前回(前回の投稿)は、交換中心の市場と修復中心の市場では、研磨が関与する工程の「幅」がまったく異なることを整理しました。今回は、鈑金から塗装、さらにはホイール補修まで、各工程を具体的に俯瞰します。
現場で起きている『手戻り』の原因がどこにあるのか、その核心を掘り下げます。

目次

  1. 補修工程における研磨の全体像
  2. 鈑金工程の研磨ーー素地を整える
  3. 塗装工程の研磨ーー仕上げを決める
  4. 「番手」より「傷の深さ」という視点
  5. まとめ

補修工程における研磨の全体像

自動車補修の工程には、研磨が関与する場面が多くあります。
大きく「鈑金作業」「塗装作業」「その他」に厳選し、代表的なものでも8工程に及びます。

鈑金作業

  • ① 切断後バリ取り
  • ② 溶接ビード処理

塗装作業

  • ③ 旧塗膜剥離
  • ④ フェザーエッジ
  • ⑤ パテ研磨
  • ⑥ プラサフ研磨
  • ⑦ トップコート研磨

その他

  • ⑧ ホイール補修

修復中心の市場では、このうち鈑金作業の工程が増加します。交換では不要だった「切断部の整形」や「溶接ビードの均し」がかかるためです。

第3部
ゴム砥石を使ったホイール補修

鈑金工程の研磨ーー素地を整える

従来、切断後のバリ取りや溶接ビード処理にはフラップディスクなどで一気に削る方法が一般的でした。
除去量は確保できますが、深いスクラッチが残りやすくなります。その結果、パテの使用量が増えたり、追加のDAサンダー工程が必要になるなど、かえって後工程の負担(オーバーワーク)を招く形になりがちです。
特に高張力鋼やアルミ材では、過度な発熱が歪みや母材劣化を招くリスクがあります。
「削れること」以上に「後工程を減らせること」が、修復中心の市場では重要な判断基準になります。

塗装工程の研磨ーー仕上げを決める

塗装工程の研磨は、交換中心の市場でも修復中心の市場でも共通して行われます。プラサフ研磨・ブツ取り・バフ前調整といった工程は、最終的な仕上がりを左右する重要な作業です。

ただし修復市場では、鈑金段階での研磨の質が塗装工程に直接影響します。素地の段階で傷が深く残っていれば、パテを多く盛る必要が生じ、研磨の工程も増えていきます。

第4部
ゴム砥石での旧塗膜剥離テスト

「番手」より「傷の深さ」という視点

研磨材を選ぶとき、多くの現場では「何番手を使うか」という発想が出発点になります。ただ、修復工程を全体として見たとき、より重要な問いは「この工程で残る傷の深さはどれくらいか」です。

番手は手段。傷の深さのコントロールが、後工程の手戻りを左右する。

深い傷が残れば、次の工程でより粗い番手から始め直す必要が生じます。逆に傷の深さを適切にコントロールできれば、工程全体がスムーズにつながります。CESVI Colombiaでも、熱影響の少ない工具選定が品質安定につながるという評価が示されており、これは速度の問題ではなく制御性の議論です。

まとめ

補修工程における研磨は、鈑金から塗装・ホイール補修まで広く関与しています。修復が増える市場では、その工程の数も幅も広がります。そのとき大切なのは、番手の選択より「傷の深さをどう制御するか」という視点です。

次回は、こうした工程の考え方を踏まえて、「工程合理化」という視点から研磨の役割を整理します。設備投資の問題ではなく、工程設計の問題として捉えたとき、何が見えてくるのかを掘り下げます。

次回(第4回)

工程合理化という視点 ― 投資ではなく設計の問題として


記事No,397