AI半導体の巨大化が、パッケージ基板の世界を大きく動かしています。従来の有機基板では反りや寸法安定性の限界が見え始めるなか、母材にガラスを使う「ガラスコア基板」が新たな研磨対象として注目を集めています。
AI半導体が連れてきた「ガラス」
チップレットを複数並べる先端パッケージでは基板の大型化が進み、従来の有機基板では反りや寸法安定性の限界が見え始めました。2026年4月に広島で開催された国際学会ICEPでもガラス関連の発表が相次いだと報じられており、ドイツのSCHOTTなど欧州勢が先行し、日本でも大日本印刷やAGCなどが開発を進めているといいます。パネルレベルパッケージ(PLP)では基板サイズの大型化が続き、700mm角へのユーザーニーズも現れているそうです。「大きくて、平らで、安定した」基板材料として、ガラスへの期待は高まる一方です。
ガラスは有機基板に比べて弾性率が高く反りにくいうえ、熱膨張係数をシリコンに近づけた組成設計もできます。微細配線を支える土台としての素性のよさが評価されているのです。研磨に携わる立場から見ると、これは久々に現れた新しい研磨対象の大物だといえます。
ガラスは磨きやすくて、磨きにくい
ガラス研磨そのものは歴史の長い技術です。レンズ、ハードディスク基板、フォトマスク基板と、ガラスを鏡面に仕上げる技術はすでに成熟しています。酸化セリウムによる研磨では、ガラス表面と化学的に反応しながら削るメカノケミカルな作用が働き、比較的容易にサブナノメートル級の面粗さが得られます。その意味で、ガラスは磨きやすい素材です。
研磨で問われるのは「どこまで平滑にしたか」だけでなく、「どれだけダメージを残さずに仕上げたか」です。これは、砥粒の粒度・形状・分散を長年管理してきた理由そのものだといえます。
TGVと銅がつくる「複合面」という難所
ガラスコア基板の心臓部は、ガラスに微細な貫通孔を開けて銅で導通させるTGV(Through Glass Via)です。孔を銅で完全に埋めるフィリングめっきは時間とコストがかかるため、側壁だけに銅を付けるコンフォーマルめっきも検討されていますが、いずれにしても研磨側から見れば、めっき後の表面はガラスと銅という物性がまったく異なる材料の複合面になります。
研磨レートの選択比の設計、砥粒の硬さと形状、パッドの硬度、化学成分の組み合わせを、材料の組み合わせごとに最適化していく必要があります。半導体前工程のCMPで蓄積されてきた銅平坦化の知見と、光学ガラス研磨の知見が、ちょうど交差する場所にこの課題はあります。異種材料の複合面をどう平らに揃えるかは、遊離砥粒か固定砥粒か、化学をどこまで効かせるかという、研磨の基本設計そのものが試される問いだといえるでしょう。
「大きくて薄い」ことの平坦度管理
もうひとつの難所はサイズです。500mm角、将来は700mm角ともいわれる基板は、300mmウェハの数倍の面積を持ちます。面積が増えれば、面内の取り代分布やスラリーの供給ムラ、パッドの摩耗分布といった、ウェハサイズであれば管理できていた誤差要因がすべて拡大されてしまいます。
しかも実装精度の要求はミクロン級です。大型パネル対応の実装装置が±0.8µm精度や反り矯正機能を打ち出しているように、パネルの反り・うねりは業界共通の関心事になっています。研磨工程はこの平坦度の最後の砦であり、同時に端面の品質保証も担います。ガラスは端面の微小な欠けが強度低下に直結するため、端面・面取り部の仕上げが基板の割れ耐性を左右します。テープ研磨のように柔軟な当たり方ができる工法は、こうした端面仕上げと相性がよいと考えています。
研磨技術としてどう向き合うか
ガラスコア基板はまだ量産の入り口にあり、材料もプロセスも流動的です。だからこそ、研磨材・研磨プロセスの側から提案できる余地が大きいといえます。重要だと考える点は、次の三つです。
有機基板からガラスへの移行がどこまで進むかは、コストと歩留まり次第であり、現時点で断定はできません。ただ、どちらに転んでも「脆性材料を、ダメージなく、大面積で平らに磨く」という技術の価値は揺るぎません。ガラスと砥粒に長年向き合ってきた蓄積が、ここでも問われることになります。
まとめ
AI半導体の巨大化を背景に、有機基板の限界を超える新素材として注目されるガラスコア基板。研磨の観点からは、TGVと銅の複合面平坦化、大面積化に伴う誤差拡大、端面品質の確保という三つの課題が横たわっています。潜傷を残さない砥粒設計、材料ごとに最適化したスラリー化学、端面仕上げへのテープ研磨の展開──これからは、ガラスという素材とTGVという新しい構造が組み合わさったときに、研磨技術全体に問われる論点だといえるでしょう。
出典:ICEP2026について:https://www.osaka-soda.co.jp/ja/release/index-20260313.html /大日本印刷(DNP)の開発動向について:https://semi-engineers.com/glass-core-tgv-process-development/
記事No,507
