はじめに--精密研磨技術の総合プロバイダーとして

マイポックス株式会社(東京証券取引所スタンダード市場上場、証券コード:5381)は、1925年(大正14年)の創業以来、研磨材料・研磨技術の分野において百年近い歴史を積み重ねてきた精密研磨の専業メーカーです。栃木県鹿沼市に本社・主力事業所を置き、国内外9ヶ国・23拠点にグローバルネットワークを展開、グループ全体で約600名の従業員を擁しています。

当社の事業は大きく以下の二軸を柱として展開しています。

製品事業
自社研磨フィルム・液体研磨剤・研磨装置・再帰性反射材など、多彩な製品群を世界市場に供給。
受託事業
顧客の素材・部品をお預かりし、コーティング・研磨加工・スリット加工・常温接合・検査といった一連の精密加工サービスを提供。

目次

  1. 受託研磨加工サービスの全体像——ワンストップソリューション
  2. 設備体制——高度な品質管理を支えるインフラ
  3. まとめ

受託研磨加工サービスの全体像——ワンストップソリューション

マイポックスが提供する受託研磨加工サービスの最大の特徴は、「ワンストップソリューション」にあります。自社製の研磨材(研磨フィルム・CMPスラリー等)と自社開発の専用研磨装置を組み合わせることで、単一工程への対応はもとより、インゴットからウェーハ化(ウェーハメイク)に至る全工程を一括して受託するフルラインサービスを実現しています。試作・少量ロットから中量・量産まで幅広いスループットに対応できる点も、顧客企業から高い評価を受けている要因のひとつです。

CMP加工中の画像

同サービスが対象とする主要アプリケーションは、半導体デバイス全般(パワーデバイス・通信デバイス・SAWフィルター・MEMS・CMOS・TSV・TGV)、オプトデバイス、ヒートシンク、各種単結晶基板・セラミックス基板と多岐にわたります。

対応可能な材料は極めて広範であり、お客様のニーズに合わせて最適なプロセスを提案します。

■ 実績のある対応材料のラインナップ
  • ・化合物半導体: Si, SiC, GaN, InP, GaAs, Ga₂O₃ 等
  • セラミックス: AlN, Al₂O₃, ZrO₂, 窒化ケイ素(Si₃N₄) 等
  • 金属材料: Au, Cu, Al, Mo, W 等

コアサービス① ポリッシング(平面研磨・CMP)

ポリッシングおよびCMP(化学機械研磨)は、受託事業の中核をなすサービスです。各種ウェーハ(半導体材料・単結晶から多結晶・Poly材まで)の平坦化・研磨加工を、他社の追随を許さない高精度で実施します。チップサイズ1個からの小ロット試作対応から量産ラインまで幅広く受注しており、顧客の開発フェーズから量産フェーズへのシームレスな移行を支援しています。

加工実績として特筆すべきは、通常の研磨手法では平滑化が困難とされる多結晶・焼結体セラミックスへの対応力です。多結晶SiC(Poly-SiC)基板においては、結晶粒界段差の解消を通じて表面粗さRa 0.2nmという超高精度の鏡面を実現しており、一般的なポリシング・CMPでは達成困難なRa 5nm相当の表面と比較しても、格段に優れた仕上がりを提供しています。同様に、窒化ケイ素(SiN)焼結体では外形加工から超平滑化表面処理(Ra 0.2 nm)まで一貫したワンストップ加工サービスを展開し、車載用・半導体製造装置部材としての用途開拓にも貢献しています。

高輝度LED向け蛍光体セラミックス(YAG/Al₂O₃)においては、粒界段差を最小限に抑えたスクラッチフリーの超高精度平面(Sa 0.317nm・RMS 0.490nm)を実現。後工程の接合加工を円滑化し、放熱(ヒートシンク)性能の向上に寄与するプロセスとして多数導入されています。また、高純度SiCセラミックスや窒化アルミニウム(AlN)基板においても、従来技術の限界を超える超平滑化加工を提供しており、次世代パワーデバイス・低炭素社会の実現に向けた材料開発を技術面から支えています。

CMP加工中の画像
CMP加工の様子

コアサービス② エッジ研磨(ベベル・ノッチ・トップエッジ加工)

マイポックス独自の「フィルム研磨式エッジ研磨工法」は、同社が世界市場に200台以上の納入実績を持つMipox Edge Polisherの技術を受託加工サービスに展開したものです。2インチから12インチ(300mm)まで幅広いウェーハサイズに対応し、ベベル(外周斜面)・ノッチ・オリエンテーションフラット(オリフラ)・トップエッジ(表面最外周部)の各部位を高品位に仕上げます。

