はじめに

研磨材を選定する際、多くの方は砥粒の番手を基準に選びます。しかし、その研磨材がどのような作業に適しているかを示す本質的な情報は、番手以外にも数多く存在します。マイポックスの製品名の多くは、型番を見るだけですべてが分かるように設計されています。

ベテラン技術者や熟練の職人は、製品名から適した研磨方法、接着剤の特性、基材の強度を瞬時に判別し、加工不良の原因を特定します。本記事では、弊社製品名の読み解き方を解説します。これらを理解することは、現場の課題を解決する最適な製品選定への近道となります。

目次

  1. はじめに
  2. 湿式用研磨材か乾式研磨材か
  3. 砥粒と接着剤が示す「適正材料」
  4. 基材の特性を示す「アルファベット」の定義
  5. 「ハイフン(-)以降」が示す、ツールの適合性と作業性
  6. 現場診断における製品記号の活用事例
  7. まとめ

湿式用研磨材か乾式研磨材か

研磨工程において、水を流しながら作業を行う「湿式研磨」は、摩擦熱の抑制や目詰まり防止に非常に有効です。仕上がり面をより滑らかに整えるための有力な選択肢として、耐水研磨紙が挙げられます。マイポックスの耐水研磨紙「WTCC」は、柔軟かつ強靭な耐水紙として優れた研磨力と仕上がりの均一性を備え、精度に妥協のないプロフェッショナルの現場で「高品質な耐水ペーパーの代名詞」として広く認知されています。

製品の特性を表す記号は、型番の一文字目に記載されています。

一文字目:研磨タイプ
W|耐水研磨紙
D|空研ぎ研磨紙
F|研削助材であるフッ素を含み、金属研磨向き
例:WTCC-S、DRAD-DDSM、FRAX-B など
ジャンボロール2

砥粒と接着剤が示す「適正材料」

製品記号の二文字目には接着剤の種類、三文字目には使用されている砥粒の材質が記されています。これらは対象物との相性を決定づける重要な因子です。

接着剤の結合方式 砥粒を基材に固定する接着剤の種類によって、耐熱性や砥粒の保持力が大きく変わります。研磨時には摩擦熱が発生するため、どの樹脂が使われているかを知ることが重要です。

二文字目:接着剤の結合方式
R(耐水性フェノール樹脂)|耐水性・耐熱性に極めて優れた硬質の樹脂。高速回転するサンダーでの作業で安定した研磨力を発揮します。 T(エポキシ樹脂)|強度と接着性に優れた樹脂。特殊な研磨工程で使用され、砥粒の脱落を高度に抑制します。 H(フェノール樹脂)|柔軟性や作業性を重視し、デリケートな仕上げが求められるシーンに適しています。 例:DRAC-DDSM/WTCC-S/AHAC-DDSN など

砥粒材質のコード

三文字目には砥粒の材質が記されており、対象物の材質との相性を見極める重要な情報となります。

三文字目:砥粒材質のコード
A(褐色アルミナ)|靭性が高く、一般鋼材の研削に適した汎用的な砥粒です。 W(白色アルミナ)|純度が高く破砕性に優れるため、発熱を抑えたいステンレスや焼入れ鋼に適しています。 C(炭化ケイ素)|アルミナ系より硬度が高く鋭利です。塗膜、石材、非鉄金属の研磨において優れた切れ味を発揮します。 例:RRAC-DDSN/SUWF-DLM/WTCC-B など

基材の特性を示す「アルファベット」の定義

製品記号の四文字目に記載されているアルファベット(A、C、D、F、J、Xなど)は、基材(ペーパーや布)の重さと厚みを表しています。これは研磨時の「研削力」と「耐久性」を左右する重要な指標です。一般的に、アルファベットが後半に進むほど基材は厚く、強固になります。

