が「予熱」に向いている理由

では、なぜ予熱工程において誘導加熱が注目されているのでしょうか。従来の熱風や遠赤外線と比べ、IHには以下の強みがあります:

  • 瞬時加熱:数秒で表面温度を100℃以上に上昇可能。生産タクト短縮に貢献。
  • 部分加熱:必要な部分だけに熱を集中でき、部品全体を過熱せずにすむ。
  • クリーン&安全:火気を使わず、密閉空間でも使用可能。
  • エネルギー効率が高い:熱損失が少なく、ランニングコストを削減。
 

たとえば、建機部品や鋼製フレームの塗装ラインにおいて、予熱炉を設置するには大がかりなスペースや初期投資が必要です。これに対してIHなら、コンパクトなヘッドでラインに後付け設置も可能。CO₂排出量の低減にもつながります。

「予熱+塗装」のスマートソリューション

当社では、この誘導加熱技術を活かし、塗装ラインにおける「前処理の最適化」を提案しています。具体的には、塗装前の脱脂・乾燥・予熱工程を、IHユニットによって短時間・高効率に仕上げることを可能にします。
さらに、当社が開発中の粉体塗装の乾燥工程としてのIHシステムとの組み合わせにより、溶剤レス・乾燥炉レスの新しい塗装プロセス構築も視野に入れています。

 

「品質」「環境」「効率」、すべてを塗り替える力

これまでの塗装工程では、「予熱」は見過ごされがちな存在でした。しかし実際には、塗装品質・作業効率・環境対応すべてにおいて、非常に重要な役割を果たします。
そして誘導加熱技術は、その予熱工程を進化させる鍵となる存在です。当社では、現場の課題に即したIHシステムの導入支援から、塗装ライン全体の見直しまで、トータルでの提案を行っています。
「今のやり方を変えたい」「塗装不良を減らしたい」「CO₂削減したい」─そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。誘導加熱が、貴社の塗装工程をよりスマートに変えていきます。