自動化システム制御アプリケーションを備えたトレイ内のシリコーンウェーハの製造を制御するためのデバイス

目次

  1. 1. プローブカード需要はなぜ伸びているのか
  2. 2. なぜ窒化ケイ素が求められるのか
  3. 3. 窒化ケイ素研磨の難しさはどこにあるか
  4. 4. 加工は「切る」から始まる——ダイヤモンドワイヤーとダイヤモンドスラリー
  5. 5. 「切る・削る・磨く」を一貫でリードするプロがまだいない

1. プローブカード需要はなぜ伸びているのか

AI半導体の増産により、テスト工程には大きな負荷がかかっています。AIチップのテスト時間はCPUの3倍程度に達するとされ、HBM(広帯域メモリ)ではウェハテストから積層後テスト、バーンイン、最終テストまで、通常のDRAMの倍以上の検査段数を踏みます。チップレットやHBMのように複数のダイを積層するパッケージでは、不良ダイを一つ混ぜただけでパッケージ全体が不良になってしまうため、良品ダイ(KGD)を保証するウェハテストの価値は、集積が進むほど高まっていきます。

その結果、テスターとウェハの間をつなぐプローブカードの需要が急拡大しており、プローブカードの供給不足がHBM出荷のボトルネックになっているという指摘すらあります。

市場規模の見通し プローブカード市場:2026年 約27億ドル → 2031年 42億ドル超

テストは長らくコストセンターと見られてきましたが、チップが高価になるほど、不良を早く見つけることの経済価値は跳ね上がります。しかもプローブカードは消耗品としての性格を持ちます。針は接触のたびに摩耗し、デバイスの世代が替わればカードごと作り替えが必要になります。装置のような一巡で終わる需要ではなく、半導体の生産量とともに増え続ける性質の需要であり、一時的な山ではなく構造的な変化だと私は見ています。

2. なぜ窒化ケイ素が求められるのか

プローブカードは、数千から数万本の微細なプローブ(探針)をウェハ上の電極に正確に接触させる治具です。プローブを案内するガイドプレートには、微細穴を高精度に形成でき、剛性・耐摩耗性・寸法安定性に優れた材料が求められます。ここで求められるのが窒化ケイ素です。窒化ケイ素はセラミックスの中でも破壊靭性が高く、熱膨張係数が小さいという特徴を持ちます。アルミナに比べて割れにくく、微細穴の縁も欠けにくいのが利点です。プローブのピッチが狭くなり、針数が増え、テスト時の発熱も大きくなるほど、この特性が効いてきます。穴位置の精度と穴縁の健全性がプローブの位置精度と針圧の均一性を決め、それがそのままテストの信頼性を左右します。ガイドプレートは小さな板ですが、材料特性と加工品質がそのまま製品性能に直結する部品です。材料屋・加工屋にとって、腕の見せどころとも言える部材だと思います。

窒化ケイ素イメージ画像
窒化ケイ素イメージ画像

3. 窒化ケイ素研磨の難しさはどこにあるか

ただし、窒化ケイ素は作るのも加工するのも一筋縄ではいきません。まず研磨の難しさから言えば、高硬度と高靭性の両立という、砥粒にとって最も厄介な組み合わせを持つ材料であることに尽きます。硬いため砥粒はダイヤモンド一択に近くなります。一方で靭性が高いため脆性材料のようには削れず、加工レートが上がりにくいという課題もあります。さらに窒化ケイ素は柱状の結晶粒が絡み合った組織を持つため、研磨条件を誤ると結晶粒の脱落(粒抜け)が起き、面粗さを悪化させてしまいます。ガイドプレートでは面全体の平坦度と、穴加工に耐えうる表面の健全性の両方が求められるため、レートを追って加工ダメージを残してしまうと、後の微細穴加工で割れや欠けにつながります。砥粒の粒度分布、スラリーの分散安定性、圧力と速度の条件設計——いずれも慎重な見極めが必要です。ダイヤモンド砥粒自体も、使ううちに角が丸くなるだけでなく、破砕や微小欠け、砥粒そのものの脱落が併存して切れ味が変化していくため、砥粒側の状態管理も含めて工程全体を見る必要があります。どれか一つでも外すと帳尻が合わなくなる、総合力が問われる研磨だと言えます。

4. 加工は「切る」から始まる——ダイヤモンドワイヤーとダイヤモンドスラリー

そして見落とされがちですが、加工は磨きから始まるわけではありません。切ることから始まります。焼結した窒化ケイ素のブロックやインゴットから基板を切り出すスライス工程が、最初の関門となります。硬脆材のスライスでは、ダイヤモンド砥粒をワイヤーに電着などで固定した固定砥粒方式のダイヤモンドワイヤーが主流になってきました。切り代が小さく、材料歩留まりが高いのが利点です。一方で、遊離砥粒のダイヤモンドスラリーをワイヤーにかけながら切る方式も、依然として有力な選択肢になり得ます。遊離砥粒方式は切断面のダメージ層を浅く抑えやすく、使用したダイヤモンドを回収・再利用してコストを循環させる運用も成立し得るためです。スラリーの砥粒濃度を安定的に管理できれば、切れ味の再現性という点でも十分に戦えます。
どちらが正解かは、材料の厚み、要求される面品位、後工程の研削・研磨の取り代設計との兼ね合いで決まります。つまり切断は独立した工程ではなく、最終製品から逆算して設計すべき工程なのです。

5. 「切る・削る・磨く」を一貫でリードするプロがまだいない

こうして眺めると、窒化ケイ素のガイドプレートは「切る・削る・磨く」の三つが噛み合って初めて成立する製品だとわかります。切断でダメージ層を浅く抑えれば、研削の取り代を減らせます。研削で面を整えれば、研磨の負担が減ります。研磨で健全な面を作れば、穴加工の歩留まりが上がります。

1 切断 ダメージ層を浅く抑える
2 研削 取り代を減らし面を整える
3 研磨 健全な面をつくる
4 穴加工 歩留まりが上がる

工程ごとの最適化ではなく、切るから磨くまでを一気通貫で設計できるかどうかが、品質とコストの両方を決めるのです。ところが現実には、切断は切断屋、研磨は研磨屋と分業が進んでおり、この全体を束ねてリードできるプロはまだ出てきていないように見えます。需要が急拡大しているいまこそ、砥粒とスラリーと加工プロセスの知見を持つ会社がその役割を取りにいくべきであり、私たちもその一角を担いたいと考えています。


記事No,503