2026年、モビリティの常識が変わろうとしています。

ソニーとホンダが共同開発したEV「AFEELA(アフィーラ)」の体験会に参加しました。
AFEELAは、単なる電気自動車ではありません。45個のセンサー、巨大パノラミックスクリーン、28個のスピーカー、そしてMicrosoft AzureのAIが統合された"走るソフトウェアプラットフォーム"です。

AFEELA ハンドル

北米では2026年末、日本でも2027年末のデリバリーが予定されており、SDV(ソフトウェア定義車両)時代の幕開けを告げる存在として、業界の注目を集めています。
では、精密表面処理を手がけるマイポックスのような企業にとって、このEVシフトは何を意味するのか。
ひとつの視点として、EVは研磨・コーティング・スリットの出番がむしろ増える乗り物といえそうです。

AFEELA 運転席まわりパネル


目次

  1. 2026年、モビリティの常識が変わろうとしています。
  2. ガソリン車からEVへ——研磨対象が「深く」なる可能性
  3. AFEELA × 表面技術:7つの接点候補
    1. ① 車載半導体——SiC・GaN・AIチップ
    2. ② 車載カメラ・LiDAR——センサーの「目」を守る
    3. ③ EVバッテリー——絶縁と接合の最前線
    4. ④ 外装デザイン——センサーと美しさの両立
    5. ⑤ 車内ディスプレイ——OLEDとガラスの表面品質
    6. ⑥ EVモーター部品——回転精度が静粛性を決める
    7. ⑦ 車載光通信——クラウド接続を支える光ファイバー
  4. どこから入るか——Tier1サプライヤーという視点
  5. まとめ——EVシフトは「研磨不要化」ではなく「研磨深化」の時代へ

ガソリン車からEVへ——研磨対象が「深く」なる可能性

ガソリン車の部品点数は約3万点といわれ、エンジン・トランスミッションなどの機械部品が中心でした。EVはそれが大幅に減る一方、代わりに急増するのが半導体・光学部品・電池部材・センサーです。
これらはいずれも、表面品質が性能を左右する部材群です。
マイポックスが長年培ってきた「塗る(コーティング)・切る(スリット)・磨く(ポリシング)」のコア技術は、EVという新たな文脈において、より広い領域で求められる可能性があると考えています。

AFEELA フロント


AFEELA × 表面技術:7つの接点候補

AFEELAの車両構成を起点に、精密表面処理技術が関与し得る領域を整理しました。現時点での採用・関与を示すものではなく、技術的な親和性の観点からの考察です。

① 車載半導体——SiC・GaN・AIチップ

AFEELAはSDVであるため、半導体搭載量は従来車の2〜3倍ともいわれます。中でもEVの心臓部であるSiCパワー半導体は、エネルギー効率を左右する最重要部品です。
ウェーハ研磨・エッジ研磨・CMP(化学機械研磨)などの精密加工技術は、こうした半導体製造プロセスにおいて不可欠な工程です。EV普及に伴うパワー半導体需要の急拡大は、この領域における技術ニーズの高まりを意味しています。

AFEELA アクセサリ


② 車載カメラ・LiDAR——センサーの「目」を守る

AFEELAには計45個のセンサーが搭載されています。カメラ、LiDAR、ミリ波レーダー、赤外線カメラ——これらはいずれも、レンズや窓面の透明性と表面平滑度が性能の前提条件となります。
センサー窓に傷や凹凸があれば、自動運転AIが誤判断を起こすリスクにつながりかねません。
光学ガラス研磨・センサー用基板研磨・光学フィルムコーティングといった技術は、こうした要求品質に応え得る分野のひとつといえます。

AFEELA ウィンドウ


③ EVバッテリー——絶縁と接合の最前線

バッテリーはEVの最大コスト部品であり、熱管理・絶縁・接合面の精度がそのまま航続距離と安全性に直結します。バスバーへの絶縁コーティングや、電極・バッテリーケースの表面仕上げは、粉体塗装・精密研磨の技術が求められる工程として注目されます。

AFEELA 充電


④ 外装デザイン——センサーと美しさの両立

AFEELAのフロントに配された「メディアバー」(ディスプレイ一体型パネル)に象徴されるように、EVの外装はデザインとセンサー機能を両立しなければなりません。LiDARカバーやカメラ周辺のパーツには、光沢と平滑度を同時に実現する精密な表面処理が求められると考えられます。

AFEELA フロント2


⑤ 車内ディスプレイ——OLEDとガラスの表面品質

ダッシュボード端から端まで広がるパノラミックスクリーン、後部座席の大型モニター——AFEELAの車内はもはやリビングルームです。OLEDパネルのカバーガラスやタッチパネル向けフィルムは、光学・ディスプレイ分野の表面処理技術と親和性が高い領域です。

AFEELA セカンドシート


⑥ EVモーター部品——回転精度が静粛性を決める

モーターシャフト、ベアリング面、各種ギア、磁石接合面——EVの静粛性と効率を左右するこれらの部品は、精密な研磨精度が求められます。金属精密研磨・平面研磨・表面粗さ制御は、自動車部品製造において広く必要とされる技術です。

⑦ 車載光通信——クラウド接続を支える光ファイバー

AFEELAはクラウドと常時接続するSDVです。高速・大容量データ通信を支える光通信インフラでは、光ファイバー端面の研磨精度が信号品質に直結します。通信インフラと車載システムの境界が溶け合うこの領域は、今後注目すべき接点のひとつです。

AFEELA フロントパネル2


どこから入るか——Tier1サプライヤーという視点

AFEELAのサプライチェーンはSony × Hondaという構造を持ち、実際の部材調達は複数のTier1(一次部品メーカー)を通じて行われます。精密加工・表面処理の技術を持つ企業が関与し得るとすれば、車両メーカーよりTier1との連携が現実的な経路と考えられます。

  • パワー半導体・電動化
  • センサー・通信

こうした企業がEV向けの生産を拡張していく過程で、どのような表面処理・精密加工のニーズが生まれるかを把握することが、次の一手を考える上での重要な視点になります。

まとめ——EVシフトは「研磨不要化」ではなく「研磨深化」の時代へ

「EVになれば機械部品が減って、研磨の出番も減るのでは?」
この問いへの答えとして、AFEELAが示す車両構成は一つの示唆を与えてくれます。
半導体、センサー、光学、電池——これらの精度要求は、エンジン部品に引けを取らず、場合によってはそれ以上の表面品質が求められます。「塗る・切る・磨く」の技術が活きる場面は、モビリティの進化とともに変容しながら、確実に存在し続けるはずです。

AFEELA リア

マイポックスは引き続き、次世代モビリティの技術動向を注視しながら、表面技術の可能性を探っていきます。


本記事は、銀座で開催されたAFEELA体験会への参加をもとに、EVシフトと精密表面処理技術の接点を考察したものです。記載内容はマイポックスの現時点での採用・受注等を示すものではありません。