本工法の技術的優位性は以下の点にあります。

まず、研磨テープの連続送り機構により目詰まりが発生しないため、加工レートの安定性が高く、長時間稼働においても品質が劣化しません。次に、砥石研削方式と比較してチッピング(欠け)や割れの発生頻度が大幅に低減されます。これにより、高価なSiCやGaNといった難削材料、貼り合わせ(接合)基板、薄型基板など、極めて繊細な取り扱いを要する素材においても、材料ロスを最小限に抑えた安定加工が可能です。
また、ケミカルフリープロセスを採用しており、特殊薬液を使用しないため環境負荷が低く、顧客工場への導入時の安全管理コストも低減できます。

加工形状はレシピ設定により柔軟に変更可能で、T型エッジ・R型エッジ・異形エッジ形状など多様なベベル形状の成形に対応しています。砥石研削方式では形状変更のたびに専用砥石の準備が必要となるのに対し、フィルム方式ではソフトウェアの設定変更のみで対応できるため、多品種少量生産に適した高い生産柔軟性を発揮します。

ナノインプリント用基板やGaN on Siウェーハにおけるトップエッジ脱膜処理、SiC自立型基板製造時のエピクラウン対策、接合工程の安定性向上を目的としたエッジ処理など、応用範囲は半導体プロセスの複数工程にわたっています。

コアサービス③ 常温接合(ボンディング)加工

マイポックスの受託研磨加工サービスは、研磨・洗浄のみならず、超高真空環境下での「常温接合(ルームテンパラチャーボンディング)」加工まで対応しています。熱を加えることなく異種材料同士を一体化できる常温接合技術は、熱膨張係数が大きく異なる材料同士の接合においても熱応力による歪みや剥離が生じないため、次世代半導体・MEMSの製造における重要技術として注目されています。

当社の常温接合装置はSEMI規格の12インチウェーハまで対応しており、1枚からの試作から月産1,000枚規模の中量生産まで受託可能です。シリコンウェーハをはじめ、化合物半導体ウェーハ・ガラス・各種セラミックス・Au・Cu等の金属膜まで、幅広い素材の接合実績を有しています。

特筆すべき事例として、接合が困難とされてきたGaN(N面)と異種材料(AlNセラミックス基板)との常温接合実績が挙げられます。また、接合後のウェーハに対するエッジトリートメント処理(エッジトリミング加工)にも対応しており、薄化処理工程での破損防止やハンドリング安全性の向上にも貢献しています。

常温接合装置
常温接合装置の様子

コアサービス④ 精密洗浄処理

研磨加工後の洗浄処理においても充実した設備体制を整えています。RCA洗浄・特殊洗剤による化学洗浄・スクラブ式物理洗浄・2流体ノズルを用いたジェット洗浄・メガソニックスピン洗浄・PVAスポンジブラシ洗浄など、目的に応じた多様な洗浄工法を取り揃えています。量産型フルオート両面スクラブ洗浄装置から枚葉式スピン洗浄機まで対応しており、洗浄単独での受託はもとより、常温接合とのセットサービスも提供しています。

設備体制——高度な品質管理を支えるインフラ

受託加工の品質を担保するため、同社は充実した加工設備・検査設備を自社内に保有しています。加工設備としては、最大12インチ対応のCMP装置(ラバーヘッド機含む)・ラップ装置・エッジ研磨装置(最大12インチ・ノッチ研磨対応)・精密洗浄装置を完備しています。

ナノメートルオーダーの品質を定量的に評価・保証するため、業界最先端の計測機器を網羅しています。

■ 主要な計測・解析設備
  • AFM(原子間力顕微鏡)
  • Zygo微分干渉計
  • 光学式膜厚測定機
  • エッジプロファイラー
  • 結晶転位高感度可視化装置 XS1 等
CMP加工中の画像

まとめ

マイポックス株式会社の受託研磨加工サービスは、これまでの精密研磨技術の蓄積と、自社製研磨材・自社開発装置・精密加工ノウハウを三位一体で活用するワンストップ体制を強みとしています。SiC・GaN・ダイヤモンドといった次世代パワー半導体材料や、難加工性セラミックス・金属材料に対する超精密加工実績は、当社が単なる加工受託企業にとどまらず、顧客の材料開発・デバイス開発を根底から支える技術パートナーであることを示しています。

試作段階から量産移行に至る一貫したサポート体制と、9ヶ国23拠点にわたるグローバルネットワークを背景に、マイポックス株式会社は今後も半導体・電子デバイス産業の革新を支える重要な役割を担い続けます。「まずは1枚だけ試したい」「検討段階だが相談したい」といったニーズにも柔軟にお応えします。試作から量産移行まで、貴社の開発パートナーとして強力にサポートいたします。お見積りや技術相談は、エレクトロニクス事業部までお気軽にご連絡ください。

記事No,383