Aウェイト(軽量基材) 非常に薄く柔軟性に富み、手研ぎや複雑な曲面への追従性が求められる最終仕上げ工程に適しています。
C・Dウェイト(中量基材) 適度な強度と柔軟性を兼ね備え、オービタルサンダーの使用や木工・一般金属の軽研削に適しています。
F(フィルム基材) 紙に比べ厚みが極めて均一で強靭なため、オービタルサンダーや機械研磨など平面精度を求める研磨に適しています。
X・Yウェイト(布基材) 主に布製品に用いられ、紙基材を遥かに凌ぐ強度を持ち、ベルト研磨などの過酷な条件下で使用されます。
Nikkenのメイン製品。シート型、丸型、角形、ベルト型さまざまな形サイズを揃えております。
Nikkenのメイン製品:シート型、丸型、角形、ベルト型さまざまな形サイズを揃えております。
新米営業の視点 新米営業として現場を歩く中で学んだのは、「削れない」という不満の原因が粒度ではなく、基材が柔らかすぎて圧力が逃げている(=基材選択のミス)というケースが多々あるという事実です。基材の厚みによって研磨力は大きく変わります。お困りの際は、ぜひマイポックス営業までお問い合わせください。 例:RRAA-DDSN/WTWC-S/WRAF-DDSM/DRSX-DM など

「ハイフン(-)以降」が示す、ツールの適合性と作業性

製品記号の4文字目までで「中身(性能)」が決まりますが、ハイフン以降の記号は、その研磨材が「どのような形」で「どうやってツールに取り付けるか」という、現場の作業性に直結する情報を示しています。代表的な表記である「DDSM」を例に解読します。

1
形状の指定 D(ディスク):円形。ダブルアクションサンダー等に使用可能。
S(シート):長方形。手研ぎなどで使用する研磨紙といえばこの形。
B(ベルト):研磨機など機械加工で使用。
R(ロール):研磨機や、必要な分だけ切って使う用途など様々な場面で使用。
2
特殊加工(処方) DS(DS加工):マイポックス独自の目詰まり防止処方。安定した切れ味を持続させます。樹脂分の多い木材、熱に弱い塗膜(カシュー・ラッカー・漆・エナメルなど)、熱可塑性プラスチック(アクリル・塩ビ・ゴム質など)、ワックスの発生する塗膜(ポリエステル・ウレタン塗膜など)に適しています。
3
裏面の加工 M(マジックタック):いわゆるベルクロ式(面ファスナー)。ダブルアクションサンダーなどのツールにワンタッチで脱着可能です。
N(ドライタック):裏面に粘着剤がついた糊式タイプ。平滑性が高く、よりシビアな平面出しに適しています。
糊付きタイプvsマジックタイプ 比較
糊付きタイプとマジックタイプの比較
新米営業の視点 「性能や番手は同じなのに、なぜこんなに種類があるのか」と最初は戸惑いましたが、現場の職人さんはツールの種類や「脱着の速さ」を非常に重視されます。性能(前半の4文字)が完璧でも、取り付け方式(後半の記号)を間違えると作業が止まってしまいます。型番の最後まで目を配ることがとても重要です。

現場診断における製品記号の活用事例

塗料販売店様や現場作業者様にとって、このコードの知識は強力なトラブルシューティングの武器となります。

相談 研磨材の寿命が極端に短い
製品名を確認 高速サンダー使用に対し「Aウェイト(薄紙)」を使用
原因を推論 摩擦熱による接着剤の軟化・基材の腰折れ

カタログスペックの数値だけでなく、製品記号から「現在の作業条件と製品設計のミスマッチ」を見つけ出せることが、他社にはない弊社製品の付加価値です。

まとめ

マイポックスNikken製品は、製品名を見るだけで基材や接着剤、砥粒の組み合わせを瞬時に判断できる特徴があります。「なぜ、この製品でなければならないのか」——その答えは、常に製品名に記されています。現場で迷った際や、新しい工法を検討される際は、ぜひ一度製品記号を確認してみてください。そこにある記号を読み解くことが、品質向上とコスト削減の鍵を握っています。

もし判読できない記号や、特定の作業に最適な組み合わせを知りたい場合は、お気軽にマイポックス営業担当までお問い合わせください。製品記号の1文字に込められた技術的背景を含め、最適なソリューションをご提案いたします。