はじめに
プリント基板(PCB)の製造は、スマートフォンやデータセンター機器の高性能化により、 世界的に要求レベルが上がり続けています。
特に日本と中国では製造工程の考え方が異なり、 近年は中国の工程が大きく変化し、それに合わせてより強い研削力とスクラッチのない仕上がりが求められるようになっています。
本記事では、最近の中国PCB市場のニーズと、研磨工程の変化をわかりやすく解説します。
目次
日本と中国:PCB市場の基本的な違い
日本と中国では、PCB製造における市場特性と重視されるポイントが大きく異なります。
| 項目 | 日本市場 | 中国市場 |
|---|---|---|
| 主な用途 |
車載・産業・医療など 高信頼性用途が中心 |
スマホ・PC・ICパッケージなど 大量生産品が中心 |
| 技術的な強み |
微細加工・積層板の 高密度化に強み |
高速化・高周波化による 研磨工程要求の急上昇 |
| 重視ポイント | 安定性・品質一貫性 | 処理スピード・研磨能力 |
| インク特性 |
Low-CTE (低熱膨張)タイプが一般的 |
Low-CTEインクは 現在あまり使用されていない |
重要ポイント
- 日本は「品質の安定性」を重視
- 中国は「スピードと研削力」をより重視
- 市場特性の違いが研磨材への要求にも反映
つまり、日本は「品質の安定性」を重視し、中国は「スピードと研削力」をより重視する傾向があります。
中国市場で起きている"研磨工程の変化"
中国の工場では、ここ2〜3年で研磨工程が大きく変わっています。 背景にあるのは次の3つです。
(1)インクの変化
現在主に使われている2種類のインクがあります。
| インク名 | 特徴 | 課題 |
| IR-6P | 柔らかく安定性高い | 軟らかいため研磨残りが出やすい |
| IR-10XH | 硬く、研磨性が良い | 研削力を高く保つ必要あり |
特にIR-10XHの導入が増えており、硬いインクを一気に削れる研磨材へのニーズが高まっています。
(2)工程の変化
| 比較項目 | 従来の中国工程 | 現在の工程 |
|---|---|---|
| 工程フロー |
セラミック ↓ 不織布 ↓ メッキ |
不織布(初段) ↓ セラミック ↓ 不織布(仕上げ) ↓ レジスト or エッチング |
| 求められる性能 | 標準的な研磨仕上げ |
・不織布の「初段研削力」 ・セラミックでの「平坦度と仕上げ」 ・不織布の「スクラッチレス性能」 |
これにより、性能が総合的に求められるようになりました。
(3)加工条件の高速化
- ライン:16〜24軸構成
- スピード:1.5 m/min
- 電流:1.5〜2 A
- 銅箔を6 µm削ることが求められる
重要ポイント
- インクが硬質化し、研削力の高い研磨材が必要に
- 工程が「不織布 → セラミック → 不織布」に変化
- 短時間でしっかり削れ、かつ仕上がりがきれいな研磨材が必要
現在、中国で求められる研磨品質の優先順位
顧客の要望を整理すると、追求されているポイントは明確です。
重要ポイント
- Rz:表面の粗さを極めて小さく
- 研磨力:初段でしっかり削れること
- 耐久性:ラインスピードに耐える長寿命
特にRzの要求が厳しくなっており、 「研削力」と「スクラッチレス」を同時に満たすことが必須になっています。
従来は研削力または仕上がり品質のどちらかに特化した研磨材が使われることが多かったのですが、 現在は両方を高いレベルで実現することが求められています。
なぜ中国市場では"研削力アップ"が必要なのか?
理由は以下の3点に集約されます。
① 埋め込み方式の変化
- 以前:ポイント埋め
- 現在:全面埋め → 削る量が多くなり、研削力が必要
② インクの硬化
- IR-10XHのように硬いインクが増加
- 従来の研磨材では削り残しが発生
③ コストダウン要求
- 工程短縮・スピードアップの必要性
- 1工程で6 µm削れる研磨材が有利
重要ポイント
- 全面埋め方式により削る量が増加
- 硬いインクの増加で従来材では対応困難
- コスト競争力のため、1工程での高い研削力が求められる
研磨材メーカーに求められる対応とは
中国市場の変化に対応するには、次の性能が重要になります。
重要ポイント
- 初段で一気に削れる研削力
- セラミックとの相性(スクラッチを防ぐ)
- 仕上げ不織布でRz 5 µm以下を実現
- 高速ラインでも摩耗しにくい耐久性
- 硬いインクにも対応できる切削性
特に、「不織布 → セラミック → 不織布」という工程全体を最適化できる
研磨材のラインアップが重要です。
単独の工程だけでなく、工程全体での最適化を考えた研磨材の選定が、 トータルコストの削減と品質向上につながります。
まとめ:日本と中国は"求める研磨性能"が違う
| 項目 | 日本 | 中国 |
| 求める品質 | 安定性・信頼性 | 研削力・高速性 |
| インク | Low-CTEなど多様 | IR-6P・IR-10XHが主流 |
| 工程 | 伝統工程+安定重視 | 速度重視で工程が変化 |
| 研磨材の要求 | 均一性 | 研削力+スクラッチレス |
中国PCB市場では工程やインクの変化により、 これまで以上に高い研削力とスクラッチレス性能が求められるようになっています。
こうしたニーズは年々明確化しており、研磨材メーカーにとっては新しい技術開発の機会でもあります。
マイポックスとしても、現場の声をもとに初段研削力の強化や仕上げ時のRz低減、耐久性の向上など、 中国市場特有の要求に合わせた製品開発を積極的に進めています。
今後もお客様の工程改善に寄り添いながら、最適な研磨ソリューションを提供し続けていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ日本と中国ではPCB向け研磨材に求められる性能が違うのですか?
A. 日本市場は車載・産業・医療用途が中心で、品質の安定性や再現性が最重要視されます。 一方、中国市場はスマホ・PC・ICパッケージなどの大量生産が主流で、処理スピードと高い研削力が強く求められています。
Q2. 中国PCB市場で研磨工程はどのように変化していますか?
A. 従来の「セラミック → 不織布 → メッキ」から、 現在は「不織布 → セラミック → 不織布 → レジスト/エッチング」へと工程が変化しています。 その結果、各工程で異なる性能を高次元で両立する研磨材が必要になりました。
Q3. なぜ中国市場では初段の研削力が特に重視されるのですか?
A. 埋め込み方式がポイント埋めから全面埋めへ変化し、削る量が大幅に増えたためです。 短時間で確実に6µm程度削れる研削力が、工程短縮とコスト競争力に直結しています。
Q4. IR-10XHインクの普及が研磨工程に与える影響は何ですか?
A. IR-10XHは硬度が高く研磨性は良い反面、 研削力が不足すると削り残しが発生します。 そのため、従来材よりも高い切削性を持つ研磨材が不可欠になっています。
Q5. 現在の中国市場で求められる研磨品質の優先順位は何ですか?
A. 第一に初段でしっかり削れる研削力、 次にRzを極めて低く抑えるスクラッチレス性能、 さらに高速ラインに耐える耐久性が重要視されています。
Q6. 研磨材メーカーにはどのような対応が求められていますか?
A. 単一工程だけでなく、 不織布 → セラミック → 不織布という工程全体を見据えたラインアップ設計が求められています。 工程最適化による品質向上とトータルコスト削減が重要なテーマです。
