はじめに
東南アジアをはじめ、世界中で拡大を続ける自動車・二輪車・農機具・船舶などのモビリティ産業。その心臓部であるエンジンやトランスミッションには、カムシャフトやクランクシャフト、各種ギアシャフトといった高精度な金属シャフト部品が数多く組み込まれています。
これらの部品の性能(静粛性・耐久性・燃費性能)を決定づけるのが、製造プロセスの最終段階で行われる超精密研磨です。
本記事では、海外のモノづくり現場が抱える研磨の課題に対し、マイポックスの静電研磨フィルム「VARIOFILM」がどのような技術的アプローチとデータ的裏付けによって革新をもたらしているのかをご紹介します。
1. 海外の製造現場が直面する「超精密研磨の共通課題」
金属シャフトの加工プロセスでは、研磨などの前工程を行った後、最終的な面粗度の調整や、微細なバリ・スクラッチ(傷)を除去するために研磨フィルムによる仕上げ加工が行われます。
しかし、従来の研磨フィルムを使用しているラインでは、以下のようなお悩みの声が頻繁に聞かれます。
01性能ブレによるロットごとの「歩留まり低下」前工程研磨の目が消えきらなかったり、逆に目詰まりを起こして深傷が入ったりする。仕上がりにバラツキがあり、再加工や手直しの手間が発生している。
02研磨フィルムのズレによる「研磨精度の低下」高負荷な加工時や現地工場の環境変化(温湿度や研磨材質、ワークの品質などの影響)において、フィルム裏面が滑ってスリップが生じ、狙い通りの面粗度が出ない。
03頻繁なフィルム交換による「ライン停止」フィルムの摩耗が早く、1日に何度もロールを交換しなければならない。停止時間のロスがそのまま生産コストを圧迫している。
品質の安定化と生産効率の向上という、二律背反する課題をどう克服するか。その明確な解となるのがVARIOFILMです。
2. VARIOFILMの製品仕様・基本特長
VARIOFILMは、高い研磨性と仕上がり性を持ち、幅広い用途に対応可能な静電研磨フィルムです。研磨微粒子を、厚みが均一で強靭なポリエステルフィルム基材に静電塗布方式でコーティングすることで、効率良く均一な仕上げ面を得ることができます。
基材
厚みが均一かつ平滑で強靭なポリエステルフィルムを使用
樹脂
耐水・耐油性に優れた特殊樹脂(レジン)を使用し、湿式・乾式研磨においても優れた耐久性を発揮
砥粒
粒径をミクロン単位で管理された研磨微粒子により精密な研磨性・仕上げ性を実現
塗布
マイポックスのコーティング技術を駆使した静電塗布法によりコーティング
加工形状
ロール、ディスク、シート、ベルトなど
3. なぜVARIOFILMだと課題が解決できるのか?
VARIOFILMは、市場の一般的な精密研磨フィルムと比較しても、「最終仕上げの美しさ」と「加工の安定性」において非常に高い評価をいただいています。その秘密は、マイポックス独自の塗布技術とこだわりの仕様設計にあります。
1
装置への密着性を極めるアンチスリップバックコート処方
VARIOFILMのバックコート(裏面)には、アンチスリップ用に独自開発した特別な処方を標準装備しています。この優れた「滑り止め」機能が、研磨装置のシューやゴムロールにフィルムをぴったりと密着させます。高負荷な研磨加工時でも微振動やフィルムのスリップ・蛇行を抑え込み、前工程によるスクラッチを消し去る極めて高い仕上がり品質(超精密な面粗度)を実現します。
2
「静電塗布技術」による均一な砥粒配列と圧倒的な鋭利さ
VARIOFILMは、静電気の力を利用して砥粒(研磨粒)をフィルム上に垂直に立たせて配列・固定する「静電塗布技術(Electrostatic Application Method)」を採用しています。電子顕微鏡(SEM)画像で比較すると、他社同等品と比較してもVARIOFILMは砥粒の刃先が均一かつ上向きに鋭く揃って配置されています。これにより、前工程研磨後に残る微細な突起だけを効率よく捉えて平滑化が可能です。また、砥粒の脱落による突発的なスクラッチを劇的に抑制し、「狙い通りの品質」を極めて安定して再現します。
3
乾式・湿式を選ばない高い耐久性(耐水・耐油性)
VARIOFILMでは、耐水・耐油性に優れた特殊樹脂(レジン)を採用しています。目詰まりしにくく砥粒が脱落しにくいため、1ロールで長く安定して削り続けることが可能です。フィルム交換の頻度が激減し、生産ラインの停止時間を最小限に抑えます。
4. 多彩なワーク・要求スペックに応える圧倒的なラインナップと改善実績
VARIOFILMは、モビリティ産業を中心に幅広い加工部位・ワークに適応します。
主な適用部位・ワーク例
自動車・二輪車エンジン部品クランクシャフト(各ジャーナル部・各ピン部・スラスト部・オイルシール部・油穴口元のバリ取り)、カムシャフト 駆動系・駆動機構部品CVTフランジプーリー、ATギアシャフト、ATクラッチ、エアコン用シャフト その他産業用途大型エンジンシャフト、高精度圧延ロール、OA機器用ゴムロール
加工精度改善の実績データ(一例)
エアコン用シャフト
砥粒:WA(ホワイトアロンダム)
前加工精度 0.55 Ra → VARIOFILM仕上げ 0.2 Ra
AT用ギアシャフト
砥粒:WA(ホワイトアロンダム)
前加工精度 3.2 Rz → VARIOFILM仕上げ 0.8 Rz
AT用クラッチ
砥粒:WA / CC
前加工精度 6.3 Rz → VARIOFILM仕上げ 1.6 Rz
圧延ロール(鏡面仕上げ)
砥粒:FINAL(超仕上げ)
前加工精度 0.2~0.3 Ra → VARIOFILM仕上げ 0.01~0.02 Ra
※砥粒サイズも粗目の#240(80μm)から超微細な#4000(3μm)の鏡面仕上げ用FINALグレードまで豊富にラインナップしており、お客様の狙う面粗度に合わせた最適なご提案が可能です。
まとめ
国や地域、被削材の材質、使用する研磨装置によって、現場が抱えるお悩みは千差万別です。
私たちマイポックス Nikken事業部 海外セールス課は、研磨フィルムという「製品」の提供にとどまらず、現地工場での試作テストや研磨条件(周速・押圧力・送り速度等)のチューニング、サンプルご提供を通じて、お客様の生産プロセスの課題解決に伴走するパートナーでありたいと考えています。
前工程研磨後の仕上がりブレ、フィルムのスリップ、研磨精度のバラツキなど、研磨工程のお悩みやVARIOFILMのサンプル請求につきましては、ぜひお気軽にマイポックスまでお問い合わせください。
記事No,527